なんといっても、A8-3870KではCPU倍率設定が可能になったことが最も注目できる特徴だ。そこで、評価用機材でオーバークロックチューニングを試みてみた。
なお、A8-3870Kのオーバークロックを行う前に、使用するマザーボードのBIOS(Unified EFI)をチェックしておきたい。評価で用いたASRockの「A75 Pro4」はLlano登場直後のBIOSをそのまま使用していたので、オーバークロック関連の設定項目がほとんどなく、CPU倍率は定格まま、グラフィックスコアクロックにおいては設定項目すらなかった。ASRockが11月8日にリリースしたVer.2.00を適用すると、CPU倍率の上限が引き上げられ、GPUクロックに関する項目も表示されるようになった。ほかのマザーボードでも、Llano登場当初のBIOSを使用している場合は、最新版を適用しておきたい。
BIOSに最新版を適用したところで、CPUのコアクロックを3.5GHzに、グラフィックスコアクロックを720MHzに引き上げてベンチマークテストを行った。
オーバークロックしたA8-3870Kと定格動作のA8-3870KでPCMark 11のスコアを比較したが、その差はわずかで、3GHzから3.5GHzにクロックアップに見合うスコア向上ができていない。「Entertainment」と「Computation」ではスコアを伸ばした(ただし、これもクロックアップ分には遠い)が、逆にスコアを落とした項目もある。これは冷却効率が不足しているか、コア電圧が足りていない可能性がある。
なお、このほかのベンチマークテストでは、クロックアップしただけのスコア向上が確認できた。オーバークロック設定においては、CINEBENCH R11.5のSingle CPUスコアが1を超え、Media Espresso 6.5によるトランスコード処理時間は約1分の短縮となった。
GPUに関しても、3DMark 11のEntry設定における「Graphics」テストで300ポイント上昇し、The Last Remnantでフレームレートが向上した。ただし、CPU関連項目がクロックアップ比率に近い上昇を示すのに対し、GPU関連項目ではそこまでの向上でない。今回のオーバークロック設定においては、システムメモリに関してオーバークロックしていないため、ここがボトルネックとなっている可能性もある。
100MHzほどCPUコアクロックを引き上げたA8-3870Kは、ごく普通のユーザーにとって100MHzクロックアップしたモデル以上の意味はない。ただ、実売価格はA8-3850と同じあたりに落ち着くようなので、特に理由がない限り、A8-3870Kを選べばいいだろう。
一方で、オーバークロッカーにとってはLlanoのなかで最も面白いモデルだ。CPUとGPUがともにオーバークロックできるため、“遊びがい”がある。グラフィックス関連のベンチマークテストでスコアを伸ばすためには、システムメモリの動作クロックも考慮しなければならないだろう。システムメモリが関連してくるということは、FSBにも手を加えることになる。こうして、チューニングポイントが一気に増えて、しかもA8-3870Kという、ある程度上限が限られたCPUでバランスをとらなければならないという、オーバークロッカーには遊べるCPUといえる。
ただし、AMDの製品ということで、供給量が気になるところだ。A8-3850で供給量が足りていないという状況において、“遊べるLlano”と多くのAMDユーザーが期待をしたところで、入手できなければ不満が募るだけだ。AMDには入手したいと思うユーザーに行き渡るだけのボリュームを時期を逃さす供給してくれることを切に願いたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.