「プロジェクターの新たな活用シーンを」――エプソン、渋谷ヒカリエでプロジェクターを使ったアートを展示オフィスや学校だけじゃない

» 2012年06月27日 15時30分 公開
[池田憲弘,ITmedia]

プロジェクターを映像表現のツールに

photo 渋谷ヒカリエの8階にあるコワーキングスペース「クリエイティブラウンジMOV」でプロジェクターアートを展示している

 エプソンの3LCD方式プロジェクターを使った展示会「光のインスタレーション」が、渋谷ヒカリエ8階にあるメンバー制コワーキングスペース「クリエイティブラウンジMOV」のギャラリー「aiiima」(アイーーーマ)で開催中だ。

 このイベントでは、超単焦点レンズを搭載したプロジェクター「EB-435W」を使い、映像投写を使ったインスタレーション(音楽や映像、絵画などを使い、空間全体を作品とする表現手法)作品を展示している。入場は無料で、展示時間は11時から20時だ。展示期間は2012年7月8日まで。

 今回展示しているのは2作品で、どちらもプロジェクターから発せられる映像を「スーパーオーガンザ」という極薄繊維の生地に投射している。スーパーオーガンザは、天地合繊が開発したポリエステル系繊維素材を編み込んだ極薄・軽量の生地で、一定量の光を透過する特性を備えている。複数のスーパーオーガンザに映像を投射すると、複数の生地に少しずつ位置がずれた映像が映り、映像に立体感が出る。

photophoto プロジェクターは超単焦点レンズを搭載した「EB-435W」を使う(写真=左)。スーパーオーガンザは手のひらが透けて見えるほど薄い生地だ(写真=右)

 room2に展示されている「fu_fu_fu(布・浮・歩)」は、天井から吊り下げた7枚のスーパーオーガンザをスクリーンに見立て、スクリーンの外側から2台のプロジェクターで映像を投射している。スクリーンの間に入り、内側から映像を眺めると、あたかも映像空間の中に飛び込んだかのような感覚が体験できる。

photophotophoto fu_fu_fuは7枚のスーパーオーガンザに映像を投写するという作品。空調の風で生地がゆれて、映像の見え方が変わる

 room3に展示されている作品は「Another Sky」だ(So-ra-mi-ta-ko-to-kaなど複数の名称があり、固定の名称は決まっていない)。天井に3枚のスーパーオーガンザを配置。EB-435Wから映像を投射し、リクライニング式の椅子から映像を見上げる。映像を間接光として、室内照明器具のように使えないか、という発想から生まれたという。

photophoto Another Skyは天井に配置した3枚のスーパーオーガンザに映像を投写する(写真=左、中央)。リクライニング式の椅子に座って映像を見上げる(写真=右)

 このイベントをプロデュースしたエプソン 技術開発本部 技術開発推進部の内堀法孝氏は、イベント開催の背景について「こういった展示は、もともとは企業のCSR活動で行っていたことなんです」と話す。エプソンの本社がある長野県でプロジェクターの新しい使い方として繊維工業展で展示したところ、展示会を訪れた中学生や高校生からの評判がよかったという。このことが、このイベントを行うきっかけになった。

photo 斜めに光を当てることで、各スクリーンに映る像の位置がずれる

 プロジェクターの性能向上も展示のクオリティを高めるポイントとなっている。「以前からこういった展示を行ってきたが、今回は超単焦点のプロジェクターを使用した。焦点距離が短いので、部屋の中といった狭い空間での展示も可能になった」(内堀氏)という。

 イベントの趣旨は、ビジネス用や文教向けに使われることが多いプロジェクターの新しい活用シーンと魅力を提案するというものだ。内堀氏は「映像を使えば、音楽や照明だけではできない空間の演出ができる。空間演出というとアートのイメージが強いが、オフィスで使う方法も考えられる。白やグレーといった単調な色の天井に、夕焼け空などの映像を映して時間を表現するのもいい。オフィスに限らず、レストランの演出、病院の環境向上などにも役立つだろう」と語る。

 プロジェクターを機能で差別化することが難しくなったいま、このような用途提案を通じて新しい需要を生み出すという狙いもあるようだ。

人の心を癒す「ヒーリングアート」

photo コンテンツの提供に協力した女子美術大学 アート・デザイン表現学科教授のヤマザキミノリ氏(左)と助手の金箱淳一氏(右)。今回は8名が作品を提供している。コンテンツの製作期間は約1週間だという

 この展示は、プロジェクターを映像表現のツールとして使い、映像クリエイターとコラボレーションするという狙いもある。プロジェクターで流す映像コンテンツの多くは、女子美術大学 アート・デザイン表現学科、および日本大学 芸術学部映画学科が提供したものだ。

 コンテンツの提供に協力した女子美術大学 アート・デザイン表現学科教授のヤマザキミノリ氏は、ヒーリングアートを研究する専門家だ。ヒーリングアートはもともと、病院内の環境を向上するために生まれたもので、病院内で多くの時間を過ごす患者の精神的な負担を軽減することが大きな目的だった。特に小児患者にとって非常に有効な手段になるという。

 こういった活動にもエプソンの技術が生かされる。「絵画を設置するのが難しい場所もあれば、天井や壁一面といった広い場所をデザインしたいときもある。そういったときはデジタルプリントを使う」(ヤマザキ氏)という。路線バスや電車の車体表面に広告を張るときに使われる技術だが、オリジナルのアート作品を拡大して、専用のシートにプリントアウト、病院に施工するといった方法を使うのだ。

 ヒーリングアートもプロジェクターを使うことで、表現領域が広がるとヤマザキ氏は話す。「映像もヒーリングアートにおいて大きな効果を持つ。精神的な疾患、例えば、自閉症のような症状に対しても有効だ。映像や音など感覚に直接訴える刺激を与えることで、患者が積極的にコミュニケーションをとるようになったという効果が報告されている」。プロジェクターを置くだけなので、大規模な絵画に比べて設置もしやすい。

 映像を使った作品展示は珍しいためか、ギャラリーの回りには、足を止めて作品をじっと見る人や写真を撮る人が見受けられた。プロジェクターの新しい使い方に触れてみたい方、仕事で「ちょっと疲れたな」と感じた人は、渋谷に行く機会があれば、ヒカリエのaiiimaに立ち寄ってみてはいかがだろうか。

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