「VAIO Sシリーズ15」を自己責任でパワーアップしてみたメモリ増設+SSD化で再レビュー(1/5 ページ)

» 2012年08月21日 00時00分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

知る人ぞ知る“優良”大画面モバイルノートPC

大画面を持ち運びたいユーザーに最適な15.5型ノートPC「VAIO Sシリーズ15」

 「VAIO Sシリーズ15」は、従来「VAIO S(SE)」シリーズという名で展開されていた大画面の薄型軽量ノートPCだ。

 13.3型モバイルノートPC「VAIO S(現VAIO Sシリーズ13)」の技術を転用することで、15.5型の大画面ワイド液晶ディスプレイを搭載しながら、23.9ミリ厚、約2キロの薄型軽量かつ堅牢なボディを備えた可搬性の高い製品となっている。

 すでにPC USERでは通常のレビュー記事を掲載しているが、個人的に注目しているモデルということもあり、今回は店頭向けの標準仕様モデル(SVS15119FJB)をベースに、DDR3Lメモリの増設とSSDの換装を行ない、仕様強化の前後で性能を検証、比較してみた。

 実は、筆者が2012年VAIO夏モデルの中で最も注目していたモデルがこのVAIO Sシリーズ15だ。製品が発表される前は、低消費電力なIvy Bridgeを搭載することで、バッテリー駆動時間がより現実的な長さになり、もしかしたらボディもさらに薄型軽量に進化し、さらに魅力を増してくるのではないか、と期待していたからだ。

 さて、実際に発表された製品はどうか。基本スペックは期待以上で、サウンド機能の強化や、SDメモリーカードスロットの高速規格への対応、Blu-ray Discドライブのスロットイン化および高性能化などの改良により、さらに完成度は高まった印象だ。

 反面、店頭モデルのスペック構成はいかにも保守的に思える。個人的な意見を率直にいえば、今さらデータストレージにSSDを搭載していないモバイル向けノートPCなんて考えられない。大画面・高画質の液晶ディスプレイを搭載したノートPCの用途を考えれば、標準のメモリ容量が4Gバイトというのも不満だ。また、微妙に外装のデザインと表面仕上げが変更されたことで、地味なモデルがより地味になってしまった印象は否めない。

 それでも、広視野角で美しい表示のIPS液晶ディスプレイが発する魅力は健在だ。画面サイズの割に軽く、フラットでバッグの中にも収まりのいいボディが、さらに価値を高めている。CPUも通常電圧版のクアッドコアモデルを採用しているため、実にパワフルで、熱設計にも不安がない。先代機に引き続き、知る人ぞ知る、隠れた優良ノートPCといっていいだろう。

VAIO Sシリーズ15は、大画面でも23.9ミリ厚と薄く、重さも約2キロ前後におさまっている(写真=左)。この薄さと軽さならば、こんなカメラバッグに入れて、デジタル一眼レフカメラとも一緒に軽快と持ち出せる(写真=右)。この可搬性は従来の据え置き型のパワフルなノートでは考えられなかった。バッテリーもそこそこ持つので、新幹線の中やラウンジなどでRAW現像作業をするのにもピッタリだ

店頭モデルにもビシッとした主張がほしい

IPS方式の15.5型フルHD液晶ディスプレイはすばらしいが、店頭モデルの基本スペックはそれに比べて……

 もっとも、店頭モデルの保守的な仕様に関しては、このモデルに限らず、前々から気になっていた。「もっと思い切って攻めてもいいんじゃないの?」と。

 もちろん、ソニーストアで買えるVAIOオーナーメードモデルならば、CPUをあえてデュアルコアにしたり、メモリを増やしたり、データストレージをSSD RAIDにしたりと、柔軟に構成できる。それは百も承知だ。「どうせ自分で選ぶのだから、店頭モデルの仕様なんて問題じゃない」と思うユーザーもいるかもしれない。そういう考え方があるのは理解している。

 確かにPCユーザーのニーズは多様だ。CPUを重視したい人、ストレージを重視したい人、さまざまいる。はっきりと自分に必要なスペックを理解し、それを貫ける精神力がある方にとって、VAIOオーナーメードモデルは実にありがたい存在だろう。しかし、実際に購入する段になると結局価格で右往左往してしまう人、あるいはCTOメニューをうまく選べない、割り切るのが苦手だという人もかなりの数いるはずだ。

 また、一般的なユーザーにとって、店頭モデルはやはりそのモデルの代表といえる存在ではないだろうか。そして、規模の経済を考えれば、(程度はそれほどでもないかもしれないが)最も割安にできるはず。割り切れるところを割り切り、スケールメリットと決め打ちでコストを抑える一方で、ここぞというところは思い切れば、もっとインパクトを打ち出すことも可能なはずだ。

 柔軟なカスタマイズができるVAIOオーナーメードモデルは魅力だが、自由すぎるゆえにそれだけではそのモデルの本質がぼやけて伝わりにくい面がある。だからこそ、店頭モデルでは、「このモデルはこういう構成で使ってほしい」といったような、メーカーサイドのビシっとした主張をしてもらいたいと思っているのだが、いかがだろうか。

それでも、自分でカスタマイズできる余地があるのはいいことだ

 かくいう筆者も、CTOで割り切るのが苦手なタイプの人間である。あってもなくても困らないようなものでも、ついあれもこれもと付けてしまう。しかも、割り切れないからといって価格を気にしないというわけではないのだ。ソニーストアで見積もりをしては画面の前で「うーん、うーん」とうなり、結局買わないということをよく経験している。

 そんな筆者がよくやるのは、発売から時間がたって価格が落ちてきた店頭モデルを購入し、自分でカスタマイズすることだ(これは店頭に限らず、ソニーストアでの値下がりやVAIO OUTLETも見逃せない)。新モデルが出て旧モデルとなった、いわゆる「型落ち」モデルなどは実に買い得なことがある。

 先ほど店頭モデルを保守的と指摘しておいて何だが、この無難すぎる店頭モデルも、値下がりして安く手に入るのならば悪くない。クアッドコアCPU、Blu-ray Discドライブなどはソニーストアで選択すると価格がかなり上がってしまうので、むしろお得な感じだ。通信機能、セキュリティチップや指紋センサーなど、細かい機能の取捨選択などに関しても、コンシューマー向けとして意外と考えられた仕様だな、と感じるところがある。

底面のネジを外してカバーを開けば、メモリスロットと2.5インチドライブベイにアクセスできるのはうれしい

 そんな風に感じられるのも、メモリとデータストレージが簡単に交換できるという点が大きい。このVAIO Sシリーズ15は、先代機同様に、底面のカバーを外せば、メモリスロットと2.5インチドライブベイに簡単にアクセスできる。最近のUltrabookなど薄型軽量ノートPCは、こうしたパーツが交換できない製品が多いだけに貴重な存在だ。

 こんなことで褒められてもメーカーはうれしくもなんともないだろうが、実際かつて流行となったNetbookなどは、価格だけでなく、増設や換装のしやすさがかなりのポイントだったと思う。そもそも、長い間売り切れない時点で何かしらターゲットユーザーのニーズとのズレがあるのだろうが、それでもこうした内蔵パーツを交換しやすい構造ならば救いがある。

 これだけ素晴らしい液晶ディスプレイを搭載しているのに、メモリやデータストレージの仕様程度の問題でしかないならば、自分でパーツの増設や換装ができる中・上級ユーザーにとっては実にありがたい存在だ。

 増設や換装をしないでも済むような(諦められる)ビシッとした新モデルも見てみたいが、こういう製品もまた、これはこれで悪くないと思える。

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