ソニー初のUltrabookはなぜこうなった?――新生「VAIO T」を丸裸にする完全分解×開発秘話(4/6 ページ)

» 2012年09月26日 12時30分 公開

いよいよ新生VAIO Tの内部構造を明らかに

 バッテリーとHDD、メモリモジュールを外したら、あとは底面に見えているネジをすべて取り、ボトムカバーを丸ごと分離すると、内部構造を一望できる。底面から側面を覆う強化樹脂のボトムカバーは肉厚で、重量増の一因になっているが、前述の通り、剛性感の向上にも大きく貢献しているのは見逃せない。

ボトムカバーを取り外すと、基板がむき出しになる

取り外した強化樹脂製のボトムカバーは肉厚で、底面から側面までを覆っている

ハーフサイズのMini PCI Expressカードスロットに装着されていた、IEEE802.11b/g/nの無線LANとBluetooth 4.0+HSのコンボカード(Atheros AR5B225)

 内部構造はUltrabookらしく無駄なスペースがほとんどない作りだ。左右のコネクタを直付けにしたマザーボードが上部、バッテリーが下部に配置され、中央部にHDDとメモリ、その上にmSATAのキャッシュ用SSDやハーフサイズのMini PCI Expressカードスロット(IEEE802.11b/g/nの無線LANとBluetooth 4.0+HSのコンボカード)、右上にはCPUやチップセット、CPUクーラーが並ぶ。

 この内部レイアウトについて飛山氏は、「スタンダードな左側面からの排気を採用したうえで、左右にコネクタをバランスよく配置できるよう設計した結果。左側面に2基のUSBポートが並んでいる点は、左右に分けたほうがいいという意見もあったが、サイズと機能のバランスを取り、今回は2つ並べた」と説明する(写真は底面から見た様子なので、CPUクーラーやUSBポートが右側面にあるが、ひっくり返して実際に使う場合は左側面に位置する)。

8層のマザーボードはコスト面の工夫も

 次はいよいよネジ止めされたマザーボードを取り外す。マザーボードは設計の初期段階で10層基板だったが、設計を見直すことで8層基板にしてコストを抑えた。両面実装の基板だが、主要なパーツはほとんど表面に並んでおり、裏面にあるのは2Gバイトぶんのメモリチップくらいのものだ(2Gバイトぶんのメモリチップは表面にもあり、合計4Gバイトのメモリを構成する)。

 配線を端に延ばすようなサブボードはなく、1枚のマザーボードに機能を集中している。左右のコネクタをオンボードで実装することで、ボディサイズが膨らまないようにしつつ、配線の接点を少なくすることで、組み立てがしやすく、不良は発生しにくくするような工夫も見られる。

 「VAIO YA/YBのようにコストを削った基板をいくつか手がけることで、どのようにすれば必要な機能を低コストな基板に収められるかが分かった。1枚のシンプルな基板に見えるかもしれないが、実はそういったノウハウも詰まっている」と梅津氏は回答した。

マザーボードの表面には所狭しとパーツやチップが並ぶ。CPUの熱はヒートパイプを経由してファンで排出される

マザーボードの裏面には、2Gバイトぶんのメモリチップが実装されている(2Gバイトぶんのメモリチップは表面にもあり、合計4Gバイトのメモリを構成する)

キャッシュ用SSD、IEEE802.11b/g/nの無線LANとBluetooth 4.0+HSのコンボカード、CPUクーラーを外して、CPUを露出した状態のマザーボード

 マザーボードからファンを取り外すと、Ivy Bridgeこと第3世代Coreプロセッサー・ファミリーのデュアルコアCPUであるCore i5-3317U(1.7GHz/最大2.6GHz)が露出する。チップセットは1チップ構成のIntel HM77 Express、グラフィックス機能はCPUに統合されたIntel HD Graphics 4000を利用する。

 VAIOオーナーメードモデルでは、第3世代Coreの2コア/4スレッド対応上位モデルであるCore i7-3517U(1.9GHz/最大3.0GHz)や、第2世代CoreのCore i5-2467M(1.6GHz/最大2.3GHz)、Core i3-2367M(1.4GHz)も選択可能だ。

 CPUクーラーは専用設計で、厚さ5.5ミリの薄型ファンを採用。Ivy Bridge世代でTDP(熱設計電力)が17ワットと低いCPUを冷却するのに、十分な放熱性能を持つという。11.6型モデルとCPUファンは共通だが、ヒートパイプの長さはサイズに合わせて変えている。

取り外したCPUクーラーの表(写真=左)と裏(写真=右)。銅製のヒートパイプと5.5ミリ厚の薄型ファンを組み合わせている。CPUの負荷に応じて、ファンの回転数はダイナミックに変動する

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2024年04月17日 更新
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