ヤマハは11月1日、SMB(Small and Medium Business:中小規模の企業)向けニーズに沿った無線LANアクセスポイント「WLX302」を発表、2013年3月より順次発売する。価格はオープン、実売価格は5万円程度と予想される。
SMB・SOHO向けネットワーク・ルータ機器市場で48.2%と高いシェアを獲得する同社、スマートデバイスの普及と高まる企業ニーズに応じてSMB向け無線LAN機器市場にも参入し、今後対応カテゴリも増やす考えだ。「スマートデバイスの業務利用ニーズが高まっているが、利点は多々あるものの、セキュリティに対する不安により──特にSMBでは導入をためらう例が多い。そんなSMB・SOHO層の導入意向を支援するのが今回の新製品」(ヤマハ サウンドネットワーク事業部の長谷川豊執行役員事業部長)
WLX302はデュアルバンド(2.4GHz帯/5GHz帯 同時利用可能)対応でIEEE802.11a/b/g/n準拠、マルチSSIDや豊富なセキュリティ機能といった無線LANアクセスポイントの基本機能はもちろん、「無線LANの見える化」機能、PoEでの動作、MDM(Mobile Device Management)機能など、SMB市場に強い同社ならではの機能を工夫して盛りこんだ。SMBやSOHOといった中小規模オフィスシーンのほか、小売店、イベント会場、教育・医療現場など幅広い業種への導入を想定する。
「無線LANの見える化」機能は、周辺のアクセスポイントやチャンネル使用率、スループット、CRCエラー率、接続端末の情報などをグラフ化して視認できる独自機能。検出した値が一定値を超えるとその状況を自動記録する「スナップショット機能」も備え、IT専任者を置かないSMB環境においても「遅い」「つながらない」といった障害発生時の管理・対応を容易にする。今後メールなどでのアラート通知機能なども実装予定という。「アクセスポイント本体に内蔵した機能としては業界初」(長谷川氏)
また、LANケーブルより電力を得るPoE(Power over Ethernet)で動作する仕様としたのもSMB向けとしてのポイント。同時に発表したPoE給電対応のスマートL2スイッチ「SWX2200-8PoE」やPoE対応機機と連携した導入を想定し、高所など電源の確保が難しい場所でも容易に設置できるのが特長(別売りオプションにて、ACアダプタも用意する)。設置における電源工事の手間や発生コストをかなり抑えられる点、配線を簡略化できる(LANケーブル1本で済む)点もメリットだ。
オフィスのスマートデバイス導入推進や従業員のBYOD(Bring Your Own Device:社員が個人所有するスマートデバイスを業務で活用する)ニーズに沿い、スマートデバイスを管理する「MDM機能」も実装する。セキュリティ設定も含めた端末の管理、意図しないアプリケーションや機能の起動制限設定、リモートロックやリモートワイプ(初期化)など各種管理機能を備え、例えばカタログ表示用に用意した機器は「iBooks」のみを起動可能にするといった設定も一括で行えるようにする。発売時点でiOS機器対応の試用版ソフトウエアを無償配布、2013年夏期をめどにAndroid機器への対応とともに有償のオプションとして提供する予定。
主な仕様は以下の通り。
製品名 | WLX302 |
---|---|
無線LAN規格 | 5GHz帯:IEEE802.11a/n(W52/W53/W56)、2.4GHz帯:IEEE802.11b/g/n デュアルバンド同時利用可能 |
最大通信速度 | 300Mbps(802.11n) |
認証方式 | オープン、PSK、WPA/WPA2パーソナル、WPA/WPA2エンタープライズ、MACアドレス |
暗号化方式 | AES、TKIP、WEP(64/128ビット) |
接続可能台数 | 最大100台(5GHz帯:50台、2.5GHz帯:50台) |
マルチSSID | 最大16個(5GHz帯:8個、2.5GHz帯:8個) |
セキュリティ機能 | プライバシーセパレータ、Any接続拒否、Macアドレスフィルタリング、パスワード設定、接続台数制限、送信出力調整機能、SSIDステルスほか |
RADIUSサーバ | 内蔵(簡易型 最大100台までのWPA/WPA2エンタープライズ認証に対応) |
管理プロトコル | SNMP v1 |
拡張機能 | ヤマハ製ルータによる集中管理、無線の見える化ツール、MDM |
タグVNAN | 対応(IEEE802.1Q) |
ストレージ | 256MバイトFlash(ファームウェア1組、コンフィグ1組) |
メモリ | 256Mバイト |
最大消費電力 | 11ワット |
本体サイズ | 160(幅)×178(奥行き)×40(高さ)ミリ |
重量 | 約670グラム |
合わせてPoE給電対応のスイッチングハブ「SWX2200-8PoE」も投入する。発売は2013年4月を予定し、価格は7万円程度。SWX2200-8PoEは8ポートのギガビットLANポートを備え、全ポートPoE対応とした。
このうち4ポートを、1ポートあたり最大30ワット出力できる高出力給電規格「PoE Plus(IEEE802.3af)」をサポートし、消費電力の大きい無線LANアクセスポイントやネットワークカメラ、IP電話なども利用できるようにした。スイッチ制御機能を搭載する同社製ルータや上記WLX302と組み合わせた利用シーンを提案し、各々をWebツールによるGUI画面で一括管理できるようにするのも大きな特長とする。
「今後もSMBを強く意識した製品を投入する。またソフトウェア、MDM、クラウドサービスとも連携してユーザーに的確なソリューションを提供できるよう努力したい。なお、発売時期が2013年3月よりと少し先なのは、スマートデバイス対応化を踏みとどまっているSMBのお客様の評価期間を考慮したため。弊社のネットワーク機器製品群はそんなニーズに応えられる。お貸し出しして評価していただけるような体制にする予定なので、弊社製機器を使われているお客様はぜひお声をかけてほしい。11月16日より順次、札幌・新潟・仙台・福岡、大阪・東京・名古屋・金沢・長野・広島の各都市で製品説明会も実施する」(長谷川氏)
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