まったく新しい家庭向けPCを創り出すという理想は現実になったか――。
ソニーはVAIOの2012年秋冬モデルにおいて、タッチ操作に対応したPCを5つのシリーズでそろえてきた。もちろんこれは、タッチ操作に配慮した新しいユーザーインタフェース(UI)を備えたWindows 8の発売に合わせた仕様強化だ。
このうち、11.6型フルHD液晶を搭載する変形型モバイルノートPC「VAIO Duo 11」と並んで注目の新シリーズといえば、20型ワイド液晶を備えた新スタイルのPC「VAIO Tap 20」だろう。既存のカテゴリー分けに当てはめれば、液晶一体型デスクトップPCに属する製品だが、ソニーはこのVAIO Tap 20を家庭向けPCの新カテゴリーとして編み出した「テーブルトップPC」だとアピールしている。
実際に筆者が自宅で試作機を使ってみたところ、これまでの一般的な液晶一体型PCとは大きく異なるユーザー体験が想像以上に新鮮で、新たなカテゴリーが創出される可能性を十分に感じることができた。
サイズ感のつかみにくい写真でVAIO Tap 20を見ると、「大きめのタブレットか?」という印象を抱くかもしれない。
実際は20型ワイド液晶ディスプレイを搭載し、本体サイズがスタンドを畳んだ状態で504(幅)×312(奥行き)×45(高さ)ミリ、重量が約5.2キロもあるため、タブレットのように片手で持てる大きさ、重さではない。部屋の中で出したり片づけたり、あるいは別の部屋へ持ち運んで使うのに苦にならないといったレベルだ。
しかし、VAIO Tap 20は、見た目はもちろんのこと、実は使用感のうえでも「大きなタブレットデバイス」と表現するのが一番分かりやすい。20型ワイド液晶ディスプレイをPCのコンポーネントと一体化した製品なので、画面サイズがせいぜい10型程度のタブレットと比べればかなり大柄ではあるが、画面まわりの作りは、それらのタブレットにかなり近いのだ。
四隅の丸い1枚板をベースとした本体は、タッチパネル付きの液晶ディスプレイが見た目を構成する要素のほとんどすべてとなる。ボタンやスイッチ類はごくわずかしか存在せず、USBなどのポート類も目立たない側面にひっそりと並び、表だって出てくることがない。ネジ頭を見せない表面処理は背面まで徹底されていて、すっきりしたデザインだ。
また、キーボードとマウスに無線接続を採用しているのは当然として、デスクトップPCに近い立ち位置の製品ながら、バッテリー駆動に対応することにより、家庭内で持ち運んで、タブレットのようにケーブルレスでのタッチ操作を可能にしているのは心憎い。容量10.8ボルト/3500ミリアンペアアワーのリチウムイオンバッテリーを内蔵しており、駆動時間は約3.5時間(JEITA 1.0に基づく駆動時間の公称値)だ。
もっとも、重量が約5.2キロもある20型ワイド画面のタブレットを手で持って扱うのは無理というものだ。そこで、VAIO Tap 20にはユニークなスタンドが設けられている。従来の液晶一体型PCのような本体をアームで浮かせて固定するスタンドではなく、背面にU字型の取っ手のようなスタンドが取り付けられているのだ。
このスタンドを採用することで、接地した本体の下辺をもう一方の支えとして、フォトフレームのように立てて設置できる。スタンドの機構は正面から完全に見えないため、まさに大画面のタブレットを横位置で立てかけて使うようなイメージだ。
さらに注目すべきは、このスタンドをたたむと、画面が設置面に対して水平になるまで、完全に寝かせた状態にできることにある。VAIO Tap 20ではこの寝かせた状態を「収納時だけでなく、利用時もオススメの形態の1つである」と打ち出しているのが新しい。
この液晶ディスプレイが完全に寝た状態をソニーでは「テーブルトップスタイル」と呼んでおり、リビングルームのテーブルの中央に置いて、家族の何人かが、めいめい好きなところから画面を囲んで同じコンテンツを楽しむ、という使い方が具体例として挙げられている。これこそが、VAIO Tap 20を「テーブルトップPC」と名付けた理由だ。
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