10.1型ワイド液晶ディスプレイは、表示解像度が1366×768ドットだ。液晶パネルとタッチパネルの間の空気層をなくして密着させることにより、外光の乱反射を抑えて色鮮やかな表示を実現する「Super Clear Panel」を採用している。
画素密度は約155ppiと平凡だが、輝度は非常に明るく、色も鮮やかで、見た目の印象はよい。広視野角のIPS方式液晶パネルを採用しているため、斜めから見ても色味の変化がほとんどなく、くっきりと画面全体を見渡せる。表面は光沢仕上げのため、非光沢に比べれば映り込みはあるが、輝度が高いため、あまり気にならない場合も多い。色味は目視ではやや黄色が強い印象だ。
10点マルチタッチに対応したタッチセンサーを搭載し、指で画面に直接触れて操作できる。富士通では、滑らかなタッチ感を実現するために「スーパーグライドコーティング」と呼ばれる特殊な表面処理を行っているとアピールしているが、実際に触れてみると確かに分かりやすい。小指の爪の脇の部分などでそっと触るだけでも反応し、すぅーっとスムーズに滑るような操作ができる。センサーの精度も良好で、比較的小さなボタンなどに触れる際もズレを感じることはなかった。
ただし、WQ1/Jだけの問題ではないが、10.1型ワイドの画面サイズで1366×768ドットの表示解像度では、デスクトップでのタッチ操作はギリギリという印象で、マウスやペンなどが欲しいと感じることはある。
内蔵ステレオスピーカーのサウンド品質も、タブレットとしてはなかなか良好だ。比較的低音が効いていて、スカスカしない音が鳴る。動画や音楽などのエンターテインメントコンテンツもしっかり楽しめる。
Atom Z2760を搭載しているということで、パフォーマンスも気になるところだ。ここからはベンチマークテストの結果を見てみよう。
まずWindowsエクスペリエンスインデックスだが、プロセッサ、グラフィックスともに3点台のスコアにとどまっている。SSDの性能を見るためにCrystalDiskMarkも実行した。ランダムアクセス性能はHDDより格段によいものの、シーケンシャルライト性能は低く、廉価版のSSDによく見られるスコアの傾向だ。
総合ベンチマークテストのPCMark 7と、3Dグラフィックステストの3DMark06については、超低電圧版のCore iシリーズを搭載したUltrabookなどと比べてしまうと、全体的に低い。参考までにテスト結果のグラフは、Core i5-3427U(1.8GHz/最大2.8GHz)を搭載したWindows 8タブレット「FMV STYLISTIC WQ2/J」のスコアも併記したが、その差は大きい。そのぶん、薄さ、軽さ、低消費電力で優位に立つのがWQ1/Jというわけだ。
WQ1/Jのグラフィックス機能はDirectX 9.3まで対応しているが、3Dゲームができるレベルの3D描画性能は持っていない。ストリートファイターIVベンチマークなども実行は可能なものの、ロード中からひどいフリッカーが発生するなど、まともな描画が期待できる状況ではなかったため、実行は見送った。
また、NDIVIA Tegra 3を搭載したWindows RTタブレット(VivoTab RT TF600)との性能比較の目安として、Windows 8/Windows RTが標準で備えているシステム評価ツール「WinSAT(Windows System Assessment Tool)」と、WebブラウザベースのHTML5ベンチマークテスト「WebVizBench」も実行した。これらの結果を見る限り、Windowsを使ううえではTegra 3とAtom Z2760は似たような性能レベルであることが分かる。
WinSATのスコア | |||
---|---|---|---|
製品名 | ARROWS Tab Wi-Fi WQ1/J | VivoTab RT TF600 | FMV STYLISTIC WQ2/J |
CPU LZW圧縮 (MB/s) | 70.65 | 91.26 | 159.69 |
CPU AES256暗号化 (MB/s) | 23.18 | 31 | 82.98 |
CPU Vista圧縮 (MB/s) | 270.94 | 218.78 | 420.8 |
CPU SHA1ハッシュ (MB/s) | 211.91 | 282.24 | 494.06 |
ユニプロセッサ CPU LZW圧縮 (MB/s) | 26.09 | 23.02 | 85.23 |
ユニプロセッサ CPU AES256暗号化 (MB/s) | 7.55 | 7.74 | 56.44 |
ユニプロセッサ CPU Vista圧縮 (MB/s) | 94.63 | 55.62 | 210.5 |
ユニプロセッサ CPU SHA1ハッシュ (MB/s) | 85.45 | 71.69 | 355.97 |
メモリのパフォーマンス (MB/s) | 3458.72 | 1077.04 | 10035.09 |
Direct 3D Batchのパフォーマンス (F/s) | 45.39 | 49.19 | 123.37 |
Direct 3D Alpha Blendのパフォーマンス (F/s) | 44.8 | 49.81 | 123.75 |
Direct 3D ALUのパフォーマンス (F/s) | 12.89 | 11.25 | 57.51 |
Direct 3D Texture Loadのパフォーマンス (F/s) | 8.35 | 7.98 | 57.01 |
Direct 3D Batchのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 | 127.97 |
Direct 3D AlphaBlendのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 | 118.38 |
Direct 3D ALUのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 | 49 |
Direct 3D Texture Loadのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 | 50.5 |
Direct 3D Geometryのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 | 97.61 |
Direct 3D Geometryのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 | 148.53 |
Direct 3D constant Bufferのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 | 79.73 |
ビデオメモリのスループット (MB/s) | 1952.26 | 1482.96 | 3165.07 |
Dshowビデオエンコード時間(s) | 10.30736 | (表示されない) | 2.77214 |
メディアファンデーションデコード時間 (s) | 0.43167 | 0.447 | 1.71077 |
Disk Sequential 64.0 Read (MB/s) | 51.33 | 44.97 | 473.4 |
Disk Random 16.0 Read (MB/s) | 22.31 | 22.99 | 264.33 |
WebVizBenchのスコア | ||
---|---|---|
製品名 | ARROWS Tab Wi-Fi WQ1/J | VivoTab RT TF600 |
Score | 3020 | 2930 |
FPS | 6.27 | 4.83 |
実際の使用感はというと、やはりWindows RTタブレットと似ている。ちょっと触っただけの印象では、Internet Explorer 10のWebブラウズや、Windowsストアプリでの操作において、特にストレスは感じない。Webページによっては画像のレンダリングが少し遅れたり、動画サイトの場合は動画の読み込みに(一般的なPCに比べると)時間がかかったりといったようなことはあるが、意識しなければ気づかないかもしれないし、少し慣れれば気にならないレベルだと思われる。
ただし、SSDの性能が影響しているのか、ディスクアクセスが絡むと、やはりPCとのレスポンスの違いは感じてしまう。例えば、画面キャプチャを行う際にチャームを表示させて検索欄で「ぺ」と入力して「ペイント」アプリを表示、そのまま起動して貼り付け……といったような一連の操作では、モタつきが確認できる。
特にペイントアプリが表示されるまでの時間はUltrabookなら一瞬だが、WQ1/Jの場合はいったん「ぺ」の入力途中の「p」に反応して別のアプリが表示され、その後ペイントに表示が変わる……という過程をすべて目で追うことができ、時間も数秒かかる。
Windows RTタブレットよりできることが多く、通常のWindows PCと同じことができるぶん、(PCの使用感を知っているだけに)ストレスを感じる場面は少し増えるかもしれない。この辺りは薄型軽量ボディとのトレードオフとして、仕方がないことだろう。
なお、WQ1/Jの試用を始めたとき、バッテリー駆動時はCPUパフォーマンスが最大でも50%に抑えられる設定がなされていた。
しかし、2012年12月11日付けで、CPUパフォーマンスを最大100%まで向上する「電源設定変更ツール」がWebページで配布されており、これを適用することでバッテリー駆動時のパフォーマンスが改善されるようになった。
このような対応になった理由を問い合わせてみたところ、「当初はバッテリー駆動時間を延ばすことを優先的に考えていたため、パフォーマンスを抑える設定にしていたが、バッテリー駆動時間への影響がさほどでもないこと、またユーザーからCPUパフォーマンスに関する要望が大きいことから対処した」という回答が得られた。
というわけで、前述した筆者のインプレッションやベンチマークテスト(後述のバッテリーテストも含む)は、この電源設定変更ツールを適用した後のものだ。電源設定変更ツールの適用は自らWebページで探さなくても、プリインストールされているメンテナンスツール「アップデートナビ」から簡単に行なえるので、ぜひ適用をおすすめしたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.