その他、ここまで紹介できなかった細かいポイントについてまとめて紹介しよう。
ディスプレイの映像入力端子については、アナログのD-Sub 15ピンだけに限定したモデルはほぼ姿を消し、現在ではデジタルのDVI-Dを基本に、ノートPCでの搭載例も増えてきたHDMIやDisplayPort(Mini DisplayPortも含む)を搭載する機種が増えつつある。HDMIはMHL(Mobile High-definition Link)に対応し、スマートフォンやタブレットとの接続を想定したものも見られるようになってきた。
多くの機種ではD-Sub 15ピンはサブとして備わっているが、搭載していない製品もさして珍しくなく、それよりもHDMIを2つ搭載するなど、複数の機器をデジタルで同時接続できる製品が目立つ。アナログディスプレイの時代によく見られた外付けの切り替え器を使わなくとも、1台のディスプレイに複数の機器を接続し、ディスプレイ側で切り替えが行えるというわけだ。これはノートPCの外付けディスプレイとして使用する場合にも便利な機能だ。
ディスプレイの薄型化もトレンドの1つだが、電源を内蔵せず、ACアダプタにすることで薄型化を図っている場合、ケーブルが事実上の専用品となるため、オフィス内で延長して配線したい場合に融通が利かなかったり、別のディスプレイと交換する場合にケーブルだけを使い回すことができなかったりと、配線が落とし穴になるケースがあり注意が必要だ。ディスプレイアームを使う際に、アーム内に電源ケーブルを通すにあたってACアダプタが障害になるケースもある。ボディの薄型化そのものはメリットも多いが、以上のようなデメリットがあることも知っておこう。
本体の角度調整および縦位置(ポートレート)表示の機能についても、製品によって大きな差がある。目や肩に負担がかかりにくいとされる、画面を自然に見下ろす位置にぴったり調整するには、チルト(傾き)やスイベル(スタンド部の左右回転)だけでなく、昇降、つまり高さの調整機構があることが重要だ。
縦位置表示の機能については、カタログなどに「90度回転して縦置きにできます」と書かれていても、実際に操作してみると、あまりの動きの硬さに閉口することも少なくない。設置時に縦置き/横置きを自由に選べるという意味での「回転できます」なのか、日々用途に応じてスムーズに90度向きを変えられるという意味での「回転できます」なのかは、実機できちんと確認したほうがよい。ちなみにディスプレイアームを用いることで、動きの硬さをカバーする方法もある。


角度調整機構は、チルトやスイベルだけでなく、高さ調整に対応し、設置面近くまで表示領域を下げられるかどうかが重要だ。写真はEIZOのFlexScan EV2436W-Z。高さ調整(写真=左/中央)や縦位置表示(写真=右)に対応した可動範囲の広いスタンドを備えているベゼル、つまり上下左右の額縁のスリム化は、各社とも長年にわたって注力しているポイントだ。ベゼルがスリムになれば、単純にデザイン的にやぼったさがなくなるのはもちろん、マルチディスプレイで並べた際に境界が気になりにくい。最近では、この額縁部分と画面の段差がないフラットタイプのディスプレイも登場しつつあるなど、機種ごとの差別化要因としてはホットな分野だ。店頭で実機を見比べるとかなりのインパクトがあるだけに、特に個人向け市場でのシェアは高まっていくことだろう。
このほか細かいところでは、ディスプレイの本体色でブラックの比率が増しているのも、昨今の特徴といえる。特に海外メーカーはほとんどブラックのみという状況で、国内メーカーがわずかにホワイト(グレー)系のモデルをラインアップしているのみだ。PC本体でブラックの占める比率が高まってきていることが主な要因だが、「PCの買い替え時にディスプレイは別途購入するつもりで見積もりから外していたところ、ホワイトの選択肢がほとんどなかった」ということもあるので、ホワイトモデルが必要な場合は、製品選びの際に注意しておいたほうがよい。一部にはシルバーモデルを用意しているメーカーもあるが、少数派だ。
やや下火になったトレンドとしては、タッチ対応が挙げられる。Windows 8の登場時に各社から発売されたタッチ対応のディスプレイは、現在では各社ともにラインアップの中に1〜2製品があるかないか、といった状況だ。PC本体ではタッチパネル採用のモデルが増加しているが、外付けディスプレイの普及は進んでいない。現状ではひとまず店頭の受付端末や文教系など、限られた用途もしくは組み込み製品向けに逆戻りしたという認識でよいだろう。
以上、ディスプレイまわりのトレンドをざっと紹介した。次回は法人利用に適したディスプレイの要件を挙げつつ、具体的なおすすめモデルについても紹介したい。
「PC USER Pro」
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