Mantleには、もう1つの副産物がある。それは、省電力化にも効果があるということだ。クドリ氏は「Mantle対応によってCPU負荷を軽減できるほか、より効率的にGPUを利用することで、省電力化も果たせる」と語る。
Mantle対応のゲームエンジン「Nitrous」を開発しているOxideでは、ゲームシーンによって20〜30%の省電力化を実現すると説明する。また、クドリ氏は「将来的にはMantleを1ワットからキロワット規模まですべてのプラットフォームに活用できるようにしたい」と、携帯端末やHPCへの展開も視野に入れる。
AMDはすでに、“Project Sky Bridge”と呼ぶ、x86系、または、ARMコアを搭載した2種類のAPUを共通プラットフォームで展開する構想を計画している。Project Sky Bridgeで共通のグラフィックスAPIとしても、Mantleに注目している。
AMDは、Mantle APIを自社で独占するのではなく、ARM陣営はもとより、IntelやNVIDIAでも採用できるオープンスタンダードとして展開する意向だ。IntelやNVIDIAがMantleを採用する可能性は低いが、ローレベルAPIの整備が遅れ気味のARMプラットフォームにおいて、その魅力は大きい。
一方、ゲーム開発者からは、MantleのLinux対応に関する要望も大きい。DirectX 12の発表により、また、しばらくはWindowsがPCゲームの基幹プラットフォームとなることは明らかだが、“ポストWindows”のゲームプラットフォームを模索するベンダーも多く、SteamOSやChromeOSなどのLinuxベースのシステムで、ストリーミングゲームではプレイしづらいFPS(First Person Shooting)などのゲームタイトルが動く環境が求められているのも事実だ。
開発リソースの問題から、急激な進化は期待できないものの、AMDは、DirectX 12後も睨んで、Mantleをさらに進化させていく考えでいることだけは確かだ。
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