日本マイクロソフトは7月2日に、2016年会計年度(2015年7月1日にスタート)から代表執行役社長に就任した平野拓也氏が、新体制における経営方針を説明した。
平野氏は、冒頭で経営方針を「コアは変革という言葉」と表現した。日本マイクロソフトに入社した10年前から現在を振り返り、試行錯誤だったクラウドサービスが多くのユーザーが使うメインストリームとなり、デバイスもPCからスマートフォンにシフトするなど、ITもビジネスも環境が大きく変わり、Microsoftについても、サティア・ナデラ氏のCEO就任以来、多くの変革と施策を行っているとした上で、日本マイクロソフトでどのように変革を進めていくのかが大きなテーマになると語った。
2015年度の業績振り返りでは、2014年度のXP買い替えのような特需はなかったものの、戦略的に自信を持てる進展があったとした。クラウド関連では日本におけるデータセンター開設を取り上げ、パートナー企業に対して日本マイクロソフトのクラウドサービスにおける信頼性をアピールできたとしている。また、ワークスタイルの変革提案についても品川オフィスをショールームとして活用している活動実績を紹介した。
Windowsデバイスでは、XP特需の反動でPCは落ち着きを見せ、タブレットでも初めて購入するユーザーの需要は一巡したと分析している。ユーザーはタブレットでできることとできないことが理解できた上で、もっとできることに関心があり、その中で、Surfaceシリーズのような2in1の需要が強くなっていると平野氏は説明、Surface Pro 3の販売実績が個人向けが従来の25倍、法人で7倍に達し、Surface 3についても想定を超える初動があったことを取り上げた。
Microsoftは、全社のグローバルビジョンで「地球上ですべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにする」という言葉を掲げているが、平野氏はこれを「デバイス中心から人中心に変えていく」と説明する。さらに、インターネットに接続できる端末が膨大な数(750億ユニット)になる状況では、強いクラウドとAIがあってはじめてデバイスが能力を発揮できると述べた。
平野氏は、これまでの日本マイクロソフトのマインドが、ともすればOSやOffice市場に対する守りに入ってしまったと反省し、これからは挑戦者として施策をとっていくと述べている。その具体的な施策として無料化やWindows 10無料アップグレードを挙げたほか、これまで以上に革新的で使いやすくなった新たなMicrosoftを生み出すのがミッションという考えを示し、2016年会計年度の重要分野として「プロダクティビティとビジネスプロセス」「インテリジェントクラウド」「Windows 10+デバイス」を設定した。
プロダクティビティとビジネスプロセスで目指すワークスタイルの変革では、すでに品川オフィスにおいて実践しながら新しいワークスタイルの提案をしているが、調布の技術センターも品川のオフィスに統合し、レイアウトなどこれまでの経験を反映し、Surface Hubを25台設置するなど最先端のワークスタイルを再構築する計画を明らかにした。また、テレワークも推進し、2015年8月には日本企業300社が参加するテレワーク週間を実施する予定だ。テレワークの推進では、政府の地方創生にも連動し、北海道の別海町でも「滞在型テレワーク週間」も行う。
Officeでは、コンシューマーにおけるデジタルライフの向上を訴求する。店頭販売PCの92%にOffice Premiumを導入しており、これらはすべてOffice 2016にアップグレードできることを紹介、利用する価値の訴求をしていくという。また、OneDriveやAndroid、iOS版Officeなど、Windows以外のプラットフォームでも使えることを提案していく。
Windows 10+デバイスでは、「ユーザーに革新的なPC体験をしてもらいたい」とアピールする。平野氏は特にディスプレイサイズが異なるIoTデバイスから大画面ディスプレイデバイスまで同じようにWindows 10を扱うことができるほか、Windows 7やWindows 8.1のユーザーは無償でアップグレードでき、OSの提供形態も新バージョンを発表してそのたびに販売するという方式からクラウド(Windows Update)から継続的に最新のアップデートを行っていくことを改めて訴求している。
記者会見では、これまでの代表執行役社長から日本マイクロソフト代表執行役会長に就任した樋口泰行氏も登場し、“会長”としての役割について説明した。
樋口氏は、「日本ではリレーショナルが重要」と述べ、主に法人ユーザーなどの「会社対会社の関係強化」や、これまでにはない業界になどに対する「新たな戦略的パートナーシップの構築」、さらに、日本政府や業界団体が進めている施策への協力などで大事になるという「顔を出すこと」、そして、日本マイクロソフトを含めてこれまで3つの企業で社長を経験してきた見地を生かした人材育成への協力などを会長職のミッションとして挙げている。
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