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» 2017年01月04日 07時00分 公開

2017年のPCが向かう先 エコシステムからの排除にどう対応するのか本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)

[本田雅一,ITmedia]
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モバイルファーストによりエコシステムからのPC排除が加速

 一方でさまざまな商品がIoT(Internet of Things)化されてきている昨今、このネットワーク化されたエコシステムからのPCの排除は、より一層進んできている。

 「排除」というと刺激的すぎるかもしれないが、極端というわけでもない。とりわけコンシューマー向けサービスに関しては、まず「モバイルユーザーを中心に考えること」が当たり前になって久しい。

 従来は、それでもWeb上のユーザーインタフェースとして、PC用のWebブラウザで閲覧した際の機能性を重視した設計がなされてきた。優先順位としてはスマートフォンが最上位でも、次はPC向け、その次にタブレット向けのユーザーインタフェースといった順だった。しかし、タブレットの優先順位はともかく、今やPCへの対応は不要と見なされるケースも少なくない。

 例えば、筆者が使うネットワーク対応の体組成計は、PCからの情報閲覧を(Webブラウザのインタフェースを含め)サポートしておらず、スマートフォンやタブレットでしか管理できない。

 写真共有を中心としたSNSなどでも、リンクをクリックするとWebで閲覧はできるものの、コミュニケーションそのものはアプリを開かなければできないサービスも多い。さらにIoT関連に至っては、BLE(Bluetooth Low Energy)でペアリングしたスマートフォン上のアプリのみで状態を確認できるのが当たり前の状況と言えよう。

 PCはそうした「輪の中」になかなか入っていけていない印象だったが、もはや現在に至っては決定的とも言える状況になってきた。

 理由は一概には言えないが、根本的な部分では一般消費者にとって、インターネットを通じて情報に接する最も身近な存在がスマートフォンだから……というのが、説得力のある論だろう。

 その結果としてコンシューマー向け製品・サービスがスマートフォン中心の設計となっていき、PC向け対応の優先順位が下がるのは必然だと言える。では、PCはこの輪の中に入って行けるのだろうか。

AppleとMicrosoftで異なる対応の仕方

 もっとも、PC用の基本ソフトを開発する企業の立場によって、対応の方法は変わるものだ。

 AppleはMacの位置付けを変える理由がない。iOSを用いたスマートデバイスで比較的優位な位置にあるからだ。MacをiOSデバイスに近づけるのではなく、パソコンというクリエイティブな作業に向いたパッケージを生かしつつ、スマートフォン(iPhone)との親和性を高めればいい。

 実際、AppleはmacOSの改良において大胆に位置付けを変えるような施策は打っておらず、「母艦」としてのMacを取り下げ、iOSデバイスと同列に位置付け直すことで、ユーザーが使い方に応じて用いる道具の一つとなるよう調整してきた。

 つまり、パソコン(Mac)を無理に輪の中に入れる必要がないのがAppleである。

Mac AppleはiOSデバイスが市場で有利なポジションにあるため、Macの使い勝手を無理にiOSへ近づける必要がなく、iOSデバイスとの親和性を高めるという選択ができる

 一方、モバイルデバイスにおいて基盤となる立ち位置を確保できていないMicrosoftの場合は、Windowsとモバイルデバイスの間にある谷を埋めたいと考えているはずだ。Windowsが再びARMプロセッサに対応し、Qualcommのプラットフォームで動作するWindows PCが開発できる環境を整えていく……としたのは、その一環としての戦略だ。

Windows MicrosoftはモバイルOSのWindows 10 Mobileが苦戦していることもあり、PC向けのフル機能版Windows 10をARMプロセッサのQualcomm Snapdragonに対応させるという戦略の変更を行った

 しかしながら、この施策はうまくいかないと筆者は見ている。

 かつて消費者は、「Windowsであること」や「Macであること」に価値を見いだしてきた。それぞれに異なるカルチャーと開発ポリシーがあり、向かう方向が異なり、何より未成熟だったからだ。どちらを選ぶかは、コンピュータをどのように使うのか、何が目的なのかによって必然的に答えも決まっていた。

 しかし今日、消費者が求めているのはアプリケーションそのものであり、ネットワークサービスと複数デバイスに跨ったアプリケーションの枠組み全体を価値として捉えている。そうした意味では、Microsoftが優れた商品を開発すれば、消費者もそれがWindowsであるか否かを意識することなく自然に受け入れるかもしれない。

 ただしWindowsは基本ソフトであり最終製品ではない。Surfaceも、Windowsの新しい可能性を示す先導役にはなっているが、実際に市場を作っていくのはOEM先のPCメーカーだ。汎用(はんよう)に開発する必要がある基本ソフトとコンピュータハードウェアを完全に一体化して開発していくことが難しい点は、これまでの歴史が証明している。汎用OSであることは利点でもあるが、ここではネックとなり得る。

 結果としてPCは、クリエイティブな用途に特化して、さらに先鋭化していくだろう。コンシューマー向けにギミックを考えるよりも、純粋に品質を上げていく方向へと進み、道具としての純度を高めていく。

 その結果として「パソコン」という商品の枠組みが見直され、情報・クラウドにつながる窓の役割を果たすスマートフォンやタブレットにばかり向かってきた消費者マインドが揺り戻したとしたら、そのときこそ新しい提案のときなのだと思う。

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