「数」よりも「価値」――中国Huaweiが考えるPC事業の可能性LTEモデルも「予定あり」(1/3 ページ)

» 2017年08月25日 20時30分 公開
[井上翔ITmedia]

 中国Huawei(華為技術)といえば、モバイルデータ通信機器やスマートフォンの分野で高い知名度をほこっている。同社は2016年2月、2in1タブレット「MateBook」でモバイルPC事業に本格参入を果たした。2017年5月にはクラムシェル型ノートPC「MateBook X」「MateBook D(日本未発売)」も投入し、そのラインアップを確実に広げている。

 スマホやタブレットの普及とPCそのもののコモディティ化(日用品化)によって、PC市場の競争環境は厳しさを増す傾向にある。そんな中、Huaweiはスマホやタブレットの世界からあえてPCの世界に参入した。そこにはどのような狙いがあるのだろうか。そして、これからどのような事業戦略を描いていくのだろうか。

 コンシューマービジネス事業担当COO(最高執行責任者)を務める万彪(ワン・ビャオ)氏が、日本メディアとのグループインタビューでPC事業の戦略を語った。

万彪(ワン・ビャオ)COO HuaweiのPC事業について熱く語る万彪(ワン・ビャオ)コンシューマービジネス担当COO
MateBook X 2017年5月に発表された13型ノートPC「MateBook X」。日本でも7月に発売された(写真はUSキーボードの中国仕様)
MateBook D 同じく2017年5月に発表された15型ノートPC「MateBook D」。こちらは日本では発表・発売されていない(写真はUSキーボードの中国仕様)

PC事業に参入したのは「オールシーンのスマートライフ」を提供するため

―― HuaweiがPC事業に参入した理由を改めて聞かせてください。また、目標があればそれも教えてください。

万氏 非常によく聞かれる質問です。

 理由の1つとしては、PCは現代の人々にとって欠かせないツールとなっていることが挙げられます。特にビジネスシーンにおいては、オフィスでPCなくして仕事を進めることはできません。また、AI(人工知能)などの新技術がPC業界に新たな活力を注ぐとも考えています。

 現在のPC市場に元気がないのは、長らく(PCそのものにおける)イノベーションが少なく、消費者側でも購入意欲の減退が発生したからであると考えています。購買意欲を刺激するような製品が出てきていないことが大きいのです。

 弊社は「オールシーンのスマートライフ」を提供することを目標に掲げています。(その目標に基づいて)まずはスマホがあって、ビジネスシーンではPC、エンタテイメント(娯楽)ではタブレットがあり、家の中にはスマートホームシステム、自動車には車載システムを用意しています。

 私達はまだ(PC業界では)新参者です。ですから「業界○位になる」といった目標は掲げていません。今やるべきことは、しっかりとした製品を作り、ユーザーエクスペリエンス(UX)を向上させて、継続的にイノベーションを起こし続けることです。一歩一歩、着実に歩みを進めていきたいと思っています。

スマートホーム Huaweiが展開するスマートホーム用機器のWebサイト(中国語簡体字)

MateBookのLTEモデルは「予定あり」

―― MateBookについて、SIMカードの入る「LTE(モバイル通信対応)モデル」を期待しているユーザーも少なくないと思います。リリースの予定はないのですか。

万氏 (LTEモデルを用意する)予定はあります。現在、社内では計画を立てているところです。

 PC製品については、ユーザーに“極上の体験”を与える革新的なものを提供することを目標としています。今後も、数を出すこと(出荷台数)を追い求めるのではなく、あくまでプレミアム(高付加価値)路線にフォーカスして、1つ1つの製品を「極めた」とものとして世に送り出したいと考えています。

―― Microsoftの「Always Connected PC(常時接続PC)」構想(参考記事12)において、最初に製品を作るメーカーとして名乗りを挙げていました。2017年秋から順次製品が出てくると思うのですが、情報にアップデートがあれば教えてください。

万氏 PC製品では、Microsoft Windowsを切り離すことはできません。MicrosoftがWindowsに新機能を追加した場合、弊社の製品もその新機能に対応することになります。Always Connected PCについても、導入する予定があるのは間違いありません。

COMPUTEX TAIPEI 2017での発表 COMPUTEX TAIPEI 2017でパートナーが発表された「Always Connected PC」。デバイスパートナーの1社として、Huaweiが挙げられている

バッテリー品質は「生命線」 PCは「ビジネス向け」に注力

―― 日本のPCメーカーでは、ノートPCのバッテリー持ちの測定にJEITA(電子情報技術産業協会)の定めた「JEITA 2.0(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver.2.0)」というものを採用しています。Huaweiでもこの測定法を採用してカタログに明記すれば、他社とのバッテリー持ちを比較しやすくなると思うのですが、いかがでしょうか。

万氏 PCのバッテリー品質は、弊社にとっての「生命線」と捉えていて、非常に重視している部分です。各国に出荷する際には、ローカルの標準規格に合わせて試験もしています。弊社でも、JEITA 2.0をベンチマークとして取り入れたいと考えています。

 MateBook Xはファンレス構造を採用しながら、(最上位モデルでは)Intel Core i7プロセッサを搭載しており、消費電力面や放熱面でも非常に工夫が施されています。

―― 先ほどVRやARの話がありましたが、現状のHuaweiのPCの中心はモバイルタイプのPCです。VR・ARを使うにはこれらのPCでは力不足で、「ゲーミングPC」のようなハイエンドPCが必要となりますが、将来的にゲーミングノートPCやデスクトップPCにも進出するのでしょうか。

万氏 確かに「ゲーム」はPC業界にとって大きな成長のきっかけになり得ます。しかし、先ほども触れた通り、私達はまだ(PC業界においては)「基礎固め」の段階で、そのことに専念したいと考えている。今のところは、ビジネス向けのノートPCをしっかりと作り上げていきたいと考えています。

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