ついに日本で発売 Apple「HomePod」を試して分かった“競合との違い”本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/4 ページ)

» 2019年08月13日 09時00分 公開
[本田雅一ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

Appendix

(1)FLACの再生はできるのか

 まだ確認できていない部分もあるが、恐らくは気になる方もいらっしゃるだろう。ということで、補記としてHomePodのFLAC対応についてお伝えしておきたい。

 HomePodは発売当初よりロスレス圧縮コーデックのFLACに対応しているといわれていた。iOSそのものにFLACのコーデックが含まれているためだが、Apple MusicはFLACには対応していない。では、どうすればFLACを再生できるのか。

 Appleに問い合わせたところ、AirPlay 2でFLACをHomePodに転送すると、そのまま再生できるとのことだ。ただしApple製の音楽プレーヤーでFLAC対応しているものがないため、この機能の動作確認は行えていない。

 例えば、「mora player」にALACとFLACのハイレゾファイルを転送しておき、これをAirPlay 2でHomePodに送ったところ、正常に再生できたものの、それが本当にハイレゾなのかどうか確認する手段がないからだ。

 普段、iOSデバイスで使っている音楽プレイヤー「KaiserTone」は再生ファイルのフォーマットだけでなく、出力先に応じたサンプリング周波数変換などを行い、どのフォーマットで出力するかを表示する機能がある。

 しかしKaiserToneはAirPlay 2での動作が怪しく(恐らく非対応)、HomePodを最大サンプリングレート8kHzまでの機器と誤認してしまった。ただし、KaiserToneにはちょっとしたバグがあり、いったんデバイス本体でハイレゾファイルを再生後、出力先をHomePodに切り替えると、出力先の属性をチェックせずにそのままストリームし始める。

 このときの音質は、恐らく何の変換も行われていないFLACのようだ。というのも次の曲に切り替わると、今度はなぜか44.1kHzに変換出力されるようになる(そして音質は明らかに変化する)。実際のところはストリーム内容を確認しなければ分からないが、この辺りの振る舞いが安定してくれることを望みたい。

(2)確実に向上しているApple Musicの音質

 もっとも、HomePodのみであれば、Apple MusicのAAC 256Kbpsでも十分ではないかと思う。Appleは2012年から「Mastered for iTunes」として、iTunesでの配信を目的とした音質改善のプログラムを進めてきた。

 これはmacOSのバージョンごとに行われてるコーデックのアップデートと、音楽制作ソフト「Logic Pro」で利用できるAACファイル出力のプラグインで構成されている。マスタリングエンジニアがマスタリング用プロジェクトファイルから、ダイレクトでAACを出力し、マスターと比較試聴しながらチューニングを行うことで、圧縮音源でも高音質を担保するというものだ。

 このMastered for iTunesは8月8日に「Apple Digital Masters」という名称に変更されている。実質的な内容は変化していないが、改良は常に行われており、近年はマスターとの区別が付かないほどに進化してきた。筆者自身、マスタリングルームで音質を確認したことがあるが、とても圧縮音源とは思えないレベルにまで向上している。

 ポイントは幾つかある。Apple Digital Mastersでは、AACエンコーダーに32bit浮動小数点精度の44.1kHz PCMデータを入力する。このときのサンプリングレートコンバーターを吟味し、プリエコーなどで音調が変化しないようにしていること。そしてディザ(規則的なノイズの一種)、あるいはそれに相当する処理で聴感上のS/Nを変える処理を“行わない”ことだ。

 CD品質の16bitであればディザは有効だが、マスタリング時に使う録音トラックは24bit以上の精度がある。16bitに丸めることなく、そのままエンコーダーにかけるのであれば、ディザを入れない方がS/Nは良く、また余分な情報が加えられないためエンコード効率も高まる。

 無償で利用できるこのエンコーダーでは、ソース素材との比較が行えるABテストも可能になっているので、Logic Proのユーザーは試していただくといいだろう。

 結果として、ディザありの16bit・44.1kHzをエンコードしたものより高音質になるというわけだ。Appleによると、米チャートにおけるトップ100のうち75%、グローバルでは71%がApple Digital Mastersで配信されているとのことだ。

 ご存じのように高音質ストリーミングのオプションをオンにしておけば、Apple Musicのストリーミング再生でも、この品質が担保される。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月28日 更新
  1. 購入制限はグラフィックスカードにも――年末のアキバ、厳しさが増す一方で「9800X3D」特価セットが登場 (2025年12月27日)
  2. マウスコンピューターがPC全製品の受注を停止 法人向けPC「Mouse Pro」も購入不可能に 販売再開は2026年1月5日から順次 (2025年12月26日)
  3. PCユーザー必見の2025年ベストバイ ポータブル電源「EcoFlow DELTA 3」を“最強のUPS”として導入した理由 (2025年12月27日)
  4. 貝殻デザインを採用したかわいいマウス「エレコム SHELLPHA M-SH30BBSKWH」が約2000円で買える (2025年12月26日)
  5. さらばWindows 10、ようこそ“画面付き”パーツ 古参も新規もアキバに集った2025年を振り返る (2025年12月26日)
  6. ソースネクストがDIGI+ブランド製エントリー15.6型ノートの販売を開始 (2025年09月19日)
  7. マウスコンピューターがWebサイトにおけるパソコンの受注を停止 2026年1月4日まで (2025年12月23日)
  8. そのアプリ、本当に安全ですか? スマホ新法で解禁された「外部ストア」と「独自決済」に潜むリスク (2025年12月26日)
  9. Ryzen 7×GeForce RTX 5050 Laptop GPUの「ASUS TUF Gaming A16 FA608UH」がセールで16万9800円に (2025年12月25日)
  10. 「買うならお早めに」が悲痛な叫びに変わった年末 猛暑の後に“価格高騰”の寒波が襲った2025年PCパーツ街 (2025年12月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー