Ryzen 5 7500FはGPUレスなので、何かしらのグラフィックスカードを搭載しなければ画面を出力できない。それだけに、どのGPU(グラフィックスカード)を選ぶかが、特に3Dグラフィックスを使うゲームやツールのパフォーマンスに大きな差を生む。
今回は、同じGPU(Radeon RX 6800 XT)でRyzen 5 7500FとRyzen 5 7600Xのスコアに差が生じるのかチェックしていく。まずは、3Dグラフィックスの総合ベンチマークテストアプリ「3DMark」の主要なテストの総合スコアを見てみよう。
3DMarkの総合スコアを大きく左右するのは、GPUの性能だ。CPUがスコアに与えるはそれほど大きくないとされているが、GPUに送り込むデータの生成はCPUで行うので、CPUの性能差もそこそこ重要だったりする(だからこそ「CPUスコア」という概念もある)。
とはいえ、先のテストと同様、Ryzen 5 7500FとRyzen 5 7600Xのスコアに大差はない。最高クロックの差が、ほぼそのままスコアの差となっている。
少なくともRyzen 5 7600XからRyzen 5 7500Fへの「ダウングレード」であれば、GPUの足を引っ張るようなボトルネックにはなり得ないだろう。
続いて、実際のゲームをベースとするベンチマークテストを実行してみよう。
まず、比較的軽量な「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」を試してみる。画質設定は「最高品質」として、フルHD(1920×1080ピクセル)、WQHD(2560×1440ピクセル)、4K(3840×2160ピクセル)の3つの解像度でテストを行った結果は以下の通りだ。
3DMarkと同じく「Ryzen 5 7500Fのスコアは少しだけ低い」という僅差に収まっている。
続いて、負荷の重い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」を実行してみよう。画質を「高品質」に設定し、フルHD、WQHD、4Kの3解像度でベンチマークを実行した結果は以下の通りとなった。
こちらも「Ryzen 5 7500Fのスコアがちょっと低い」程度である。グラフィックスカードを搭載することを前提にするなら、Ryzen 5 7500Fは性能を犠牲にしない費用の節約に一役買いそうである。
浮いたお金はグラフィックスカードやメモリ、またはSSDのアップグレードに充当すればいい。
最後に、Ryzen 5 7500Fの消費電力も確認してみよう。
Ryzen 5 7500FのTDPは65Wと、通常の「X」の付かないRyzen 7000シリーズと同じ仕様だ。今回はPCを起動してから10分間放置した状態の消費電力「アイドル」、3DMarkの「Time Spy Extreme」を実行中の最大消費電力を「高負荷時」としてワットチェッカーで調べてみた結果は以下の通りである。
高負荷時の消費電力を見比べると、Ryzen 5 7600Xよりも19W低い。設計上のTDPの差は40Wなので、それを考えると差が少なすぎるようにも思える。しかしそれでも、電気料金のことを考えると、20W弱の差は大きい。
これまでのベンチマークテストの結果を見れば分かる通り、Ryzen 5 7500FとRyzen 5 7600Xとの間に、GPUのボトルネックになるような性能差はない。そう考えるとTCO(総所有コスト)の観点でもRyzen 5 7500Fの優位性は高いといえる。
Ryzen 5 7500Fは、現時点におけるデスクトップ向けのRyzen 7000シリーズのエントリー製品だ。実際に試してみると、完成品(BTO)PCとセットでないと入手できないことが残念なほどによくできている。
別途グラフィックスカードを導入する前提で、Ryzen 5 7600/7600Xを搭載するPCの購入を考えているなら、CPUとしてRyzen 5 7500Fを選択できるか調べてみた方がいい。選べるなら、性能に大きな影響を与えないコスト削減策となるはずだ。特にRyzen 5 7600Xと比べた場合、消費電力が低いので運用面でのコストも低減できる。
CPUで浮いたお金で、他のパーツを強化する――そういうPC選び(カスタマイズ)も良いものだ。
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