“Androidとケータイマッシュアップ”は日本のケータイを変えるのか

» 2009年03月10日 07時00分 公開
[秋吉健(K-MAX),ITmedia]
Photo MCPCモバイルシステム技術検定プロジェクト テキストWG副主査の嶋是一氏

 マッシュアップの面白さは、多くの人とのコラボレーションでイノベーションを創出するところにある。こうした活動が、携帯電話向けプラットフォームのAndroid上で展開されたら、何が起こるのか――。こんな視点で携帯電話の今後の姿を解説したのが、MCPCモバイルシステム技術検定プロジェクト テキストWG副主査の嶋是一氏だ。

 同氏は、モバイルコンピューティング推進コンソーシアムが主催するセミナーで「Androidとケータイマッシュアップ」をテーマとする講演を行い、オープンソースプラットフォームのAndroidによって生まれる新たな携帯電話の姿や、携帯電話の枠にとらわれない新たなデバイスが登場する可能性について言及した。

 講演で嶋氏は、アプリケーションやデバイスといった分野ごとのマッシュアップの具体例を挙げながら、「付加価値の創造こそが、マッシュアップによる重要なポイント」(嶋氏)だと説明。生み出されたサービスがさらに新たなサービスを生み、常にソフトウェアやサービスの価値が成長していく面白い世界であるとし、こうした世界とオープンソースは切り離せない存在であると強調した。

Photo 各アプリケーションがそれぞれ最適なデバイスを選択し、またアプリケーション間で相互にデータや情報をやり取りすることで、シームレスで多機能なサービスを展開できるという

 嶋氏は、Androidが今後、携帯電話業界でブレイクするのかという点について、技術的側面から検証し、Androidを携帯電話向けブラウザの黎明期になぞらえて、「現在はまだ、その開発環境やコンテンツ配信の仕組み作りを行っている状況」と説明した。その上で「これまでの(携帯電話での)ソフトウェア開発や組み込み環境の構築はすべてがバラバラで大変だった。しかしAndroidではすべてがオープンソースでワンパッケージ化されるため、その苦労が少ない」とし、アプリケーションを利用するユーザーのみならず、開発環境においてもマッシュアップによる効率化が見込めると述べた。

 ハードウェアについては「これまでも勝手サイトというものがあった。これからは勝手ケータイのようなものが出てくるかもしれない」と、ライセンスに縛られない製品が開発される可能性も示唆した。

Photo 嶋氏は「人の歴史の中で属人機となったものは、腕時計とケータイの2つしかない」と語り、携帯電話の進化が今後のネットワーク社会の鍵になると話す
Photo 人の生活をサポートしたり、障害を支援する端末が生まれるかもしれない

 すでにアプリケーションやミドルウェア、OSについてはAndroidとLinuxがカバーしており、残るのはデバイスドライバとハードウェアとなるが、その部分も各企業や大学などで研究が始まっているという。通信端末として最も重要な通信デバイスも、無線LANやウィルコムのW-SIM、各社のカード型通信端末などを利用することで解決できるとし、勝手ケータイが夢物語ではないという見方を示した。「今後はプラモデルや自作PCのような勝手ケータイの開発が出来るようになるかもしれない。また各種デバイスやセンサーを応用し、人の感覚や機能を拡張する端末が生まれるかもしれない」(嶋氏)

Photo Androidのプログラムで重要になるのがインテントという存在。各アプリケーションの間に入り、アプリケーションが求める機能をどのデバイスにつなげればいいかなどを判断するフレームワークを利用し、アプリケーションが利用するデバイスや他のアプリとの柔軟な接続が可能になるとしている
Photo Androidはアプリケーション開発からデバイス開発までのすべてをオープンで構成できるため、これまでの携帯電話や通信端末の概念にとらわれない新しい発想の端末も開発が容易になる

 講演の後半には、AndroidとiPhoneとの性質の違いに言及し「iPhoneはよくオープンであるといわれるが、その言葉の多くは主にアプリケーションの開発資産の一部がオープンソースであることと、通信事業者を選ばないという意味でオープンだとされているにすぎない」と指摘。Androidはソフトウェア資産のすべてがオープンであるだけでなく、運用面においても多くの部分をオープンにできるという自由度の高さを強調した。

 Androidを採用した携帯電話(スマートフォン)は2009年3月時点で、アメリカのT-Mobileから1機種が発売されているにすぎず、その普及と機能の成熟にはまだ時間が必要な段階である。嶋氏も「今はまだシステムを作り上げている段階。一般に普及させるのはこれから」といい、ビジネスモデルを動かせる段階ではないという見方だ。

 先月スペインのバルセロナで行われたモバイル関連の展示会「Mobile World Congress 2009」でも、TIやNECといったメーカーがAndroidを採用した端末のプロトタイプを展示するなど、Androidを採用した携帯電話やスマートフォンは確実に増えることが予想される。特に携帯電話の開発コスト削減が叫ばれる日本では、オープンソースが担う役割は少なくないだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月06日 更新
  1. 飲食店でのスマホ注文に物議、LINEの連携必須に批判も 「客のリソースにただ乗りしないでほしい」 (2025年12月04日)
  2. NHK受信料の“督促強化”に不満や疑問の声 「訪問時のマナーは担当者に指導」と広報 (2025年12月05日)
  3. 「スマホ新法」施行前にKDDIが“重要案内” 「Webブラウザ」と「検索」選択の具体手順を公開 (2025年12月04日)
  4. 三つ折りスマホ「Galaxy Z TriFold」の実機を触ってみた 開けば10型タブレット、価格は約38万円 (2025年12月04日)
  5. 「楽天ポイント」と「楽天キャッシュ」は何が違う? 使い分けのポイントを解説 (2025年12月03日)
  6. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【12月3日最新版】 1万〜3万ポイント還元のお得な施策あり (2025年12月03日)
  7. 楽天の2年間データ使い放題「バラマキ端末」を入手――楽天モバイル、年内1000万契約達成は確実か (2025年11月30日)
  8. ドコモが「dアカウント」のパスワードレス認証を「パスキー」に統一 2026年5月めどに (2025年12月05日)
  9. NHK ONE、簡単には「閉じられないメッセージ」表示へ 目的は“NHK受信料”の徴収 なぜ強引な仕様に? (2025年11月12日)
  10. 鉛筆デザインのiPad用スタイラスペン「Nelna Pencil」発売 物理ボタンに9機能を設定可能 (2025年12月03日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー