「(KDDIが)スマートフォンで出遅れたのは事実。春商戦はほかの市場で戦う」――。1月25日、第3四半期の決算会見に臨んだKDDIの代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は、携帯電話最大の商戦期といわれる春商戦に向けた戦略について、こう話した。
NTTドコモがソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製のAndroid端末「Xperia」を発表し、ソフトバンクモバイルもAndroid端末の投入を表明するなど、春商戦ではスマートフォン市場が盛り上がると予想されている。KDDIも2010年にAndroid端末を投入する予定としているが、春商戦には間に合わないと見られ、小野寺氏は「(Android端末を)準備しているが、遅くなっているのは認めざるを得ない」と説明。前述の通り、春商戦については、ほかの市場で戦う考えを示した。
KDDIは2008年夏にアクティブエルダーを対象とした「URBANO」ブランドの投入でエルダー/シニア市場への取り組みを本格化させており、この第3四半期にはエルダー/シニア向け端末の販売台数が前年同期に比べて約2倍に伸びるなど大きく成長している。
春商戦向けには、このURBANOの最新モデル「URBANO BARONE」を投入してエルダー層のさらなる獲得を目指すとともに、子供向け端末「mamorino」の投入で新入学児童向けのニーズに対応。さらに、すでに発表済みの春モデル「簡単ケータイ K004」「AQUOS SHOT SH006」「SH005」のほかに、新モデルを発表することも明かした。
同社の携帯電話事業は、新たに導入した料金プランが好調に推移しており、あらかじめ指定した最大3件について通話を無料とする「指定通話定額」や下限が390円からのパケット定額プラン「ダブル定額スーパーライト」、キャリアを問わずメールの送受信が無料になる「ガンガンメール」が人気を博している。春商戦に向けては、学生とその家族を対象にした割引プラン「ガンガン学割」を発表済みで、KDDIはこうした料金施策とスマートフォン以外の端末の魅力で春商戦を乗り切る考えだ。
KDDIの第3四半期の決算は、移動通信事業と固定通信事業を合わせた売上高が、前年同期比1.7%減の2兆5853億円となり、営業利益も前年同期比7.4%減となる3768億円で減収減益だった。通期見通しに対する第3四半期までの営業利益の進捗は80.2%となった。
携帯電話事業は、売上高が前年同期比2.3%減の2兆14億円、営業利益が前年同期比7.8%減の4079億円で減収減益。営業利益の通期見通しに対する進捗率は80%だった。第1四半期から第3四半期までの純増数は55万で、通期の純増見通しの76万に対して7割を超える進捗で推移。小野寺氏は「(携帯電話最大の商戦期となる)春の商戦期があることを踏まえると順調な進捗」と見る。
販売手数料の平均単価は、第2四半期の4万4000円から大幅に改善された3万円となるなど、通期見通しの3万6000円に向けて順調に推移。この理由について小野寺氏は、秋冬のミッドレンジ端末のラインアップが拡充したことに伴う端末調達コストの低減が奏功したためと説明している。
なお、契約が伸び悩んでいるともいわれるUQ WiMAXの進捗については、計画から大きく外れているわけではなく、WiMAXとWINのデュアル端末の投入やエリアのさらなる整備で巻き返したいと話す。2.5GHz帯を利用する無線通信事業への参入条件として定められた「既存3Gキャリアの出資比率を3分の1以下にする」という3分の1ルールについては「どこかで廃止してほしいと思っている」(小野寺氏)と本音をのぞかせた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.