目標は世界シェア5位、ニーズがあれば日本にスマートフォン投入も――ZTEに聞く端末戦略

» 2010年06月02日 11時00分 公開
[memn0ck,ITmedia]
Photo ZTE Corporationのハンドセット部門で副社長を務める張暁紅(チャン シャオホン)氏。1998〜2001年にPHSシステムの開発に携わり、中国PHS市場でシェア1位に貢献。2009年からは、中国におけるLTEシステムの国家主要プロジェクトで企画チームのリーダーを務める

 ZTE(中興通訊)は、2008年度と2009年度の端末シェア(データ通信端末を含む)で、Nokia、Samsung、LG Electronics、Sony Ericssonといった世界トップ5の端末メーカーに続く、世界第6位に躍進した中国の通信機器メーカー。2009年の第4四半期には世界シェア5位を獲得するなど、さらなる成長を続けている。

 日本市場向けには、2008年に日本通信のb-mobile3G hours150用データ通信端末を投入したのを皮切りに、2009年にはウィルコムにWILLCOM CORE 3G用データ通信端末を提供するなど、徐々にラインアップを拡大。2010年には、同社の日本市場向け製品では初の音声端末となる「かんたん携帯 840Z」をソフトバンクモバイルに提供することが決まった。

 また、音声端末以外にも、通信モジュールを搭載した「みまもりカメラ」(ソフトバンクモバイル)や、モバイルWi-Fiルータ「b-mobileWiFi」(日本通信)を投入するなど、日本市場でも徐々に存在感を示し始めている。

 同社の日本市場に対する今後の製品戦略と世界戦略について、ZTE Corporation ハンドセット部門 副社長の張暁紅氏に聞いた。

2010年の目標は世界シェア5位

ITmedia(聞き手:memn0ck) ZTEは(データ通信端末と音声端末を合わせた)世界シェアで6位を獲得するなど、急速に出荷台数を伸ばしています。その原動力となったのは何なのか、2009年の戦略を振り返りながら教えてください。

張暁紅氏(以下、張氏) ZTEは、1998年に端末供給メーカーとしてスタートしています。ちょうど2年前の2008年に創業10年を迎え、出荷台数がトータルで1億台を突破しました。さらに、2009年と今年ですでに1億台、トータルで2億台を超えたことを、5月17日の「電子の日」に発表しています。

 急成長している要因としては、140カ国約500の通信キャリアに製品を納入していることが挙げられます。加えて、現地に事務所や支社を設立し、現地のパートナー企業と連携して通信キャリアの細かなニーズに応えた製品をすばやくカスタマイズして納入するなど、各パートナーとうまく協力できていることが非常に重要だと言えます。

 今や100カ国以上に事務所や支社を開設しており、現地スタッフがより早くユーザーや通信キャリアからニーズを聞き、それをリアルタイムに中国本社の研究開発拠点に伝えられるのも我々の強みです。

 これらのニーズに応えるためにZTEでは、毎年、利益の10%を開発費に当てています。例えば、ハンドセットでもハイエンドからミドルレンジ、ローエンドまで、ハンドセット以外でもデータ通信カードやモジュール、モバイルブロードバンド製品などラインナップが豊富で、通信方式もGSM、W-CDMA、CDMA 2000、TD-CDMA、PHS、LTEなどほぼすべてに対応しているので、細かくカスタマイズが行えるのも強みです。こういったさまざまな通信方式に対応しているメーカーは、世界でも非常に少ないと思われます。

ITmedia 世界市場全般と日本市場について、2010年のシェア拡大に向けた戦略を教えてください。

張氏 世界市場では、2009年度の端末出荷台数が6000万台規模まで伸びました。内訳としては、音声機種が4000万台で、データカードやモジュールなどが2000万台となっています。2010年度は8000万台の出荷を見込んでおり、2010年は通年の出荷台数で世界シェア第5位、4年以内に世界のトップ3に入ることを目指しています。

 技術的には各国の通信方式に対応するなど、市場で競争力があると思っていますが、ブランド力はまだ世界のトップメーカーと比べると弱いのが現状です。競争力強化に向けて、他メーカー端末との差別化ポイントを強化し、細かいカスタマイズニーズへのすばやい対応に力を入れていきたいと思っています。

 2010年は欧米や日本などでのシェアをさらに伸ばしたいと考えており、欧米においては2009年、現地に研究開発を手がける専門チームを設置しています。2010年はさらに、その専門チームを拡大する予定です。日本には専門チームは設置していませんが、中国と地理的に近いこともあり、中国のマーケティングや技術関係の人材を来日させて対応しています。

 2008年には日本法人であるZTEジャパンも正式にスタートしており、日本のニーズに対応するために、従業員数もここ1年で倍増させています。現在では、日本で最初の納入先である日本通信をはじめ、日本の主要通信キャリアの1社であるソフトバンクモバイルなどと非常に良好な関係を築いています。

みまもりカメラはZTEから提案、今後はスマートフォンにも注力

ITmedia フォトフレームや家庭用ネットワークカメラ、電子書籍リーダーなど、通信モジュールを搭載した新たな機器が続々と登場しています。この分野における2010年の戦略を教えてください。

Photo 2010年秋に発売予定の「みまもりカメラ」(ZTE製、ソフトバンクモバイル)。3Gモジュールが内蔵されており、ペットの見守りや防犯用途で利用できる家庭用ネットワークカメラだ

張氏 今年以降、フォトフレームや家庭用ネットワークカメラ、電子書籍リーダー、MIDなど通信モジュールを搭載したデバイスの出荷台数が増えてくると思われます。ZTEでも、こうした製品に力を入れていきたいと思っています。

 例えば、ソフトバンクモバイルに供給する「みまもりカメラ」は、同じような製品を2007年から海外で販売していました。人気を博していたので、ZTEからソフトバンクに販売を提案した製品です。もちろん、海外モデルをそのまま持ってきたものではなく、日本向けのカスタマイズを施しています。

 ほかにも、海外でさまざまな通信モジュールを搭載した製品を販売しているので、テレメタリング製品なども含めて日本市場に適した製品があれば提案していきたいと思っています。特に、フォトフレームや電子書籍端末などは日本でも拡販していきたいですね。

Photo 日本通信向けに5月24日に発売されたモバイル無線LANルータ「b-mobile WiFi」。初回出荷台数は1000台と少なかったが、予想以上の反響ですぐに完売。SIMフリー端末で通信回線の縛りがなく、本体価格が1万9800円と安いのも魅力だ

ITmedia 日本でも音声モデルの840Zを供給することになりました。日本市場の音声端末戦略についてお聞かせください。また、最近では、AndroidやWindows phone、Symbianなど多彩なモバイル機器向けプラットフォームがありますが、ZTEではどのように対応していくのでしょうか。

張氏 日本の通信キャリアは各種の仕様に対する要求が非常に高く、カスタマイズにも高い能力が必要です。ソフトバンクモバイルとは数年間かけて信頼関係を築いてきており、ニーズに素早く対応できたことが、今回の「かんたん携帯 840Z」の受注につながったと思っています。840Zは、ソフトバンクモバイル以外の日本企業と提携してソフトウェアを開発しており、こういったパートナー企業との連携も重要だったと考えています。また、他メーカーと比べるとコストメリットも非常に大きかったのではないでしょうか。

 容易ではないと思いますが、今後も日本市場で音声端末のラインアップを増やしていきたいと思っています。そのためにも、これまでのように、現地の企業とWin-Winの関係を作っていきたいです。

Photo ZTE初の日本市場向け音声機種「かんたん携帯 840Z」。不在通知や操作方法を光って教えてくれるボタン、ワンタッチダイヤルボタンを搭載したベーシックなシニア向けモデルだ

ITmedia 世界のモバイル市場のトレンドをどう見ていますか。また、そのトレンドにZTEとしてどのように対応するのでしょうか。

張氏 音声機種では、世界的なトレンドとしてスマートフォンが増えてきています。ZTEでもスマートフォンの開発に注力しており、特に、今後は価格が安く多機能なスマートフォンが増えてくると考えています。すでに、Androidベースのチャイナモバイル独自のプラットフォーム「OPhone」を採用した端末を供給していますし、Windows Mobileを搭載したスマートフォンをポルトガルで販売しています。

 ほかにも、BMP(BREW Mobile Platform)を搭載した端末「ZTE Bingo」の開発・販売実績があるなど、ZTEでは多くのプラットフォームについて研究開発を行っており、今後も通信キャリアの動きに注目して戦略的に協力できるような体制で臨む考えです。当然、日本の通信キャリアのニーズがあれば、スマートフォンのようなデバイスも提供していきたいですね。

 iPadやMIDなどのように、人の生活シーンにより近い製品も増えてきましたし、我々もiPhoneのような成功に学ばなければならないと思っています。ネットワークやインターネット、マルチメディア、マスコミなどが融和的に発展していく中で、モバイルの役割は非常に重要になっていきます。今後はゲームやエンターテインメントだけでなく、ビジネスなどに対しても、よりリッチなサービスが展開できる端末が求められるでしょうから、ZTEでもそういったニーズに対応できるように製品を提供できるようにしたいと思っています。

Photo ZTEのAndroid端末「ZTE Blade」
Photo 同じくAndroid端末の「ZTE Racer」

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