「LTEが導入されたら我々の強みが生きる」――ZTEが日本市場に見る“チャンス”ワイヤレスジャパン2009

» 2009年07月27日 21時46分 公開
[田中聡,ITmedia]

 「ワイヤレスジャパン2009」に出展していたZTE(中興通訊)は、中国の3G市場で29%、世界6位のマーケットシェアを誇る大手通信機器メーカーだ。通信機器のみならず、UMTS(W-CDMA)やCDMA2000 1X、EV-DOなどの通信インフラの開発にも注力している。

 同社は2008年に日本法人のZTEジャパンを設立し、ウィルコムの高速通信サービス「WILLCOM CORE 3G」向け端末「HX003ZT」や、日本通信のプリペイド方式のモバイルデータ通信サービス「Doccica」(ドッチーカ)、「b-mobile3G」向け端末を供給している。またワイヤレスジャパン2009では、世界初となるEV-DO Rev.BとLTEのデュアルモードシステムのデモを実施した。

 世界では着実に存在感を高めつつある同社だが、日本ではどのような戦略で通信事業を展開していくのか。ZTE Corporation 東アジア・東南アジアエリア 総経理の銭強(チィェン・チァン)氏に話を聞いた。

photo ZTE Corporation 東アジア・東南アジアエリア 総経理 銭強(チィェン・チァン)氏

LTEの実証実験では下り42〜43Mbpsを実現

ITmedia 今回、ワイヤレスジャパン2009に出展した狙いを教えてください。

銭氏 ワイヤレスジャパンでは弊社がインフラを提供しているUMTS(W-CDMA)、CDMA2000 1X、EV-DOの技術を使った製品を展示しているほか、LTEとEV-DO Rev.Bのデュアルモードシステムのデモを実施しています。日本は通信技術が最も発展している国だと認識しているので、弊社が優れた技術を持っていることをアピールしたいと考えました。

ITmedia LTEの実証実験はどの程度進んでいるのでしょうか。

銭氏 日本ではまだ実験は行っていませんが、一部の国では商用化に向けた実験を行っています。現時点での下りの通信速度は42〜43Mbpsを実現しています。日本では2010年半ばから下半期に商用化の実験を開始する予定です。

ITmedia 2010年以降の次世代通信はLTEが主流になると見られていますが、ZTEのネットワークインフラもLTEが主軸になるのでしょうか。

銭氏 世界の通信方式はLTEの方向に発展していくので、我々もLTEに力を入れようと考えています。

ITmedia その場合、ZTEならではの強みはあるのでしょうか。

銭氏 我々はLTEを設計する過程で「SDR(Software Defined Radio、ソフトウェア無線)」技術を使っています。通信方式が変わることで端末の仕様も大きく変わりますが、SDR技術を取り入れることで、ハードウェアは大きく変更せず、ソフトウェアのアップデートをすることで、異なる通信方式に対応できます。現在の3G端末にもSDR技術を採用しています。

 IT産業は技術の進歩がとても早く、3〜4年で新しい技術に切り替えないといけません。ユーザーがソフトウェアをアップデートするだけで済めば、(端末への)投資が無駄になることはありません。我々はユーザーの投資が長く保証されるよう、SDR技術を導入しています。SDRはいろいろな会社が導入している技術ですが、ZTEは世界で一番早く、SDRの大規模な商用化を実現しました。

日本は長期的に見て重要な市場

ITmedia 最近の日本市場は端末需要の落ち込みが取りざたされていますが、そうした現状も踏まえ、日本市場をどのように見ていますか?

銭氏 日本市場は米国や欧州と並び、とりわけ通信設備や携帯端末については、長期的に見て重要な市場だととらえています。一時的な経済の不振や需要の落ち込みで、我々が戦略や投資を変えることはありません。これからも積極的に市場を開拓していきます。

 2G時代の日本端末は他国と異なる仕様だったので、海外メーカーはなかなか日本市場に踏み込めませんでした。しかし日本で3G技術が普及したことで、我々にとっても日本に参入するチャンスが訪れました。

photo ウィルコムのWILLCOM CORE 3G対応データ通信端末「HX003ZT」

ITmedia 現在ZTEは、日本ではウィルコム向けにデータ通信端末を供給していますが、ウィルコムを選んだ理由を教えてください。

銭氏 日本ではウィルコム以外にも、いろいろな企業に技術や製品を提供しています。ウィルコムとはデータ通信端末のほか、XGPやTDD技術でも協力してきました。また、我々はXGPの国際展開を推進する「XGPフォーラム」の一員でもあります。

ITmedia ZTE製の端末は日本ではデータ通信タイプが中心ですが、音声端末やスマートフォンなどを日本で提供する予定はあるのでしょうか。

銭氏 ユーザーの需要を考え、さまざまな製品を開発している段階です。日本は電子製品の消費大国なので、我々も日本の市場には注目しています。日本ユーザーに商品を認めてもらえるよう頑張りたいですね。

ITmedia 日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルがLTEを導入することを表明していますが、インフラを提供するキャリアは決まっているのでしょうか。

銭氏 日本では特定のキャリアとの関係を築いていくのではなく、全キャリアとの関係を発展させていこうと考えています。

日本向けLTE端末も供給する

ITmedia 端末開発とネットワークインフラ、日本市場ではどちらが主軸になるのでしょうか。

銭氏 技術の発展に伴って新しい需要が生まれてくる可能性があるので、一言で説明するのは難しいですね。例えば、日本ではデータ通信端末の需要が急増していますが、日本で流通しているデータ通信端末の多くは海外メーカーが供給しており、(データ通信の分野では)日本メーカーは需要に合う製品を十分には提供できていません。携帯市場は飽和したと言われていますが、必ずしもそうではなく、新たなチャンスも生まれてくるのではと思います。

ITmedia つまり、日本メーカーが手薄になっている分野を重点的に攻めるということですね。

銭氏 もう1つ例を挙げましょう。2010年以降は日本でもLTEのサービスが始まります。LTEが普及したらそれに対応する端末も必要ですが、日本メーカーがLTEの対応端末をスムーズに供給できるかは未知数です。この点は海外メーカーにもチャンスがあると思います。

ITmedia 日本向けのLTE端末を提供することも検討しているのですね。

銭氏 日本のキャリアとはいろいろ話をしています。端末は日本ユーザーの需要を考えた上で開発していきたいですね。

ITmedia 日本のケータイはおサイフケータイやワンセグなど、対応すべき独自の機能が多いことでも知られます。

銭氏 日本市場で端末を売るには、セールスポイントがないといけません。ZTEの一番のセールスポイントは、端末の“カスタマイズ”ができること、つまりユーザーの需要に応じて多彩な製品開発ができることだと思っています。

ITmedia 日本市場での展開について、おおまかなおロードマップを教えてください。

銭氏 ZTEの日本での売上は、2008年は1000万ドル未満でしたが、2009年は5000万ドル、2010年は1億ドル突破という目標を設定しています。もちろん容易に実現できる目標ではありませんが、弊社には豊富な製品ラインがあります。まずはネットワークと端末の2つの分野を日本市場で受け入れてもらえるよう努力します。

ITmedia 日本ではSamsung電子やLGエレクトロニクスなどの海外メーカーが端末を供給していますが、こうしたメーカーと渡り合うための具体策はあるのでしょうか。

銭氏 まずはZTEの知名度を高めなければなりませんが、ネットワークは企業向け、端末はコンシューマー向けと宣伝方法は異なります。いずれにせよ、より多くの人にブランドを認めてもらう必要があります。端末については、キャリアの要望に応じてカスタマイズするという方法を採っていきます。技術の発展に伴ってケータイの役割も変わってきているので、(ケータイの普及を先導する)キャリアと一緒に開発していこうと考えています。

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