5月に開幕した上海万博では、China Mobile(中国移動)がTD-LTEのテストネットワークを展開している。TD-LTEとは、中国独自の3G規格であるTD-SCDMAを発展させた次世代通信規格であり、送信と受信とで異なる周波数帯域を利用するFDD(Frequency Division Duplex)ではなく、1つの周波数帯域で送受信を行うTDD(Time Division Duplex)の技術を用いた通信方式だ。China Mobileは2011年にTD-LTEを商用化することを目指している。
万博会場では、MotorolaやEricsson、HuaweiといったインフラベンダーがTD-LTE設備を提供しており、今回はHuaweiの設備を利用したTD-LTEのサービスをテスト車両で体験した。
TD-LTEのテストエリアは2.3GHzの周波数帯を利用しており、帯域幅は20MHz。2×2のMIMOを採用している。Huaweiは実測での下り最大通信速度を29Mbpsと発表しているが、デモの説明員によれば、平均して10Mbps程度の下り通信速度を実現しているという。合計で17の屋外基地局が設置され、5.28平方キロメートルの万博会場をカバーしている。
このTD-LTE網を使ったサービスの1つが高解像度のビデオ監視システムだ。会場内を運航するフェリーの船内や、周辺道路など、各地に設置された監視カメラの映像がTD-LTEを使ってアップロードされている。
また、メディア向けの映像/データ伝送サービスも行っているという。デモンストレーションでは、筆者を含めた取材陣をビデオで撮影し、TD-LTE網を使って映像をリアルタイムにアップロードしたのち、テスト車両内の画面に映し出していた。
取材陣を撮影した映像は、Huawei製のTD-LTE対応端末でアップロードされていた。テスト車両に表示される映像には約5秒の遅延が発生していたが、あくまでも動画のエンコードに時間がかかっているとのことだったそのほか、HD(720p)画質でのモバイルテレビ会議システムも利用できる。デモでは、時速30キロ程度で会場を走行するテスト車両とのテレビ会議を試すことができた。画面には高解像かつコマ落ちのない映像が映し出され、遅延を感じることなく会話が可能だった。
時速300キロでLTEはどうなる――上海R&Dセンターで見たHuaweiの最新技術
Mobile World Congress 2010:データ通信端末と内蔵モジュール事業を強化――Huaweiに聞く、日本市場戦略
世界規模の技術はここで生まれている――Huawei本社に行ってきた
「Pocket WiFi」は世界でも売れている――徹底した“お客様志向”で生まれるHuawei端末
富士通とドコモ、LTEのフィールド実証実験を札幌のユビキタス特区で実施
ソフトバンクモバイル、1.5GHz帯のLTE屋外実験で下り最大70Mbpsを達成Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.