激変する携帯市場で、ベンダーの支持を集められなかった――Symbian Foundationのプリチャード氏Symbian Exchange & Exposition 2010

» 2010年11月12日 23時32分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo Symbian Foundationのチーフアーキテクト、トム・プリチャード氏

 携帯電話向けOS、Symbianを推進するSymbian Foundationは11月8日、これまでの開発やコミュニティなどの活動を打ち切り、今後はライセンス供与団体となることを発表した。これに伴いSymbianは、フィンランドの端末メーカー、Nokiaの管理下に入ることになる。

 NokiaがSymbianを買収し、オープンソースにすると発表したのは2008年の6月。それから約2年半弱のあいだにiPhoneやAndroid端末が急速にシェアを伸ばし、市場の勢力図は大きく変化した。Symbianは、携帯メーカー大手のSamsungとSony Ericssonが新端末の開発を見送ると発表するなど、苦戦を強いられている。

 オランダ・アムステルダムで開催されたSymbianのイベント「Symbian Exchange & Exposition 2010」において、Symbian Foundationのチーフアーキテクト、トム・プリチャード氏に、オープンソース戦略の成果と今後のビジョンについて聞いた。

ITmedia(聞き手:末岡洋子) Symbian Foundationの役割が大きく変わると発表されました。

トム・プリチャード氏 戦略的方向性が変わります。これまでは、オープンソース団体として開発やコミュニティ活動を進めてきましたが、新戦略の下ではライセンス供与団体となります。

 ここで重要なのは、Symbianプラットフォームは今後も成長していくということです。Symbianは今後もオープンソースであり、これまでEclipse Public Licenseなどで公開してきたコードに変更はありません。今後、新たに開発する部分についてはNokiaの判断になりますが、Nokiaは今後もオープンなプラットフォームとしてSymbianを維持するのではないか、と我々は予想しています。

ITmedia Symbian Foundationは当初、複数ベンダーが支持するスマートフォンのプラットフォームを目指していました。今回の戦略変更は、Symbian Foundationが当初の目標を実現できず、失敗したということでしょうか。

プリチャード氏 失敗したというのは正しい解釈ではないと思います。

 当初の目標は、Symbianをオープンソースにすることでした。我々は予定より4カ月早い2010年2月に、それを実現しました。Symbianのオープンソース化はこれまでで最大規模のオープンソース化プロジェクトで、この成果には自信を持っています。ですから、失敗とは思っていません。

 一方で、“多様なベンダーからのサポートを得る”という目標の達成については、十分ではありませんでした。これが今回の戦略変更の原因です。以前と比べると、SymbianのOEMの数は減っており、現時点ではさまざまなOEMの中間役というFoundationの役割は必要ないと判断しました。

ITmedia 今回の決断は日本のSymbianエコシステムにどのような影響するのでしょうか。

プリチャード氏 日本はとても革新的な市場で、Symbian OSを搭載した多数の端末がリリースされています。NTTドコモや富士通はSymbian Foundationのボードメンバーであり、今回の戦略変更を含む、重要な意思決定に関わるディスカッションに参加しています。

ITmedia SamsungとSony Ericssonが、Symbian端末の開発を見送る方針を明らかにしており、今年のイベントに2社の姿はありませんでした。SamsungとSony Ericssonは、なぜSymbianではなくAndroidを選んだのでしょうか。

プリチャード氏 これまでSamsungとSony Ericssonは複数のOSを採用してきました。ところが世界同時不況の影響もあり、複数OSへの対応はコストがかさむことから、対応OSの種類を減らすことにしたと理解しています。

 Sony Ericssonとは旧知の仲で、よくやりとりしていますが、Androidは長期的戦略ではないと理解しています。コスト面の理由から、“当面はAndroidを採用することにした”と見ており、再度対応プラットフォームを拡大する際には、またSymbianを選んでほしいと願っています。

ITmedia では、Androidを選んだ理由は技術的なものではなく、経済的なものだということでしょうか。

プリチャード氏 Symbianは強固なスマートフォンプラットフォームで、Androidと比べて多くの強みがあると信じています。それは数値が示しており、2010年第2四半期(Q2)には、iPhoneとAndroidを合わせた数より多くのスマートフォンを出荷しています。

ITmedia しかし、Symbianのシェアは減っています。

プリチャード氏 Symbianは10年以上前からモバイル端末向けOSを提供しています。モバイルが注目され、さまざまな企業が参入するようになったため、参入企業が増えた分、われわれのシェアも少なくなりました。シェアは減っているかもしれませんが、Symbianの成長率は健在で、Q2の年間成長率は41.5%増でした。

ITmedia Symbianは当初から「スマートフォン」と称していましたが、市場はiPhoneやAndroidがスマートフォンで、Symbianを搭載したNokiaはスマートフォンと見ていません。この状況をどう見ていますか。これは米国でシェアが伸び悩んでいることと関係があるのでしょうか。

プリチャード氏 “スマートフォンと見られていない”のは、問題だと思っています。Nokiaはずっと前からSymbianで“スマートフォン”を作ってきたのですから。Nokia端末の人気が高いのは、機能が優れていたからです。Googleがスマートフォンという言葉をヘビーに使うようになったからといって、Nokiaの人気が衰えたとは思いません。

 ただ、Symbianの北米でのシェアは欧州やアジアと比べると低く、スマートフォンが普及していなかった米国で、Googleがスマートフォンと名乗ったことは影響しているかもしれません。

ITmedia Symbianアプリの開発は難しいといわれています。開発者を増やすために、どのような戦略で臨むのでしょうか。

プリチャード氏 開発では「Qt」にフォーカスします。Qtは優れたUIをもつアプリケーションを容易に開発できる技術で、PythonやRubyなども利用できます。UI開発の「Qt Quick」を使ってテーマを開発できますが、これは他のプラットフォームでは実現していない独自機能です。

 互換性という点では、Qtには「Smart Installer」という機能があり、開発者がアプリケーションにコードを1行加えるだけで、アプリケーションを動かすのに必要なQtバージョンが(ユーザー側の)端末に自動でインストールされます。つまり、アプリケーションを作成し、コードを1行加えるだけで、Symbian ^1、^2、^3のすべての端末でアプリを動かすことができるのです。

 Qtによってアプリ開発は大幅に効率化され、作業も削減されます。80〜90%のアプリケーションの開発はQtで十分だと思います。さらに深い機能を求める場合は、Symbian C++などを利用することになります。

ITmedia Symbianプラットフォームの今後の計画について教えてください。

プリチャード氏 Symbianはこれまで、バージョン3(^3)などと番号をつけて提供してきましたが、今後はNokiaの端末アップデート技術を利用して新機能を配信します。ユーザーは、購入したデバイスで継続的に最新機能を使えるようになります。

 Symbianの技術開発計画に変更はありませんが、バージョン3などというラベルが変わることになると思います。

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