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» 2013年03月13日 10時00分 UPDATE

携帯電話事業者の熾烈なシェア争いと局地戦(前編):純増数・契約数・シェアから読み解く、携帯キャリアの2012年

TCAが毎月発表する契約純増数と累計契約数は、携帯キャリアの勢いを計る1つの指標になる。本特集の前編では、2012年のデータをもとに、各携帯キャリアの勢力図を解説していきたい。

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 携帯電話事業者は、熾烈なシェア争い、純増競争を繰り広げているが、多くの報道で、NTTドコモの苦戦がクローズアップされている。競争激化の背景としては、製品ラインアップや料金・キャンペーンなどの各社施策によるところが多いと考えられるが、契約数・純増数・シェアなどについて確認することで、いくつかの傾向が見られた。

 主要3キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル)の契約数状況については、TCA(社団法人電気通信事業者協会)による事業者別携帯電話契約数情報が、毎月発表されており、誰でも確認できる(TCA 携帯電話・PHS契約数 http://www.tca.or.jp/database/)。※以前はイー・アクセス(イー・モバイル)も含まれていたが、同社が発表しなくなったことで主要3キャリアのみで傾向について考察した。

 このTCAの2012年月次データを中心にExcelにまとめて、傾向についてチェックした。一部はピックアップして掲載するが、詳細は、本記事と併せて参照いただきたい。

契約数・IP接続サービス・通信モジュール

 まずは、事業者シェアを確認した。

契約数
2012年12月末契約数 2011年12月末契約数  
キャリア 累計 シェア 累計 シェア 増減率
NTTドコモ 6098万8100 47.2% 5962万4400 49% -1.7%
au 3681万7200 28.5% 3429万7900 28.2% 0.3%
ソフトバンク 3132万2000 24.3% 2783万5300 22.9% 1.4%
携帯電話総計 1億2912万7300 100% 1億2175万7600 100% 6.1%

 キャリア別のシェアは、2011年末と比較するとNTTドコモが▲1.7%の47.2%、KDDI +0.3%、ソフトバンク +1.4%ということで、多くの報道機関が「ドコモの一人負け」と報ずる根拠になっているはずだ。

IP接続サービス加入状況
2012年12月末IP接続サービス 2011年12月末IP接続サービス  
キャリア 契約数 加入率 契約数 加入率 増減率
NTTドコモ 5164万4500 84.7% 5170万8500 86.7% -2%
au 2903万8900 78.9% 2807万7600 81.9% -3%
ソフトバンク 2327万6300 74.3% 2133万3900 76.6% -2.3%
携帯電話総計 1億395万9700 80.5% 1億112万 83.1% -2.5%

 IP接続サービスの加入状況を見ると、前年対比で各社ともに2〜3%ほど減少しているが、ドコモは他社に比して84.7%と非常に加入率が高く、KDDI 78.9%、ソフトバンク 74.3%と大きな開きがある。

通信モジュール
2012年12月末 2011年12月末  
キャリア 純増数 累計 累計 増減率
NTTドコモ 73万6900 300万100 226万3200 132.6%
au 34万2000 222万3000 188万1000 118.2%
ソフトバンク 67万7600 256万7700 189万100 135.8%
合計 175万6500 779万800 603万4300 129.1%

 通信モジュールは、ドコモとソフトバンクが強い。明確な内訳に関する定義がなされておらず、フォトパネルやデジタルサイネージ、自動販売機、スマートメーター、リモート監視、車載器などが対象になっていると思われるが、ドコモはエリアの広さや法人営業の強さなどから累計300万もの契約数があることは理解できる。KDDIはフォトパネルのほかに、トヨタ自動車向けの車載モジュールなどが想定されるが、ソフトバンクのこの増加率は、何が起因しているのか、想定が難しいので同社のサイト(http://mb.softbank.jp/biz/m2m/)などを参照してみたが、法人向け需要よりもフォトパネルに力を入れた結果の29.1%増という結果ではないかと推察する。

月次純増数推移

 2012年の月次契約純増数のみに着目すると、各種キャンペーン・割引施策の変わり目となる6月と、iPhone 5が発売され供給が安定した10月・11月に関して、NTTドコモだけが大きく数字を落としていることが分かる。

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 さらに詳しく見ていくと、国内2番目の市場となる関西エリア、3番目の市場となる東海エリアは、同時期に純減を繰り返し、特に関西エリアは7月・9月も純減したことで、NTTドコモ全体における影響度が非常に大きかったと言える。

エリア別の純増・契約シェア

 NTTドコモの純増が他社よりも少ないエリアの中で北海道・東北・北陸に関しては、もともと50%以上の高いシェアを誇っており、他社の伸びがシェア低下の要因となっているだけで、あまり危惧するような状況ではない。一方で、関西は44.7%、東海はシェア41.3%とドコモの全国平均47.2%よりもかなり低く、かつ、全国の約27%をこの2エリアが占めていることから、影響度の高さが明らかだ。

年月   2012年12月末 2012年1月末  
エリアシェア 月間純増数 累計 シェア 累計 シェア シェア増減
東海・中部
NTTドコモ(東海) 11% 8700 598万9000 41.3% 595万9700 42.7% -1.4%
KDDI(中部) 2万300 425万3800 29.3% 402万2700 28.8% 0.5%
ソフトバンクモバイル(東海) 2万1400 426万3500 29.4% 397万3100 28.5% 0.9%
合計 5万400 1450万6300 100% 1395万5500 100%
関西
NTTドコモ(関西) 16% 3600 912万2900 44.7% 910万3400 46.6% -1.8%
KDDI(関西) 3万5200 653万500 32% 610万9000 31.3% 0.8%
ソフトバンクモバイル(関西) 2万8400 473万5900 23.2% 432万5600 22.1% 1.1%
合計 6万7200 2038万9300 100% 1953万8000 100%
全国
NTTドコモ 100% 23万5100 6098万8100 47.2% 5971万200 48.8% -1.6%
KDDI 23万9200 3681万7200 28.5% 3447万9000 28.2% 0.3%
ソフトバンクモバイル 27万4700 3132万2000 24.3% 2806万1900 23% 1.3%
合計 74万9000 1億2912万7300 100% 1億2225万1100 100%

 国内3番目の市場となる東海エリアでは、ソフトバンクが全国平均24.3に対し、29.4%のシェアとなり、KDDIの29.3%を抜いている非常に強いエリアだ。関東エリアにおいても、ソフトバンクは26.7%でKDDIの26.4%を抜いており、局地戦でソフトバンクがシェア2位を狙っていることがうかがえる。 複数回線を保有する個人、キッズケータイやフォトパネルなどを含めた施策が受け入れられるエリアということになるだろう。

 国内2番目の市場となる関西エリアでは、KDDIが32%と全国平均の28.5%を大きく上回り、ソフトバンクのシェアが非常に低い北海道の33.2%に次ぐ非常に強いエリアだと言える。ドコモの全国平均シェアからみると2.5%(47.2%ー44.7%)、ソフトバンクから1.1%(24.3%ー23.2%)を奪っている形だ。シェア増減だけを見れば、ソフトバンクは1.1%の増加でシェアは減少しているが伸びており、ドコモが▲1.8%と全国で最もシェアを落としたエリアであった。(関東でもシェアは▲1.8%だが、ソフトバンクが強かっただけであり、純増シェアはKDDIとほぼ同じで悪くない。)

 関西エリアでは数年前までは、無料通話を武器にソフトバンクが強く、さらにiPhoneの取り扱い開始でシェアを高めていたはずだが、KDDIがiPhoneを取り扱い開始し、さらに固定回線ブロードバンド事業者(ISP)との提携により、同ISP加入ユーザに1回線あたり1480円の割引を行う「スマートバリュー」を開始したことで、シェアを高めていることが推察される。NTT東日本エリアでは、フレッツのシェアが高いが、関西では、関西電力グループケイ・オプティコムのeo光のシェアがもともと高く、そのeo光ユーザをKDDIのシェア向上にうまく利用できた結果、関西での局地戦に勝利していると思われる。

 NTTドコモは、NTT法による規制も多く、他社と同じ手を打てない、あるいはインフラを自前で持てないという弱さがあり、そこを突かれると別の施策で局地戦を戦う必要があり、モバイル通信業界の巨人は、他社とは異なるアプローチで局地戦も戦わなければいけない。そこで、業界最大の商戦期となる春の激しいシェア争いの中で、最もキーとなる関西エリアでの販売戦略について、NTTドコモ関西支社を訪問取材したので、本特集後編にて、その取材結果をリポートする。

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