ポストPCの中心に――iPad Airに「タブレットの理想」を見た(2/3 ページ)

» 2013年10月30日 10時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

予想外に使いやすかった「iPad Airのカーナビ化」

 故スティーブ・ジョブズが喝破したとおり、“アプリやネットの使い勝手”“ポストPCの洗練されたコンピューター”として考えれば、タブレット端末の理想的なディスプレイサイズは9.7インチだと思う。このくらいの画面サイズの方が見やすいし、マルチタッチで操作をするにも向いている。しかし、持ち運びしやすいモバイルタブレットとして考えると、事情はやや複雑になる。よりコンパクトで軽い7〜8インチクラスの強みが出てくるのだ。だからAppleはiPad miniで、ラインアップの裾野を広げたのである。

 しかし今回、iPadがiPad Airになったことで、9.7インチでも無理せず外に持ち出せるようになった。だから今回のテストにおいて、筆者も積極的にiPad Airを外出先で使ってみた。

 モバイル環境でiPad Airを使うと、やはり“画面が大きいことは使いやすい”と痛感した。解像度自体はiPad AirとiPad mini Retinaで変わらないので、アプリやネットの見え方そのものは一緒だ。しかし操作をすることになれば、画面が大きい分、iPad Airの方が便利に感じることも多い。

 例えば、カーナビゲーション。日本ではAppleやGoogleが用意する無料のナビゲーション機能だけでなく、ナビタイムジャパンなどが高機能で日本市場に最適化したカーナビアプリを用意している。これらは一般的な据え付け型カーナビよりも渋滞情報やリアルタイムコンテンツが豊富で、地図も最新のものが常に使えるため、タブレット端末とカーナビアプリを使った方が、通信非対応のカーナビ専用機を買うよりも、安くて高性能なカーナビ環境が構築できる。

photo iPad Airなどタブレット端末はスマートフォンよりもサイズが大きいため、クルマへの装着には必ずサイズのあった車載クレードルを選ぼう

 この“カーナビとして使う”のに、iPad Airは予想外に適していた。当初はiPad miniに比べて大きいことが不安だったのだが、ディスプレイサイズが大きい分、目的地設定をはじめ各種操作がしやすく、運転中の地図や交差点案内も見やすい。今回はナビタイムジャパンのナビアプリ「カーナビタイム for Smartphone」とiPad Airを組み合わせて実走テストをしたのだが、都市部での日常利用から休日の郊外ドライブまで、一般的なカーナビ専用機よりもはるかに快適で使いやすかった。

 また今回、テストしたのがau版のiPad Airだったこともあり、郊外や山間部でも800MHz帯の効果でLTEが入りやすく、目的地検索や周辺施設検索もサクサクと快適だった。“iPadをカーナビとして使う”ためだけに、GPS機能のないWi-Fi版ではなく、LTE版を積極的に選ぶ価値があるだろう。クルマを持っているならば、ぜひ試してもらいたい使い方だ。

 なお、クルマのダッシュボードの形状によっては、9.7インチのiPad Airに対応した車載クレードルが取り付けにくいケースは考えられる。そういったときに無理に取り付けを行うと、走行中にiPad Airが落下したり、もしもの事故の際にエアバッグの展開に干渉するなどして危険だ。iPad Airのサイズでは取り付けが難しい車種ならば、iPad mini Retinaの方を検討するといいだろう。

photophoto iPad Airは画面サイズが大きいので、カーナビとして使うととてもナビ画面が見やすい。また、タッチパネルの操作時もボタン類が大きくなるため、左手操作でも押し間違いが減って使いやすくなる
photophoto 今回使用したナビタイムジャパンの「カーナビタイム for Smartphone」。標準的なナビ機能のほか、オンデマンドVICSやプローブ渋滞情報、駐車場満空情報など豊富なリアルタイムコンテンツに対応。Retinaディスプレイ対応のユニバーサルアプリなので、iPad AirやiPad mini Retinaで使うには最適なカーナビアプリになっている(写真=左)。カーナビタイム for SmartphoneはRetinaディスプレイ対応のユニバーサルアプリなので、iPad Airと組み合わせると、その見やすさは圧巻のひとこと。一般的なカーナビを超えるクオリティになる(写真=右)
photo 取材・車両協力 BMW Japan
撮影車種 BMW Z4

iPad Airを写真やビデオのメディアハブに

 そして、もうひとつ。外出先で筆者が便利だと感じたのが、撮影した写真やビデオをiPad Airに取り込んでまとめて保存し、その場で編集加工したり、ソーシャルメディアに投稿したりするといった使い方だ。むろん、iPad Airには5メガピクセルのメインカメラと1.2メガピクセルのインカメラがあり、これでも必要十分な写真は撮れる。しかし、デジタル一眼やiPhoneなど、ほかのカメラと連携させた方が、より便利でiPad Airらしい写真・ビデオの楽しみ方ができる。

 その中でも特に筆者が便利だと感じたのが、iPhone 5やiPhone 5s/5cとの連携だ。周知のとおり、iPhoneでは5のころから800万画素・裏面照射型センサーが使われており、iPadよりもカメラ性能が高い。とりわけiPhone 5sではレンズがF2.2と明るくなり、カメラセンサーの受光感度も引き上げられて、とてもきれいな写真やビデオが撮れるようになった。また小型のiPhoneの方が、タブレットのiPad Airよりもカメラとして構えやすいのは言わずもがなである。

 しかもiPhoneとiPadであれば、iOS 7の新機能「Air Drop」を使って、メモリカードやケーブルといった物理デバイスを使うことなく簡単に写真を共有できる。操作方法もiPad Air側のAirDrop機能をオンにしてから、iPhoneの写真フォルダでコピーしたい写真やビデオを選択、シェア機能からAirDropを選ぶだけ。ワイヤレス接続といっても転送速度は速く、写真やビデオを複数選択していても数分以内にコピーできる。

 旅行や街歩き中はiPhoneで写真やビデオを気軽に撮影し、休憩に入ったカフェやレストランでそれらをiPad Airに転送。iPad Airの大きな画面を生かして、妻や彼女と撮影したばかりの写真・ビデオを一緒に見て楽しんだり、iPhotoやPic Collage、iMovieといったアプリでその場で編集・加工したりといったことができるのだ。また、iOS 7ではOSレベルでTwitterやFacebookと連携しているため、写真フォルダからの投稿も簡単にできる。実際に使ってみると、AirDropを介したiPhoneとiPad Airの連携はすこぶる便利で快適である。

photophoto
photophotophoto iPhoneとiPad Airの連携には、iOS 7の新機能「Air Drop」が便利。AirDropをオンにした状態で、iPhone側で共有したい写真やビデオを選んでAirDropでシェアするだけで、ワイヤレスで高速伝送ができる(写真=左)。iPad Airに取り込んだ写真は、すぐに大画面で確認できる(写真=中)。iPhone側のAirDrop操作画面(写真=右)
photophoto iPadに取り込んだ写真は、すぐにFacebookやTwitterで投稿可能だ。写真の選択や文章の入力などは、iPhoneよりも大画面のiPad Airの方がやりやすい。こういった使い分けができるのが、iPhoneとiPad Airをセットで使う魅力である

 また、デジタル一眼といった本格的なカメラとも、iPad Airは相性がいい。オプション品の「Lightning to SD Card Camera Reader」を使えば、それらのカメラで撮影したSDカードをiPad Airで読み込み、保存や加工編集、SNSへの投稿ができる。もちろん、同じことはiPad mini Retinaでもできるのだが、写真やビデオ編集をするのなら、9.7インチのiPad Airの方が操作しやすい。特に今回、A7チップ搭載でiPhotoやiMovieが今まで以上にサクサクと快適に動作するようになったので、デジタル一眼で本格的に写真を楽しんでいる人ならば、外出先での編集・加工用にiPad Airを持ち歩くといいだろう。

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