インタビュー
» 2014年04月08日 12時23分 UPDATE

スマホアプリの最前線:「全てのつながりを1つにする“人のポータル”アプリを目指す」――プロフィール情報交換アプリ「iam」が作る世界

フォッグが提供する「iam」は、あらゆる“連絡先”を一括で交換できるスマホアプリ。同社の関根佑介社長にiamが目指す世界について話を聞いた。

[村上万純,ITmedia]

 「メールアドレスの変更を知り合い全員に教えるのが面倒」「Facebookの友達に電話しようとしても、番号が分からない」「友達と上司で見せたいTwitterアカウントが異なる」などの問題に、誰もが1度は直面したことがあるのではないだろうか。これらはいずれも、私たちの「連絡先」に関する問題だ。いまや複数のメールアドレスやSNSのアカウントを持つことが当たり前になり、人間関係も複雑化してきた。SNSごとに違う人間関係が広がっている人も少なくないだろう。

 そんな総SNS時代の問題を解決すべく登場したのが、フォッグの「iam」というアプリだ。メールアドレスや電話番号、SNSのアカウントなどを登録すると、アプリのユーザー同士でその連絡先を一括交換できる。また、人によって渡したい情報を変えることができるほか、変更した情報は自動で更新される。メールアドレスを変更すると、その情報を開示している相手のデータが自動的に更新される仕組みだ。なぜ今プロフィール情報交換アプリなのか。同社の関根佑介社長に話を聞いた。

photo フォッグの関根佑介社長

1つのサービスに依存した人間関係はあり得ない

photo 「毎日のように大学生に会っているので、気持ちも若くなってきます」と話す関根氏

 関根氏が具体的に企画を考え始めたのは、独立を考えていた2年前。どのようなきっかけから、iamのサービスが出来上がっていったのだろうか。

 「かつてmixiを使っていて友達がたくさんいたんですけど、その友達がみんなTwitterやFacebookに移行していったんです。そこで何が起きたかというと、その内の約8割ぐらいは音信不通になったんです。そのとき、人とのつながりを引き継げないのはあり得ないなと思ったのがきっかけです」(関根氏)。例えばLINEだけでつながっている友達は、何かのアクシデントで連絡先が消えてしまった際、直接その人と会うか、IDを覚えていなければそこでの人間関係が途絶えてしまう。SNS上の人間関係というのは、意外ともろいのかもしれない。

 「1つのサービスに依存した人間関係はあり得ない。つながりは常に維持できるべき」と語る関根氏。だが一方で、いつまでも同じ人間関係に縛られることに窮屈さを感じるユーザーがいるのも事実。その問題についてはどう考えているのだろうか。

photo 相手によって見せる情報をカスタマイズできる

 「つながりを維持する一方で、それは切りたいと思ったときに切れるべきでもあります」と関根氏は説明する。iamは複数のプロフィールを作り、人によって見せたい情報を変えることができるのが特徴で、その使い分けを駆使することでSNSが持つ人間関係の煩わしさを解消できる。

 また、プロフィール情報交換というあまり前例のないサービスのため、「Eight」のような名刺管理アプリと比較されることも多いという。しかし「名刺アプリは競合するものでなく、むしろ補完しあえるもの」で、「クラウド化された名刺情報をiamに紐付けられればさらに便利になるはず」と関根氏は併用を進めている。

 「名刺という概念ではなく、iamは連絡先の塊であり、プロフィール情報ですね。もっと人に近づいたサービスになっています」(関根氏)。

「大学生目線」のサービスにするため、徹底的にヒアリング

photo 性別にかかわらず人気のある「ターコイズブルー」をはじめ、多くの人に受け入れられやすい色を選別したという

 名刺アプリというと、主にビジネスマンが使う印象があるが、iamはあくまで“連絡帳”としてのプロフィール情報交換アプリ。メインターゲットは「名刺文化がなく、複数のSNSを利用している」(関根氏)大学生だ。

 「企画の段階から、ひたすら大学生に話を聞いた」という関根氏。情報の見せ方、レイアウト、文言、色など、細部にいたるまで徹底的に「大学生目線」で開発した。「我々が想像している大学生は絶対に現実と違うので、とにかく多くの人に話を聞くことを大切にしました」と関根氏は振り返る。

 iamを作る上で参考にしたのが、2004年に登場し、女子中高生の間で流行した「前略プロフィール」という自己紹介ページ作成サービスだ。それもあってか、性別によってアプリの使い方に違いがあるという。

 「一般的な傾向として、女性の使い方は“足し算”で男性は“引き算”です。どういう意味かと言うと、女性は写真やプロフィールで自分をいかにアピールするかに注力し、更新もマメです。男性は真逆で、いかにシンプルに伝えるべき情報を掲載するかを意識しています。女性のプロフィールの方が見ていて楽しく、人間味にあふれていますね」(関根氏)。このように、性別によってアプリの使い方に特徴があるが、大学生へのプロモーション方法もビジネスマンとは異なる特徴があるという。

大学生にとって一番強烈なメディアは「友達のツイート」

 大学生に訴求する上で一番効果があるのは、「直接大学生に触れ合うリアルなプロモーション」だと関根氏は話す。これまで同社は、いくつもの大学イベントに協賛してきたほか、学生団体の代表や読者モデルなど影響力のある存在とのつながりを強化してきた。

 iamはお互いがアプリをインストールしていないとその情報は交換できない。特に大学生は「クチコミの影響が大きい」ので、地道に大学に出向いてアプリの説明を行い、友達同士で使ってもらうという活動を続けている。

 また、毎日のように大学生と触れ合う中で「彼らはあまり積極的にニュースを見ない」ということに気付いたという。スマートフォン向けのニュースアプリには「SmartNews」や「Gunosy」などがあるが、いわゆる“普通の”大学生はニュースアプリの存在も知らなければ、社会的なニュースにもあまり関心がないということだ。彼らが見ているのはTwitterで、「有名人よりも、大学生モデルなどの身近でちょっと憧れている人」の影響力が強い。特定のメディアを見る習慣のない彼らに一番効果があるのは「友達のリツイート」。Web広告によるプロモーションが彼らに浸透しづらい理由には、こういった背景もあるようだ。

photo FacebookとTwitterの投稿をまとめ読みできる「Timeline機能」

 大学生はTwitterのほかにもFacebookのアカウントも持っているが、後者の利用頻度は低いという。iamが今回新たに実装した「Timeline機能」は、FacebookとTwitterの投稿をまとめ読みでき、さらには投稿に対して「いいね」や「リツイート」などが行えるというもの。「全てのつながりを1つに」というiamの理念にのっとり、より情報を見やすく整理している。しかし、Facebookについては「大学生にとっては、もっぱら写真共有の場になっています」と関根氏は話す。今後は大学生の利用者も多いInstagramなどのSNSにも対応する予定だ。

実は、タレントやコスプレイヤーと相性がいい

 大学生をメインターゲットに据えているiamだが、意外なユーザーたちに好んで使われているという。まずは、アーティストやタレントなど、自身を売り込む必要がある職業の人たちだ。「例えば、タレントさんが映画監督にあいさつに行く際、自分の名刺だけでなくDVDを持っていったりするんですけど、iamならプロフィール情報や動画を全部見られます。芸能界などでの需要はこれからも増えると考えています」と関根氏は話す。

 また、プロフィールに写真を投稿できることから、コスプレイヤーとの相性もいいという。「衣装によって持つ名刺を変えるコスプレイヤーもいるんです。1人で20種類持っていることもあり、それをカメラマンなどと交換する。iamなら名刺は1つでよくて、その下に写真を投稿すればいいですからね」(関根氏)。

ダウンロード数よりも「交換した数」が重要

 iamは今後、どうサービスを展開していくのだろうか。具体的な数値目標としては「5月末までに135万ダウンロードを達成し、30万〜40万人の都内大学生に使ってほしい」と関根氏は話す。また、ダウンロード数よりも「プロフィールの交換数」を重視しており、「まずは3人以上と必ず交換できる環境を作ります」と目標を語った。

 あまり競合するサービスがないことについては、「需要がないのか、世に出すのが早すぎたのかどちらか」と話す関根氏だが、「先行者メリットを生かしてユーザーをどんどん増やしていきたい」と意欲的だ。

 「まずは、日本で確固たる地位を築いていきたいですが、海外の方が相性のいいサービスかなと思います。各国の遠く離れた相手とやり取りするのに向いていますし、海外ではさらに多くのSNSが混在しているからです。海外にも類似のサービスはほとんどないようなので、やるからにはグローバルに展開していきたいです」と海外展開も視野に入れている。

 iamは現時点ではプロフィール情報を集約する「連絡帳」の役割を担っているが、関根氏が目指すのは「全てのつながりを1つにする」世界。それは人と人だけでなく、人とモノ、人と店などあらゆるものとのつながりを指す。関根氏はそれを「ブックマーク」のようなものと考えており、「お気に入りの店の情報は常に知りたいし、頻繁に連絡を取る人の情報もやはり知りたい。その人のお気に入りや大事な情報が整理された“人のポータル”を作りたいんです」と表現する。GoogleがWebのポータルを作ったように、iamは人のポータル作りを目指して進化を続けていく。

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