市場拡大の鍵は「リアル」−MVNO 3社、2016年に向けた戦略開示SIM通

» 2015年11月11日 06時00分 公開
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 モバイルビジネス調査のMMD研究所が主催する勉強会「MVNO 3社に聞く、格安SIMの現状と未来」が10月21日、行われました。MVNO事業を取り扱うNTTコミュニケーションズ、ビッグローブ、ケイ・オプティコムの3社が参加し、MVNOを取り巻く現状や課題について語りました。

MVNO 3社に聞く、格安SIMの現状と未来

この半年でSIMフリーユーザが2倍に

MMD研究所の吉本浩司氏

 まずはじめにMMD研究所の吉本浩司氏が、MVNOのメーンユーザ層の変化を報告。従来はITリテラシーの高い30〜40代の男性が中心で、キャリアSIMのガラケーとMVNO SIMのデータ端末の2台持ちという傾向でしたが、この半年で格安SIMをメーンにしているユーザ数は2倍以上に増加。20代男性と40代女性の比率が上がっており「音声通話付きデータSIM提供の影響があるのではないだろうか」と話しました。

各MVNO事業者の対応は

 状況の変化に対して、各MVNOによる対応などについての議論が行われました。

NTTコミュニケーションズの岡本健太郎氏

 日次コースを中心に低容量プランの充実を図っているNTTコミュニケーションズは、「OCN モバイル ONE」の生みの親であるネットワークサービス部担当部長の岡本健太郎氏が、「ユーザのニーズを見ながら、参入していないプランの提供も考えていきたい」と述べました。

 従来の層だけではなく幅広いユーザに訴えかけるため、MNP手続きにより端末が使えなくなる期間の短縮へ配送時の本人確認やマイナンバーを使っての認証を模索していることなどを明かしました。

ビッグローブの二宮可奈氏

 音声通話で差別化を目指しているビッグローブは、従来サービスを提供している固定ネット回線のユーザ層から、40代女性のほか50〜70代からの問い合わせが多いそう。通話は1時間以内が主というリサーチ結果から、月額650円で2400円相当の1時間分の通話ができるパックを10月から始めています。

 第二営業本部マネージャーの二宮可奈氏によると、格安SIMでも定額制動画配信サービス「Netflix」など映像や音楽を楽しむニーズが顕在化してきたと感じているそう。「小容量を節約するのではなく、大容量でも気にせずお得に使ってもらえるようなアプローチをしている」とのこと。

ケイ・オプティコムの津田和佳氏

 ドコモとau両回線のSIMサービスを扱うケイ・オプティコムは、ユーザの要望への細やかな対応を心がけています。MNPではau回線はネットで30分以内、ドコモは電話で即時受け付け。低容量プランの新設や国産端末のみの取り扱いなどを行っています。

 モバイル事業戦略グループのグループマネージャー、津田和佳氏によると、現在の契約者数は約13万人。「データのみと音声通話付きデータの割合は半々だが、ドコモのプランを始めて以降はドコモのデータのみを使いたいというユーザが増えてきた」そうです。3社ともユーザ層の中心は30〜40代の男性ですが「ケイ・オプティコムではMMD研究所の調査結果と同様に20代男性と40代女性の動きが大きい」(津田氏)。

揺れ動く2016年MVNO市場

グラフ 格安スマホの認知度

 MVNO市場の拡大については、3社とも「ネットでの販売だけではなく、リアルでの訴求が必要」で一致。認知を広げるためにユーザに直接知ってもらう大切さを挙げました。ビッグローブとケイ・オプティコムはともに若年層取り込みに言及し、NTTコミュニケーションズは企業連携や状況によっては専門店設立の検討もすると話しました。

グラフ メインで利用中の格安SIMを挿しているスマートフォン

 対応が割れたのは、提供端末。格安SIMユーザが使用している端末は、ZenFone、Xperia、iPhoneで大半を占めます。NTTコミュニケーションズは「ユーザニーズをとらえてセット販売するのは厳しいので、他社連携でいく」(岡本氏)と、端末を自社調達はしない方針。ビッグローブは「いかにリーズナブルかと判断してもらうことを重視」(二宮氏)と、手ごろなものを早く提供できるかで考えるとのこと。ケイ・オプティコムは「一番旬なものを扱えるようにする」(津田氏)そうです。

 安倍晋三首相の携帯料金への提言やソフトバンクによるMVNO推進のための子会社設立などの新規参入と、業界が揺れ動く中、2016年に向けた取り組みも明かされました。

 岡本氏は「いろいろな企業に提携の話はしているけど、新規参入は鈍化しそうな感触。参入のハードルも上がっていると感じている。MVNOはユーザにあわせて、いろいろなサービスを提供していかないといけない」と話しました。二宮氏は「MVNOユーザの増加の流れを止めたくないので新規参入は歓迎。ビッグローブとしては、キャリアと比較検討した際にお客様が何を重視しているか。そこをみて新規顧客を獲得していきたい」と述べ、津田氏は「MVNOは安い代わりに、例えば災害時は一番先にシャットダウンするのではないかなどと思われてしまっている。首相には『格安スマホいいね』などと言ってもらえるとありがたい」と、認知度向上へ向けて業界外部からの協力も求めました。

(文:空色ぐらたん)

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