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» 2016年12月02日 06時00分 UPDATE

ITライフch:ついに対応機種が出荷終了 「iモード」の功績を振り返る

NTTドコモは「iモード」に対応した携帯電話の出荷を、11〜12月を目途に終了することを発表した。若い世代には、iモード対応の携帯電話に触れることなく育った人も増えています。そこで今回は、そもそもiモードとは一体何なのか、何がすごかったのか、改めて振り返ってみます。

[ITライフch]
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iモード ロゴ

 11月2日、NTTドコモは「iモード」に対応した携帯電話の出荷を、11〜12月を目途に終了することを発表しました。iモード自体は今後も継続して提供され、iモード対応の「らくらくホン」も出荷されるようですが、一般ユーザー向けのiモード対応携帯電話は、在庫限りで販売を終了するとのことです。日本の携帯電話を大きく変えたと言われるiモードだけに、iモード対応の携帯電話が市場から姿を消してしまうことに、さびしさを感じる人も多いのではないでしょうか。

 一方で、スマートフォンが普及しはじめてから既に7、8年近く経過しており、若い世代には、iモード対応の携帯電話に触れることなく育った人も増えています。それゆえ、そもそもiモードとは一体何なのか、何がすごかったのかがわからない、という人も少なくないかもしれません。そこで今回は、iモードが携帯電話の世界に一体何をもたらしたのか、改めて振り返ってみます。

一般ユーザー向けのiモード対応携帯電話は、在庫限りで販売を終了

iモードが登場した当時のインターネット環境

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 iモードは、1999年に登場したNTTドコモの携帯電話向けインターネット接続サービスです。iモードに対応した携帯電話を使うことで、携帯電話からEメールのやり取りができたり、専用のWebブラウザで、携帯電話向けに作られたWebサイトを閲覧したりすることが可能になります。しかし、これだけを聞いても現在のスマホにくらべて、特別にすごい点は見当たらないように見えます。

 けれども、1999年頃の携帯電話とモバイル通信環境がどのようなものだったのかを考えれば、iモードの何がすごかったのかが見えてきます。当時の携帯電話の通信方式は現在主流の「4G」より2つ前の世代となる「2G」が主流で、通信速度は9.6Kbps程度にすぎませんでした。最新のNTTドコモのスマホは、理論値で約5万倍となる、下り最大500Mbpsもの通信速度を実現していますので、いかに当時のモバイル通信環境が貧弱だったかがわかります。

 また、音声通話が主体だったこの頃の携帯電話はモノクロディスプレイが当たり前ですし、タッチパネル対応の携帯電話は一般的ではなく、ディスプレイサイズも非常に小さいものでした。それゆえ当時の携帯電話は、あくまで音声通話とSMSをやり取りするものに過ぎず、インターネットを利用するにはパソコンと固定回線が必須というのが常識だったのです。

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「絵文字」が代表 わかりやすいインターネットとしてのiモード

そうした環境にありながら、iモードは携帯電話のボタン操作で使いやすいインターフェースを実現し、通信速度が遅くても利用しやすいコンテンツをそろえ、いつでもどこでもインターネットが利用できる環境を提供したことで、たちまち大きな注目を集めたのです。iPhone以前に大きな成功を収めたモバイルインターネットサービスはほぼ存在しなかったことから、世界的に見ても、iモードがモバイルインターネットを大きく広める立役者となったことに間違いないといえるでしょう。

 しかし、iモードは、単に携帯電話でインターネットが利用できるというインパクトだけで人気になったわけではありません。iモードのより大きな功績は、インターネットをより多くの人に、よりわかりやすい形で提供したことです。

 その代表例の1つが「絵文字」です。絵文字の概念は、携帯電話以前に普及していた「ポケットベル」の時代から存在していましたが、数はそれほど多くなく、どちらかといえば“おまけ”の印象が強いものでした。しかし、iモードではその絵文字の数を大幅に増やし、表情やハートマークなど、日常的なコミュニケーションで使い勝手のよいものを多くそろえたのです。

絵文字一覧

 当時IT関連の技術者からは、絵文字は技術的に扱いにくい、イレギュラーなものだとして批判される傾向が強かったのですが、絵文字は若い世代を中心に高い人気を博し、Eメールとともにコミュニケーションのあり方に多大な影響を与えました。そして絵文字は、後にグーグルなどの尽力があって正式な“文字”となって海外でも利用されるようになり、2015年には英国のオックスフォード辞典が、その年を象徴するワードに絵文字を選出。さらに今年(2016年)には、iモードの初期の絵文字176種類を、ニューヨーク近代美術館が所蔵すると発表するなど、現在では世界的に大きな影響を与えるまでに至っています。

iモードが有料のデジタルコンテンツ普及に果たした役割

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 そしてもう1つが「公式サイト」と「課金」です。iモードには専用のポータルサイト「iMenu」が用意されていましたが、NTTドコモはMenuから直接アクセスできるWebサイトを、「公式サイト」と呼ばれるNTTドコモの審査を通過したWebサイトのみに限定したのです。また公式サイトには、デジタルコンテンツを購入した際の料金を、毎月の通話・通信料と一緒に請求してくれる、使い勝手のよい課金システム(いわゆる「キャリア課金」)を提供していました。なお、審査を通過していないWebサイトは、URLを入力しないとアクセスできず、「勝手サイト」として位置付けられていました。パソコン向けのWebサイトには公式・非公式といった区別がないことから、やはりパソコンのインターネットに馴染んだITに詳しい人達からは、この仕組みに対する不満や反発が少なからずあったようです。

 また、当時のWebサイトは、SNSも登場前であり、コミュニティサイトの主流が「2ちゃんねる」であったことなどから、現在よりアンダーグラウンドな色が強いものが目立り、安心感に欠ける印象を抱いていた人も少なくありませんでした。それゆえiモードでは、多くの人に安心してWebサービスを利用してもらうため、あえて審査を通過したサイトと、そうでないサイトを明確に分けたのだと考えられます。

 iモード上のコンテンツは、当初銀行やニュースなどのサービスが人気になると見られていました。しかし、若い世代の利用者が多かったこともあり、待ち受け画像や占い、着信メロディなどの娯楽要素が強いコンテンツの人気が急拡大しました。しかも先に触れた通り、iモードの公式サイトには、クレジットカード不要で数百円程度の料金が気軽に支払える課金システムが用意されていたことから、「インターネット上のコンテンツはタダが当たり前」という当時の常識を覆し、有料でデジタルコンテンツを流通させることにも成功したのです。

 これによって急成長したのが、そのコンテンツを販売していたインターネット関連のベンチャー企業です。iモード向けにコンテンツを提供して成長し、上場を果たしたベンチャー企業は数多く、例えば現在は動画投稿サービスの「ニコニコ動画」で知られるドワンゴも、iモード向けのコンテンツビジネスで成功を収めた企業の1つです。

 また、こうしたiモードの公式サイトや課金などの仕組みは、アップルやグーグルが研究し、その後「App Store」や「Google Play」といったスマートフォン向けアプリストアの仕組み作りに生かされたという説もあります。それくらい、iモードが作り上げた仕組みは、大きな影響を与えるものだった訳です。

 他にもiモードがもたらした功績は多く存在し、スマートフォンが急速に普及する2010年頃まで、携帯電話業界にとどまらないさまざまな分野のビジネスやカルチャーなどに影響をもたらしてきたのです。しかし、それだけ大きな存在であったiモードであっても、端末の出荷終了によって終焉を迎えつつある、携帯電話業界の変革スピードがいかに速く、いかにドラスティックであるかを感じずにはいられません。現在はスマートフォンが全盛を極めていますが、そのような時代がいつまで続くかは、実は誰にもわからないのです。

この記事の執筆者

佐野正弘

佐野正弘

エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在は業界動向から、スマートフォン、アプリ、カルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。


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