ソニーモバイルコミュニケーションズのスマートフォン「Xperia XZ」の開発者インタビュー前編では、デザインや機構設計の話を聞いたが、後編ではカメラやいたわり充電について取り上げる。
カメラ機能が大きく進化したのも、Xperia XZのトピックだ。
まずは「レーザーAF」。赤外線を照射して被写体の距離を測ることで、暗いシーンでも素早くピントを合わせられるようになった。カメラ設計担当の板垣秀星氏は「暗いところでは光がなくて距離を測れないので、レーザーAFを使って自ら照射することで、正確に距離を測れます」とメリットを話す。
レーザーが届く距離は1mほどだが、それより遠い場所でも「遠い」という情報が分かるので、コントラストAFと併用することで、AF自体は速くなるという。
暗い場所での画作りも向上したそうだが、単にノイズを減らしたわけではない。「ノイズをつぶしすぎるとディテールが崩れてしまうので、ノイズをあまりにつぶさないように、バランスを取りました」と板垣氏は説明する。
もう1つの新機能が、赤外線を測る「RGBC-IRセンサー」だ。赤外線情報を取得して光源環境を特定するもので、屋外、白熱灯、蛍光灯など異なる光源環境でも自然な色を再現できる。
「これまでの機種では、『明るければ屋外』『暗ければ室内』などの判断はできましたが、例えば『夕方、屋外の緑』を屋内と間違えてしまうことがありました。赤外線情報があれば、夕暮れ(日暮れ)の植物の緑や、屋内の蛍光灯下にある被写体の光源を、正しく推定できます」
「RGBC-IRセンサーは、カメラを起動している間は常に赤外線情報を取り続けています。(屋内から屋外など)環境が変わっても、リアルタイムで情報を取っていて、タイムラグはほぼありません」と板垣氏。ホワイトバランスの設定を変えなければ、マニュアル撮影時でもRGBC-IRセンサーは有効となる。
RGBC-IRセンサーでとらえた赤外線情報によって、「より多くの環境で、正しく光源を特定できるようになった」(板垣氏)という。「難しいのが、窓から光が差し込んでいて、赤外線が含まれている室内です。そのあたりも検証して仕上げています」(板垣氏)
スマートフォンのカメラでは、食事をいかにおいしそうに撮れるかも重要になるが、Xperia XZでは“メシウマ”写真が撮れるよう改善されている。「居酒屋など光源に赤みのあるシーンで、以前はより白くするような作り方でしたが、あまりにもお皿か真っ白になると雰囲気が失われてしまうので、赤みが出るように振りました」と板垣氏。これはXperia X Performanceと比べても変わっているという。
動画撮影時の手ブレ補正は、従来の3軸から5軸に進化。左右に傾く「ヨー」と上下に傾く「ピッチ」の「角度ブレ」、左右に回転する「回転ブレ」に加え、XY軸(上下左右)に並進する「シフトブレ」も補正できるようになった。シフトブレは画面に対して水平に動くため、近いものを撮るときにブレにくくなる。
「3軸では歩いているとき、遠くのものをズームするときの手ブレ補正はかなり強力にカバーしています。5軸でマクロ撮影をカバーすることで、全方位的に動画の手ブレを低減できます」と板垣氏は胸を張る。
これらの手ブレ補正は電子式で行っており、光学式手ブレ補正の対応も期待したいが、「光学式を入れると機構上、レンズが厚くなってしまう」(板垣氏)ため、対応を見送っている。Xperia XZは1/2.3型の大型センサーと、2300万画素という高解像度カメラのメリットを生かして、電子式でも大きく手ブレを抑えられる、という考えだ。
なお、静止画では手ブレ補正機能は採用していない。これについては「高感度にしてもノイズを抑える画作りを心掛けています。それでシャッター速度を上げられるので、結果的に手ブレは少なくなります」(板垣氏)とのこと。
動画撮影については、Xperia X Performanceでは見送られた4K撮影が復活した。「より『4K』のフォーマットが一般化されてきたことと、日常の何気ないシーンでも高画質で残したいというニーズが出た」(川原崎氏)ため、採用した。
一方、これまでの4K動画対応のXperiaでは、撮影中に発熱して強制終了してしまうことがあったが、この点は改良し、「より長時間とれるようなチューニングを行っている」(川原崎氏)とのこと。
※カメラ機能については、荻窪圭氏のレビューも参考にしてほしい。
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