一般層にも広がり約70万契約 好調「mineo」を支える“コミュニティー”MVNOに聞く(2/4 ページ)

» 2017年07月12日 15時27分 公開
[石野純也ITmedia]

覚悟を持ってマイネ王を運営している

―― 一般ユーザーの中にも、プロ顔負けな知識を持っている人がいる一方で、微妙に間違った回答をつけてしまうこともあるのではないかと思います。そのような場合は、どうされているのでしょうか。

上田氏 Q&Aの中身は、事務局が全部見ています。事務局がいの一番に答えることはありませんが、やりとりはきちんとチェックしています。こういう風にしたら解決できましたという解決策がちょっと違うというときは、あとで事務局がコメントを入れるよう、心掛けています。逆に、いい回答があったとしたら、公式のFAQにフィードバックしたり、コールセンターのマニュアルにフィードバックしたりもしています。そういった相乗効果というか、助け合って1つのサポートを作る流れを作っています。

―― なるほど。そういったノウハウは、どのように身に付けていったのでしょうか。ケイ・オプティコムは通信専門の会社なので、コミュニティー運営の経験が豊富にあったわけではないと思いますが。

上田氏 運営していく中で、いろいろと学んだことはあります。もちろん、他社でうまくいっているコミュニティーの事例も、積極的に調べるようにしました。コミュニティーを実際に運営されている会社にヒアリングしに行ったこともあります。例えば、ユーザーさんの声をどうサービスに反映させるかだったり、場が荒れてしまったときにどう対処するのかだったり、コミュニティーにどれだけ社員が積極的に関わっているのかだったりの事例は、広く参考にしています。MVNOでここまでやっているのはわれわれしかいないので、他業界であっても、コミュニティーを運営している事例は幅広く集めるようにしています。

―― (某社のサイトを開きながら)マイネ王のようなコミュニティーサイトをマネするMVNOもありますが、うまくいっているという声をあまり聞きません。決定的な違いは、どこにあるのでしょうか。

上田氏 形だけマネることはできますが、気持ちを入れて、腰を据えてやる気概がないとダメだと思います。気軽に始められるものではないですからね。われわれはそれなりの覚悟を持って、ユーザーさんに真摯(しんし)に向き合ってコミュニティーを運営しています。投稿も社員で全て見るようにしています。

 コミュニティーはやはり生き物です。作ったときもそうですし、ユーザー層もどんどん変わっていきます。そういう意味では、1回作って終わりではなく、機能の増強もしなければいけないですし、ユーザー層の変化に合わせ、われわれも進化しなければいけないと思っています。

「フリータンク」は事業者目線では絶対に生まれなかった

―― コミュニティー発のサービスも出ていますが、代表例を教えてください。

上田氏 典型的なのが、「フリータンク」ですね。事業者目線だけだと、余ったパケットをためるところを作るという発想は、絶対に出てきません。われわれにとっては1円のもうけにもならないので(笑)。フリータンクについては、ユーザーさんがそういうものがあったらいいと言い出したもので、それも1つや2つではなく、たくさんありました。そこで目先の利益ではなく、フリータンクがあるmineoだからこそ入りたくなるのではないかという大きな視点で考え、導入を決定した経緯があります。

 確かに社内にも、「あって得になるのか」という意見はありましたが、会社全体で、お客さま起点で考えることを徹底しています。ユーザーさんがこういうふうに言っているということは、社内資料でもよく出てきますし、ニーズがあるということを証明する材料にも使っています。

mineo パケットを入れたり、引き出したりできる「フリータンク」

―― とはいえ、極端な話、無料になればうれしい人もいるわけで、むちゃな要求もあるのではないでしょうか。選別はどうされているのでしょうか。

上田氏 そうですね(笑)。そこは玉石混交で、さまざまなお声があります。全部見てはいますが、その中で本質的な声は何なのか。見方を変えると全ユーザーのためになったり、全ユーザーがうれしかったりすることは、サービスとして反映させるようにしています。

―― 実現した機能やサービスは、いくつぐらいになりましたか。

上田氏 大きなものから小さなものまでありますが、全部で100件以上になります。1400〜15000ぐらい声があり、アイデアファームにはユーザーさんが毎週投稿されています。週1回、新たに投稿されたものは全て目を通し、継続して検討するものや、実現に向けて動くもの、今後にストックしておくものを振り分けています。実現に向けて動くものは、システム開発の案件に落とし込み、サービス化を進めています。これを、グルグル回している状況ですね。

―― 今現在検討されているものの中で、有力なサービスは何かありますか。

上田氏 大きいものが今すぐ出ることはありませんが、「パケットを有効活用できるのはmineoである」というところは目指したいですね。パケットギフトもそうですし、家族を含めて分け合えるシェアもそうですし、ありがとうの意味で贈るチップもそうですし、フリータンクもそうですが、パケットを単なるデータの量として見るだけでなく、いかにうまく使い、それ以上の付加価値をつけていけるか。それを一番ちゃんとやっているのが、mineoにならないかということは、今考えています。

―― ある意味、パケットが仮想通貨というか、お礼の粗品のような意味を込めるということですね。ちなみに、マイネ王の加入率が高いことに驚いた記憶があります。現状はいかがでしょうか。

上田氏 会員数は23万人で、単純に回線数で割ると3割ぐらいの加入率ですが、1人で複数回線持っている方もいます。直近では、4割ぐらいの方が加盟していて、割合は上がってきています。

―― どういう目的で入られるのでしょうか。やはり実利のある、フリータンクを使いたいという用途が多いのでしょうか。

上田氏 フリータンクを使うために入る人もいますし、純粋にコミュニティーのやりとりが楽しいから入るという方もいます。きっかけが何であれば、コミュニティーに入っていただき、価値観を知っていただければ、長くmineoを使っていただく。そういう流れができるといいですね。

―― 2017年に入り、フリータンクが枯渇しそうになったこともありました。ユーザー層が変化するにつれ、コミュニティーの趣旨が変わってくる可能性もあるのではないでしょうか。

上田氏 確かに、1月にフリータンクの残量が1.4TBぐらいまで下がり、そのときにルールを変更しました。今は60数TBぐらいまで、V字回復しています。フリータンクは、本来困ったときに助け合うという趣旨で始めたものですが、どこかのタイミングで、無料で1GBもらえるという解釈に代わってしまったのかもしれません。まだたくさんある方が、取りあえずもらっておこうと1GB引き出すことが増えたので、本当に困っているときしか引き出せないようにしました(累計で引き出した量が入れた量より多い場合、データの残容量が1000MB以下でないと引き出せない)。結果として、そういう趣旨だと再認識もしていただけたかなと思います。

 ただ、フリータンクがたまりすぎるのもどうかという思いは、一部あります。これは、先ほどお話した、パケットをいかに(有効に)使うのかというところにつながります。

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