政策やiPhoneの影響で変わったケータイの形 今こそ「au Design project」や「iida」が必要と思う理由石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2017年07月22日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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au Design projectやiidaは役割を終えてしまったのか?

 一方で、スマートフォンの登場によって、キャリアと端末メーカーのビジネス構造も大きく変わってしまった。フィーチャーフォン時代は、キャリアが端末のラインアップを企画し、メーカーがその仕様に基づいて開発するというスタイルが一般的だった。au Design projectやiidaのようなモノ作りは、その構造を一歩推し進めたものと捉えることもできそうだ。

 これに対し、スマートフォンは、iPhoneが代表的だが、メーカーが自身のブランドで端末を開発し、キャリアがそれを調達する。もちろん、おサイフケータイやネットワークへの対応など、キャリアからの要求仕様は満たす必要はあるが、Xperia、Galaxy、AUQOSなどは、どれもメーカーのブランドとなる。また、こうしたメーカーの端末は、一部を除き、グローバルに展開され、コスト構造も変化した。キャリアが企画やデザインまで手掛け、ゼロから作り起こすau Design projectやiidaのような手法とは、逆を向いている。

 そのせいもあってか、スマートフォンがauのラインアップの中心になってからは、iidaブランドの端末が目に見えて減っている。しかも、Fx0を除けば、Androidは全てINFOBARだ。砂原氏は、複数のラインアップを検討していたというが、「バカバカと出せないようになり、絞り込む中でINFOBARになった。サイクルとしても、複数出すような状況ではなくなった」になったという。

 現在、iidaは「止めたつもりはないが、いったん初心に帰って、本来何が必要なのかを考えている」(砂原氏)といい、新端末の具体的な計画は進んでいない。展示会に合わせ、「デジタルデトックス」をコンセプトに考えられた、通話に特化したSHINKTAIが披露されていたが、本流であるスマートフォンについては白紙に近い状態だという。

au Design project
au Design project 「SNS疲れ」「ネット疲れ」に対する1つの解としてのコンセプトが、「SHINKTAI」

 では、au Design projectやiidaのような端末が役割を終えたかというと、必ずしもそうではないというのが筆者の見解だ。むしろ、スマートフォンが成熟化し、機能面での進化が一段落した今だからこそ、必要十分な機能を満たしながら、毎日持ち歩くのが楽しくなるようなデザインの端末は出しやすい環境になっている。

 例えば、au初のAndroid端末として発売された「IS01」を現在のスペック、機能でリファインすれば、小型PCのような存在として一定のニーズは満たせるかもしれない。INFOBAR A01も、デザインは今でも古臭さを感じさせないし、INFOBAR C01はAndroidをベースにしたLTE対応ケータイにすれば、フィーチャーフォンを維持したいユーザーに受け入れられそうだ。

 時代が早すぎたコンセプトも、技術が進歩した今こそ、再検討する価値がある。展示会では、お蔵入りになったコンセプトとして、キーボードを搭載した「SUPER INFOBAR」や、マーク・ニューソン氏がデザインした「talby 2」、G9、G11のコンセプトを受け継ぐ「G13」が初披露された。

au Design project 実はINFOBAR A01の前に企画が進んでいたSUPER INFOBAR
au Design project マーク・ニューソン氏が手掛けたスマートフォンのtalby 2
au Design project G9、G11の後継機として検討されていたG13

 例えば、SUPER INFOBARは、縦長すぎるアスペクト比がAndroidの規定に合わず、製品化を断念したというが、2:1やそれに近いディスプレイを搭載した端末は、サムスンの「Galaxy S8/S8+」や、LGエレクトロニクスの「G6」があり、2017年以降の技術的なトレンドになりつつある。デザイナーがアップルに関わっているため、製品化は難しいかもしれないが、talby 2も今の金属加工技術を用いれば、よりコンセプトに近い形で作れる可能性はある。これは、G13も同様だ。

 くしくも、KDDIは7月から分離プランである「auピタットプラン」「auフラットプラン」を導入した。「アップグレードプログラムEX」はあるものの、のプランを選ぶと、端末は毎月割なしの“定価”で買わなければならない。ユーザーが、コストパフォーマンスにシビアになる環境に変わりつつあるというわけだ。モバイルビジネス研究会の結果、misoraが生まれたように、分離プラン時代に即したiida端末があってもいいのではないか――ケータイの形態学 展を取材し、あらためて今のauにはau Design projectやiidaの端末が必要だと感じた。

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