定期契約の“自動更新”が競争を阻害? 大手キャリアの考えは?

» 2018年01月30日 19時45分 公開
[井上翔ITmedia]

 2017年12月に始まった、総務省の「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」。検討会では現在、さまざまな関係者から意見聴取を行っている。

 この検討会において、大手キャリア(MNO)による「定期契約プランの自動更新」がユーザーの選択肢を狭めているという指摘が一部のMVNOから出ている。

 MNOの料金プランは、1〜3年の契約期間を設ける代わりに月額料金を値引く「定期契約プラン」が一般的。このプランでは、契約期間の満了後に2カ月の「契約更新期間」があり、それが過ぎると定期契約が自動的に更新される。この自動更新こそが、MNOからMVNO(あるいはMNOからMNO)への乗り換えの妨げになっているというのだ。

楽天の資料 楽天は定期契約プランの自動更新に加えて契約解除料もユーザーの選択を阻害していると主張した(総務省公開資料より)
ケイ・オプティコムの資料 ケイ・オプティコムも楽天と同様の主張をしている(総務省公開資料)より

 1月30日、総務省で検討会の第4回会合が開催された。この会合では、MNO(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)が定期契約プランの自動更新について考えを述べる場面があった。

開始直前の様子 第4回会合の開始直前の様子。第3回同様、傍聴席はほぼ満席となった。
NTTドコモの出席者 NTTドコモからの出席者。主な説明は大松澤清博取締役(中央)が行った
KDDIの出席者 KDDIからの出席者。主な説明は古賀靖広理事(左)が行った
ソフトバンクの出席者 ソフトバンクからの出席者。主な説明は松井敏彦渉外本部長(右)が行った

総論:「契約更新期間」「告知の徹底」で十分

 今回ヒアリングに応じた3社は、定期契約を自動更新としている理由として以下の2点を挙げた。

  • ユーザーの手続きの手間を省く
  • 手動更新とすることによる料金の「値上げ」リスクを回避する

 簡単にいえば、「ユーザーの手続き忘れによって割高な料金で使い続けることを防ぐために自動更新としている」ということだ。

 「自動更新でユーザーの選択肢を狭めている」という旨の一部MVNOからの指摘については、3社とも以下の理由から不適当であるという見解を示した。

  • 契約更新期間を「2カ月」に延長した
  • 契約更新期間前にSMS(ショートメッセージ)や手紙でユーザーに告知している

 要するに、「更新期間前に十分な告知はしているし、乗り換え(あるいは定期契約なしのプランへの変更)を検討する時間は十分に確保しているため、乗り換えやプラン変更を阻害している認識はない」ということだ。

ドコモのスライド NTTドコモによる、定期契約プランを自動更新としている理由の説明。この点については他社もおおむね同様の説明を行っている(総務省公開資料より)
ソフトバンクのスライド ソフトバンクについては、スライドで自動更新によるユーザーの不利益回避についてもう少し詳しく説明している(総務省公開資料より)

定期契約なしプランの料金:企業戦略による?

 初回の定期契約が満了した後、各キャリアではいつでも解約(乗り換え)可能でかつ通常の「定期契約なしプラン」よりも安価な料金プランを提供している。

 これらのプランを詳細に見てみると、ドコモが「定期契約プランと同額にする代わりに、各種特典を付与しない」のに対し、au(KDDIと沖縄セルラー電話)とソフトバンクが「定期契約プランよりも数百円増し」と、組み立てが異なっている。

 この点について、第2回会合では「契約段階で、2年後のプランまで選ぶことは、消費者にとっては大変に難しい」という消費者団体からの指摘を受けて、KDDIとソフトバンクに対して「ドコモのフリーコースのように『期間拘束なし・料金変わらず』の選択肢をユーザーに与えないのか?」という旨の質問が構成員から出た。

 この質問に対し両社は、料金プランは各社が自社のコスト構造や他社との競争を勘案して作るものであり、その結果が現在のプラン設定につながったと戦略上あえて“割高”としていることを説明。

 ユーザーの予見性に対する懸念については、定期契約期間満了前後の告知である程度対応できているとの認識を示した。

KDDIのスライド KDDIは「新2年契約」の料金設定は携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォースの議論に沿った上で自社をとりまく環境を勘案して作ったものと説明(総務省公開資料より)
ソフトバンクのスライド ソフトバンクは「フリープラン」について、料金設定の背景をより詳細に説明。こちらも基本的な論旨はKDDIと同様だ(総務省公開資料より)

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