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» 2018年04月10日 20時00分 公開

モバイル通信市場の「公正競争」促進には何が必要? 総務省の検討会が論点整理 (1/3)

2017年度内に開催されると思われた「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の第5回会合が、年度をまたいで4月9日に行われた。総務大臣への提言にむけた論点整理が行われたが、その「論点案」は多岐に渡る。

[井上翔,ITmedia]

 総務省は4月9日、「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の第5回を実施した。過去4回実施してきた当事者からの意見聴取(ヒアリング)や構成員の討議を踏まえて、総務省内の事務局が論点を整理。「論点案」として構成員に提示し、意見などを求める形で進行した。

 以下の記事は、第2回〜第4回会合に関連するするものだが、ここに出ているものだけでも、議論の広範さが良く分かると思う。

 あまりに広すぎる議論だったためか、2017年度内(2018年3月まで)に行う予定だった論点整理は、年度をまたいでしまった。携帯電話の販売やサービス提供における“公正競争”を実現すべく出された論点案はどのようなものなのだろうか。

構成員 検討会の構成員。左から神奈川大学の関口博正教授、東京大学の相田仁教授(座長代理)、明治大学の新美育文教授(座長)、野村総合研究所の北俊一パートナー、日本総合研究所の大谷和子法務部長

大きな論点は「5つ」

 この検討会で大きな論点となっているのは、「モバイルネットワークの接続料や接続条件など」「中古端末の国内流通」「利用者の利用期間拘束」「利用者の実態に合ったサービス選択」「端末やサービスの提供条件」の5つ。

 接続料・接続条件に関する論点は、いわゆる「サブブランド」問題を中心に非常に大きな関心を集めている。中古端末の流通については、キャリアが下取りした端末(特にiPhone)が、下取り業者を経由して海外に「流出」しているという指摘がある。そして利用期間拘束については、従来から各キャリアが取り入れている2年間(24カ月間)の定期契約プランに加えて、自動車における「残価設定型ローン」に近い、4年間(48カ月間)の割賦販売を組み合わせた下取り前提の販売方法も「新たな“縛り”」として主にMVNOから是正を求める声が挙がっている。

論点1:接続料や接続条件について

 MNO(通信設備を持つ事業者)のうち、KDDI・沖縄セルラー電話(以下まとめて「au」)とソフトバンクはグループ内にBWA事業者(※1)を保有しており、BWA設備をMVNO(通信設備を保有しない事業者)として借り受けて自社ネットワークの一部に組み込んでいる。また、auは「UQ mobile」を始めとするMVNOサービスを子会社として保有しており、ソフトバンクは子会社と共同で「Y!mobile」という別ブランドを保有し、それぞれ親会社のメインブランドよりも安価な通信サービスを提供している。

 これらの状況を踏まえて、MVNOなどから「BWAネットワークの貸し出し条件に透明性が見られない」「グループ内MVNO・サブブランドが接続条件面で優遇を受けているのではないか」といった懸念が示された。その延長として、MNOグループのBWA事業者の「第二種電気通信設備」指定(※2)も検討すべきではないかという意見も出てきた。

 それに対し、今回の論点案では、MNOやそのグループ企業の通信サービスについて提供条件やグループ内取引について会計専門家を交えた検討体制を設けること、携帯電話回線シェアや事業者間連携などを勘案した上で第二種指定通信設備指定を検討すること、トラフィック(通信)の不当な差別扱いをしないことをMNOの接続約款に明記させることなどを打ち出している。

※1 BWA(Broadband Wireless Access)

 無線を使ったブロードバンド通信。以下の事業者が全国規模でBWAサービスを提供している他、地域を限ってBWAサービスを提供する「地域BWA事業者」も存在する。

  • UQコミュニケーションズ(KDDI子会社):WiMAX、WiMAX 2+
  • Wireless City Planning(ソフトバンクグループ):AXGP


※2 第二種電気通信設備

 移動体通信(携帯電話ネットワーク)設備のうち、他社との接続(貸し出し)を義務付けられたもの。総務省令が定めるシェアを満たす移動体通信事業者が指定される。

 現在、NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話とソフトバンクの4社が指定対象となっている。


資料その1 MNOとグループ企業の関係に関する指摘事項と論点案(総務省資料より)

 一部MVNOが求めている国内通話(準)定額プランの卸提供については、MNOに対して対応可能性を検討するように要請した上で、総務省がその結果をフォローする方向性が示された。同時に、MVNOには協議が不調であるときに電気通信事業法第39条に基づく紛争処理手続きを利用できることも示している。

 MNP移転時に移転元事業者(主にMNO)が「引き留め」を行う問題については、総務省が引き留めに関する実態把握を行い、その適正化を働きかけるように求める案が示された。Web手続きを充実することで引き留めが介在しえないMNP転出を行えるようにすることも打ち出されている。

 とりわけ、WebによるMNP手続きの充実については「早急に取り組むべし」という旨の意見が構成員から出た。

資料その2 国内通話(準)定額の提供や、Webを使ったMNP手続きの充実なども論点案に組み込まれた(総務省資料より)

 MNOが販売する端末やサービスに関する課題点についても一定の方向性が示された。中でもMNOからMVNOへの乗り換えの阻害要因として大きいとされる「キャリアメール」については転送サービスの実現可能性の検討と、MVNOのメールアドレスが「受信拒否」扱いを受けないための基準の提示をMNOに促し、総務省がフォローするように求めている。

資料その3 MNOの端末・サービスにまつわる制約についても提言案をまとめた(総務省資料より)

 その他、ブランド間、あるいはグループ内の過度な販売連携、MNOグループ外MVNOでの「iPhone」の取り扱い、LINEの年齢確認認証に関しても一定の論点案が盛り込まれている。

資料その4 ブランド間・親子内の販売連携などについても提言案が(総務省資料より)
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