リソースを使い尽くせ!――QNAP「TS-639Pro」で変えるネットワークライフ“真・最強NAS”活用術 第1回(3/4 ページ)

» 2009年08月18日 17時20分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

TS-409ProからTS-639Proで強化された点は?

TS-639Proのメニュー画面。ファームウェアのバージョン3.1.0ではカバーフローUIをサポートした

 それではTS-409Proから変更・強化された点について詳しく見ていこう。前述した通り、ハードウェアの面では搭載可能ドライブ数が増加し、CPUおよびメモリの強化によるパフォーマンスの向上と合わせて、よりパワフルなNASサーバに生まれ変わった。また、USB 2.0を5ポート、eSATAを2ポート備えており、拡張性も大幅に増した。NASとのあいだで手軽にデータのコピーを行うにはUSBが向いているが、高速なeSATAは恒常的に外付けHDDドライブを接続してバックアップとして利用することも視野に入ってくる。

 また、1000Base-Tを2ポート搭載しており、これをフェイルオーバー、ロードバランシング、スタンドアロンの3つのモードで運用することができる。フェイルオーバーは普段は1ポートしか使用しないが、障害時には他方のポートに自動的に切り替わる。また、復旧時には自動的に元のポートに戻るようになっている。ロードバランシングはヘルプによると「ネットワークパケットのソースIPと宛先IPのみを制御します」とある。つまり、アクセスする機器ごとにポートを振り分けるため、1台からのみ使用してもその効果はないが、複数機器からの同時利用、ダウンロードステーションなどでは有用だろう。スタンドアロンはそれぞれのポートに個別にIPアドレスを割り振るシンプルなモードだ。2台のTSシリーズを使用してリプリケーションを行う場合、クロスケーブルで直接つないでしまうという使い方もある。

メニュー画面も見通しのいいデザインに一新された

 前面のLCDではIPアドレスやボリューム構成などをはじめとする情報の確認のほか、一通りの設定を行うこともできる。操作ボタンはENTERとSELECTの2つしかなく、決して操作性が良いとは言えないが、ネットワークの設定をスタンドアロンでできるのは導入時には重宝しそうだ。

 ソフトウェアの面ではiSCSIの対応、それにボリュームの暗号化が大きなポイントだ。iSCSIの利用についてはWindowsファイル共有と混同しないように気をつけてほしい。iSCSIはあくまで「SCSIをネットワーク上で実現したもの」という位置づけであり、単一の機器からマウントして使用するものだ。いったんマウントしてしまうとローカルドライブと同様に扱うことができるが、使用するにはマウント後はクライアントPCから所望のファイルシステムでフォーマットする必要がある。

 また、取り回しについてはほかのファイル共有の仕組みとは完全な別ものとして考えた方がよい。つまり、iSCSIの領域をWindowsファイル共有で共有するレプリケーション機能でバックアップするといったことはできない。Windowsで一般的なNTFSでフォーマットした場合、その領域はRAIDの上にLinuxのファイルシステムでフォーマットされ、さらにその上にiSCSIターゲットとしてNTFSファイルシステムが構築されることになる。実際、iSCSI領域はTS-639Pro上では単なる1ファイルとして見える。

iSCSIのFPA設定v3。iSCSIターゲットは8つまで作成できる(画面=左/中央)。実際のiSCSIファイルを表示したところ。それぞれのターゲットに1つずつ、巨大なファイルが作られたように見えるが、ファイルサイズはわずか16Kバイトだ(画面=右)

 iSCSIターゲットにはバーチャルスペースアロケーション(シン・プロビジョニング)を利用することができる。これは作成時には領域を割り当てず、利用される分だけ随時割り当てていくというもの。VirtualPCやVMWareなどの仮想PCソフトで、仮想ディスクファイルが使用容量とともに増大していくのと同じことだ。もちろん、搭載ディスク容量を超えて利用・設定することはできないが、複数のiSCSIターゲットやWindowsファイル共有と兼用して効率の良い運用ができる。例えば、1Tバイトの実容量があった場合、1TバイトのiSCSIターゲットを4つ作って4人で利用する、1TバイトのiSCSIターゲットを作成したボリュームを同時にWindowsファイル共有でも利用する、などが考えられる。TS-639Proでは冗長性のあるRAID構成を採ればデータを保持したままの容量拡張が可能だが、iSCSIターゲットの容量拡張はできない。利用容量を見積もりにくい場合にはあらかじめ大きな容量を割り当てておくといいだろう。

 そのほか、ファームウェアを3.1.0に更新することでファイルシステムにEXT4が選択できるようになる。EXT4はボリュームやファイルの最大サイズ拡大、エクステントの採用など、大容量ストレージに対応した新しいファイルシステムであり、Fedora 11やubuntu9.04などで採用が始まっている。

ファームウェア3.1.0でサポートされる仮想ディスク機能。用語が分かりにくいが、iSCSIのスタックマスターとしてiSCSIターゲットをマウントできるようになる(画面=左)。共有フォルダ設定画面。初期状態から設定されているフォルダは削除できないが、ネットワークドライブの一覧に非表示にすることは可能(画面=中央)。リソースモニター画面。ファームウェア3.1.0はUIが美しくなっただけでなく、情報が分かりやすくなった(画面=右)

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