インタビュー
» 2009年09月15日 11時00分 UPDATE

製品担当者が秘密を語る:iPodはなぜ世界を熱狂させ、新しいライフスタイルを作り出せるのか (1/2)

今年も発表されるやいなや、大きな話題となっているアップルの最新iPodシリーズ。その魅力の本質とは何か、アップルの2人のプロダクト・マネージャーに聞いた。

[林信行,ITmedia]
og_ipodin_001.jpg Appleスペシャルイベントで久しぶりに姿を現したスティーブ・ジョブズ氏

 毎年、秋の恒例となりつつあるAppleスペシャルイベント。今回の発表でiPod shuffleiPod nanoiPod Classic、そしてiPod touchの4種類の製品からなるラインアップの個性はさらに色濃くはっきりとしたものになってきた。

 iPod Classicは大容量音楽ライブラリを持ち歩きたいコアな音楽ファンに応えてさらなる容量アップを図った。iPod shuffleはファッション性と低価格化をさらに一歩押し進めた。iPod touchは「究極のiPod」「新世代のポケットコンピューター」、PSPや任天堂DSをも脅かす「究極のゲーム機」としての魅力を高めた。そして、今回の主役とも言えるiPod nanoは、大好評だった前モデルとまったく同じ薄軽いフォームファクターに、驚くほどたくさんの機能を凝縮している。

og_ipodin_002.jpg One more thingの内容はiPod nanoのビデオ撮影機能だった

 その中でも特に目玉となっているのがビデオカメラの機能だろう。あえて静止画写真の撮影機能をなくしてビデオだけにしている。そこにはアップルが“カジュアルビデオ撮影”とも言える新しいライフスタイルを積極的に広めようとする意図が強く感じられる。

 四半世紀前、アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏は、当時はまだめずらしかったマウスを使ってのパソコン操作を広めるために、あえてキーボードからカーソルキー(矢印キー)を取り去り、初代iPodからも音楽再生以外のすべての機能を取り去って製品化した。その後、アップルはマウス操作が広まるとMacのキーボードにカーソルキーを加え、iPodが音楽プレーヤーの定番になるとカレンダーや住所録をはじめとする多彩な機能を加え、写真、ビデオ再生機能を加えてきた過去がある。

 それ以外でもiPodはデジタル時代の携帯型音楽プレーヤーとしてウォークマンを過去に葬り、iPhoneは日本を携帯先進国の座から引きずりおろしただけでなく、PSPや任天堂DSといった携帯型ゲーム機の座まで脅かし始めている。アップルはiPhone/iPod touch用のゲーム/エンターテイメントタイトルが21178本なのに対して、PSPは607本、ニンテンドーDSは3660本(comScoreの調査)、しかも、タイトルの価格もiPhone/iPod touchのほうが安価であることを強調した。

 一体、アップルはどうやってこれだけのイノベーションを起こしてきたのか。そしてiPod nanoのビデオカメラ機能で、アップルはどんなデジタルライフスタイルを広げようとしているのか。新製品発表にあわせて来日していたiPodのマーケティングを担当するショーン・エリス氏とiTunesを担当するピーター・ロウ氏に話を聞いた。

 彼らはまず、新iPod nanoの工業デザインから語り始めた。

iPod nanoのカメラ位置の秘密は製品フォーカス

og_ipodin_003.jpg ビデオ機能を搭載した新型iPod nano

――Twitterなどをはじめとするインターネットのコミュニティでは、iPod nanoのカメラの位置がなぜ液晶の裏側ではなく、本体下側なのかについての疑問が上っています。

エリス iPod nanoでは、ポートレート(縦長)状態でも、ランドスケープ(横長)状態でも、本体を構えた向きにあわせてビデオ撮影が楽しめます。ただ、おそらくどちらかといえばランドスケープ撮影する人が多いだろうという話になり、その場合にはあのカメラ位置が最適という結論になりました。

――液晶の裏側にカメラがあったほうが直感的なのではないかと言う意見も多いようですが。

エリス 確かにそういうところもあるかもしれません。ただ、このiPod nanoの美しい形をみてください。以前のiPod nanoと同じ薄さわずか6.2ミリのフォームファクターと、一回り大きくなった2.2インチの液晶画面。この2つのデザイン的要素を保ちながら、さらにビデオカメラ機能、内蔵マイク、内蔵スピーカー、FMラジオといった機能を凝縮する必要がありました。

 その過程で、機能追加優先かデザイン優先かといった決断を迫られる場面はいくつかありましたが、そうした議論を重ねて我々がたどりついた結論がこのiPod nanoの形でした。多くのユーザーの方に満足していただけると思っています。

og_ipodin_004.jpg このビデオカメラの位置は、従来のボディが持つ美しいフォルムを損なわないためだという

――iPod nanoは縦に構えても、横に構えても、上下をひっくり返してもちゃんとその向きにあわせて撮影ができるんですよね。確かに指でおおってしまうこともありましたが、慣れればそれほど問題にならない気もします。

エリス その構える向きを感知してくれるのが、iPod nanoに内蔵された加速度センサーです。我々はこのたった1つのセンサーを、ビデオ撮影のときには向きを感知するセンサーとして、音楽再生時にはカバーフロー表示への切り替え操作や「シェイクしてシャッフル」の操作、さらに今回から歩数計とソフトウェアの技術で実に多彩な用途に活用しています。

――この歩数計は素晴らしいですね! iPhoneとiPod nanoを同時に持ち歩きたくさせる重要な機能だと思いますが、この機能はバックグラウンドでも動作するのでしょうか。

エリス ええ、音楽再生などをしながらそのバックグラウンドでちゃんと動作します。歩数情報はNike.comのメンバーであれば、Nike+同様に、Nike.comのWebサイトに送信することもできます。

――さて、今回のビデオカメラ機能の追加ですが、もちろん、みなが疑問に思うのは、「なぜビデオ撮影だけで、写真撮影はないのか?」です。この点については?

エリス 我々はビデオに焦点を絞ることにしました。YouTubeをはじめとするユーザーコンテンツによるビデオ共有サイトは今や世界現象となりつつあります。YouTubeでは1日当たりに10億本のビデオが再生されています。掲載されている映像の多くは、我々のような普通の人が撮っているもので、例えば猫がピアノを演奏していたりといった他愛のないものが多いのですが、それが現代の人々にとっての大きな楽しみとなりつつあるのです。

 そこで我々はこの個人撮影のビデオの楽しみをさらに広げるために、iPod nanoに新機能として取り入れようと決断しました。それにあわせてマイクと、再生時用のスピーカーも内蔵したわけです。

 というわけで、我々はこの世界的現象をもっと広めるために、特にビデオ機能に焦点を絞ることにしたわけです。ちなみに宣伝になりますが、このiPod nano、アメリカでは価格据え置きですが、日本では価格を下げて提供することになっているので、日本のユーザーの方々にはさらに喜んでもらえるんじゃないでしょうか(笑)。

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