ThinkPad T410sでOptimus Technologyを賢く使うこれは頭を使います(2/2 ページ)

» 2010年11月25日 11時30分 公開
[長浜和也(撮影:矢野渉),ITmedia]
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Optimus TechnologyをCore i5-560MとNVS 3100Mの組み合わせで使う

ベンチマークテストの結果
PCMark Vantage Build 1.0.2.0 PCMark 6159
memories 3172
TV and Movies 3854
Gaming 3258
Music 5413
Communications 7544
Productivity 4702
HDD 2871
PCMark 05 Build 1.2.0 CPU 8129
Memory 6177
Graphics 3537
CINEBENCH R10 Rendering(Single) 4201
Rendering(Multiple) 8770
CINEBENCH R11.5 Open GL 8.53
CPU 2.34
CrystaDiskMark3.0 Read-Seq 43.27
read-512K 19.44
Read-4K 0.269
Read-4KQD32 0.497
Write-Seq 42.56
Write-512K 20.9
Write-4K 0.621
Write-4KQD32 0.631

 ThinkPad T410sについては、2010年4月に掲載したレビュー記事で使い勝手とベンチマークテストの結果を紹介しているが、そのときに評価した機材の構成は、内部構成がCalpella世代に一新されていたものの、CPUがCore i5-520M(2.4GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大2.93GHz)だった。今回登場する新モデルはCore i5-560M(2.66GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大3.2GHz)に強化されているので、その分、ベンチマークテストの結果は向上している。

 新モデルで期待されるのは、Optimus Technologyの導入で、搭載した外付けGPUの性能を薄型軽量のThinkPad T410sで利用できるとともに、消費電力を抑えた統合型グラフィックスコアのIntel HD Graphicsへの切り替えが、ユーザーが気が付かないほどにスムーズに行えることだ。この切り替えは、NVIDIAが用意するプロファイルでアプリケーションごとに有効になるグラフィックス機能が指定されている。

 この内容はNVIDIAコントローラの「3D管理設定」で確認できる。プロファイルに登録されていないアプリケーションで有効になるグラフィックス機能をユーザーが設定したり、プロファイルで指定されているのとは別なグラフィックス機能を有効にしたりといったカスタマイズも可能だ。

Optimus Technologyで有効になるグラフィックス機能はNVIDIAが配布するプロファイルで事前に設定されているが、ユーザーもカスタマイズできる(写真=左)。また、起動するアプリケーションのアイコンをサブクリックして表示されるコンテキストメニューからも有効にするグラフィックス機能を選択可能。このあたりの設定方法はOptimus Technologyに対応するPCで共通だ(写真=右)

 有効にするグラフィックス機能は、リストボックスからIntel HD GraphicsかNVS 3100M(NVIDIA高パフォーマンス)を選ぶことで行う。ビジネス利用をメインと想定しているレノボ・ジャパンは、NVS 3100Mを搭載したThinkPad T410sがPCゲームで使われることをあまり重視していない。ただ、コンシューマーユーザーとしては、ゲームでどれだけの性能を発揮するのかも気になるところだ。スペック的にはバリューモデル相当なので、ゲームタイトルを使ったベンチマークテストの結果はそれほど高い値は示していないものの、その値はIntel HD Graphicsを有効にした状態と明らかに違う。

ベンチマークテストの結果 Optimus (NVS3100) Optimus(Intel HD Graphics)
3DMark06 Build 1.0.2 3DMarks 3718 1924
CPU Score 3053 3067
3DMarkVantage Build 1.2 GPU Score 881 259
CPU Score 8160 7987
The Last Remnant 1440×900ドット 19.32 8.24
Street Fighter IV Score 7255 6050
AverageFPS 29.71 14.83

 一方、撮影した動画の編集やフォーマット変換処理は、ビジネスの現場でも需要が増えつつある。NVIDIAもCUDA環境に対応したアプリケーションとして、トランスコード処理に特化した「Badaboom」やCyberLinkの「Media Espresso」などを訴求している。ただ、今回の評価作業において、Media EspressoとBadaboomによる動画変換処理を行ったが、Media Espressoでは、GPUアクセラレーションを有効にしてもCPU負荷率が100%になるなどGPUコンピューティングが有効にならず、Badaboomでは、GPUコンピューティングが有効になっているものの途中で処理が中断してしまう症状が発生した。これは、グラフィックスドライバをレノボがインストールしている“公式”なものから、NVIDIAが配布している最新の公式ドライバ(Ver.260.99 Internarional版)に変更しても変わらなかった。

 NVIDIAにこの状況について確認したところ、搭載するCUDAコアが16基と少ないNVS 3100Mでは、アプリケーションによってGPUコンピューティングが有効にならない場合があるとの回答があった(ただし、NVIDIAの米国本社による検証では、Media EspressoでもGPUによる処理が有効になって、CPUで行った場合より25%の性能改善が確認されたという)。

 NVIDIAは、NVS 3100Mを搭載したThinkPad T410sでは、Internet Exprolere 9などの次世代WebブラウザでサポートされるGPUアクセラレーション機能を利用した場合で、GPUコンピューティングの恩恵を最も受けると説明している。

 なお、途中で処理が中断してしまうもののGPUコンピューティングが有効だったBadaboomにおいては、レノボ・ジャパンがThinkPad T410sに導入した「ThinkVantage 省電力マネージャー」でシステムの消費電力を処理中に表示させたところ、NVS 3100Mが有効になっている状態では27ワットであったのが、Intel HD Graphicsを有効にした状態(そのためトランスコード処理はCPUで行っている)では46ワットと、外付けGPUを利用していると消費電力が低くなる状況だった。

 「性能が必要なときは消費電力が高いが性能も高い外付けGPUを有効にして、バッテリー駆動時間を重視したいときは性能が低いものの消費電力も低い統合型グラフィックスコアを有効にする」というOptiums Technologyの目的に反するように思えるが、これについても、NVIDIAは「マシンの処理と消費電力の状況に応じて、最も適したグラフィックス機能を統合型グラフィックスコアと外付けGPUから選んで自動で切り替えられるわけで、これもOptimus Technologyのメリットといえる」と説明している。

Optumus Technologyの真価は「都合のいいグラフィックス機能を選べる」ことにあり

 Oputimus Technologyに対応したThinkPad T410sでは、有効になる統合型グラフィックスコアと外付けGPUの切り替えが、ユーザーにまったく意識させることなく行われる。その挙動は安定していて不安を覚えない。ただし、統合型グラフィックスコアを有効にすると消費電力が逆に高くなる状況もあって、この場合、システムの処理内容と消費電力の状態をユーザーが把握した上で、有効になるグラフィックス機能をユーザー自身が設定しなおすか切り替える必要がある。

 省電力重視と性能重視の選択ができる、というのがOptimus Technology(それ以前に登場しているHybrid Graphicsの同様だが)の特徴として訴求されているが、ThinkPad T410sのようにバリュークラスの外付けGPUと組み合わせて使うOptimus Technologyでは、この選択を「アプリケーションごとの性能と消費電力の実態」に合わせて柔軟に運用する必要もある。この柔軟な運用ができたとき、Optimus Technologyを導入したThinkPad T410sは本当の力を発揮するだろう。

今回の評価作業で使ったThinkPad T410sの構成。ディスプレイアダプタの項目では、「Intel HD Graphics」と「NVS 3100M」が並んでいる

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