アップル流イノベーションが大きく花開いた2010年(後編)フィル・シラー氏に聞く(1/2 ページ)

» 2010年12月10日 14時00分 公開
[林信行,ITmedia]

アップル、モノづくりの姿勢

→前編

―― 2010年、アップルは時価総額でマイクロソフトを抜き、エクソンモービルに次いで米国2位の企業となりましたが、これによって社内の状況は変わりましたか?

シラー まったく寸分違わない状態です。アップルは製品主導の会社です。我々がやっている仕事は、自分たちで欲しくなるクールな製品を作ること――自分の家族や友だちも気に入ってくれるような素晴らしい製品を作ることです。

 我々の会社をウォールストリートの数字が何といっていようと、そんなことは我々には一切関係ありませんし、よりよい製品を追求し、開発する姿勢には何の変化ももたらしません。我々の“モノづくり”を追求しようという思いを、これまで通り鋭敏に保っています。

初代iPhoneが登場した2007年は、社名もApple ComputerからAppleに変わった。……アップル3年周期説?

―― ところで、最近私は“アップル3年周期説”というのを唱えています。初代iMacを発表した1998年、デジタルライフスタイルとiTunes、iDVDそして直営店展開、さらには初代iPodまで発表された2001年、2004年はスティーブ・ジョブズがすい臓がんの摘出を行っていたこともありややイレギュラーでしたが、2007年には初代iPhoneを発表し、社名から「コンピュータ」を取りました。

 そして今年、2010年は「iPad、iPhone 4、MacBook Air、Apple TV」の年。歴史を振り返ってみると、アップルの飛躍的成長は、3年くらいのサイクルで起きているようなのです。やはり社内でも、この3年くらい、という周期を意識されているのでしょうか。

シラー そんなことはありません(笑)。我々は自分たちが作ることのできる製品、つまり我々が作り方を知っている限りでの最良の製品を毎年出し続けています。その周期は、そもそもの製品が持っている周期にあわせていることもあれば、単純にその時点でどんな技術が現実となっているかによって決まる部分もあります。すべてを適正だと思う時期に商品化しているだけです。

 最近のアップルで自分が好きな点の1つは、製品を本当にいいかたちで世に送り出せるように、自分たちでタイミングを決めていることです。新聞の見出しが欲しいからと、何か発表会などのイベントにタイミングをあわせて無理に製品を仕上げることもしません。

アップル不在で開催された2010年のMacworld Expoは、古くからアップル関連記事を執筆しているNew York Timesの名物記者、デビッド・ポーグ氏によるオープニングだった

―― それは最近、Macworld Expoをはじめとする大型コンベンションに出展しなくなった、ということとも関係があるのでしょうか?

シラー それも一部あります。大型コンベンションはインターネットの普及によって、だんだん不要なものになってきました。ましてや我々にとってみると、もはや直営店のアップルストアという顧客接点を独自に持っています。全世界のアップルストアには、1週間にこうした大型コンベンション数回分の人が訪問し始めていることを考えると、我々にとっては不要になり始めていたのです。

―― なるほど。ところでこの直営店という仕組みも、アップルのすごさの一角だと思います。数年前まで、アップルの直営店は床面積あたりの売り上げで、多くの高級ブティックなどを上回る圧倒的利益率を誇っている、という話がありましたが、これは今でもそうなのでしょうか?

 実は今日、このアップルストア銀座(注:インタビューはアップルストア銀座で行われた)に来てみたら、店内の構成がすっかり変わっていて驚きました。こうした改善を続けている点も素晴らしいですよね。

シラー ええ、ちょうど全面的改装を完了したばかりです。これは銀座店だけでなく世界中の店舗で一斉に行っていることです。そしてアップルストアは、今日でも大成功を続けています。

2010年7月10日、中国で2店舗目となる直営店を上海にオープンした

 アップルにとってこの直営店は非常に重要な資産です。最新技術をリリースしたタイミングで、顧客にそれらを直接見せて説明する、という意味でも重要な意味を持っています。もちろん年末のショッピングにも最高の場所で、話題の新製品を見つけることもできれば、それらを買う前に知っておきたいことを見つけることも、買った後で分からなかったことを聞くことも、使い方の講習を受けることさえ可能になっています。

 アップルストアは、最新技術を搭載した製品を人々がどのようにして買うか、という体験を大きく変えることができたと思っています。こうしたことを通してストアは商業的にも大きな成果を上げており、事業としても拡大傾向で、今なお全世界に向けて店舗数も増やしているところです。 特にここ数年は米国以外の海外店舗を勢いよく増やしてきました。

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