冒頭で述べた通り、新型のプリントエンジンもDCP-J925Nの大きな特徴だ。
このエンジンの特徴はノズル数を倍にしたプリントヘッドにある。これによって、以前からの課題である速度と画質を向上したわけだ。印刷速度の向上に関しては、同時に給紙機構も大幅に見直しており、従来比で3倍以上の高速化を実現したという。公称の印刷速度はL判写真用紙1枚で14秒、A4普通紙カラーで約10枚/分、モノクロで約12枚/分とされている(印刷速度の測定結果は後述)。
インクも従来とは異なり、新タイプの「LC12」が登場した。ただし、インクの構成はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色で今までと変わりはない。普通紙やはがきにくっきり印字できるように、ブラックのみ顔料インクを採用し、ほかの3色は染料インクとなっている。カラーの薄いライトインクやグレーインクを搭載した他機種に比べて、写真印刷の階調表現では不利になるが、インクの最小ドロップサイズは1.5ピコリットルと小さく、スナップ写真の出力などには十分活用できるはずだ。
スキャンエンジンでも性能の底上げが見られる。従来機の解像度は主走査1200dpi×副走査2400dpiだったが、DCP-J925Nではリアル2400dpiのスキャンが可能になった。また、入力階調も36ビットから48ビット(各色16ビット)に向上した。出力は24ビット(各色8ビット)だ。スキャンスピードの高速化にも着手しており、前記したプリントエンジンの高速化と併せて、コピーが使いやすくなっている。
スタンドアロンの操作には、3.3型ワイド液晶モニタを用意している。操作パネルはチルトアップ機構を備えており、ユーザーが見やすい角度に調整が可能だ。液晶モニタは抵抗膜方式のタッチパネルを採用し、直感的に操作が行える。タッチパネル以外の操作ボタンは、ホーム、モノクロ、カラー、停止/終了、電源と少なく、初心者がどのボタンを押せばいいか迷うことはないだろう。
ただし、実測で表示領域が77(横)×29(縦)ミリ程度と横長のタッチパネルに、大きなサイズのアイコンを4つ並べたメインメニューは、一覧性がやや低い。メニューの階層を深く潜ると、サイズの小さいボタンもしばしば登場し、慣れないうちは押し間違えもあった。操作メニューは見た目に分かりやすいが、少し扱いにくい部分もあるというのが率直な感想だ。
画面サイズを大きくするのが一番の改善策だろうが、コストがかかるため、難しいかもしれない。同じ画面サイズで「詳細」や「OK」などのボタンを大きくするだけでもかなり操作感は改善されるので、今後はメニューのデザインも最適化してほしい。
機能面では、PCレスで画像を補正してダイレクトプリントしたり、レーベルコピーをしたり、スキャンした画像をPDFに変換してメモリカードやUSBメモリに保存したり、と利用頻度が高そうなメニューはそろっている。他機種が用意している写真の手書き文字合成や、ノート用紙などの定型フォーム印刷といった機能はないものの、日常的な利用において不便は感じないだろう。
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