ちょいと未来のUltrabookを妄想するIDF 2012(3/3 ページ)

» 2012年09月20日 08時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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厳しくなる一方の省電力管理

 Haswell世代では、大幅な省電力の実現を目指しているが、これを可能にするのが周辺機器との連携による電力管理だ。システム復帰のトリガーとなるLANやWLANモジュールを除いて、PCに接続するシステムコンポーネントの多くは、必要なとき以外はスリープ状態に移行して消費電力を抑制する。一方で、高速レスポンスを実現するためには、スリープ状態から高速な復帰が必要で、これを管理するHaswellの電力管理コントローラと周辺機器の緻密な連携が必須となる。Intelも、Haswellの省電力向上にサードパーティーの強力なサポートが必要と訴えている。おそらく、Haswellにおける省電力技術で最大の課題がこの部分にある。

 Haswell側でも省電力動作は徹底しており、S0ixのステートにおける強力なパワーゲーティングやアクティブへの高速復帰機構を強調している。IDF 2012ではClover Trailのセッションで、S0ixに移行するときのAtomにおける稼働状況をよく示している。CPUコアの動作がオフになったとき、画面のリフレッシュに必要なグラフィックスコアやデコーダ、電力管理コントローラのブロックがわずかに動作する以外、パワーゲーティングでほぼ完全に電力供給を遮断している。これは、S0i1に移行するとさらに徹底し、S0i3では、電力管理コントローラ以外をほぼ遮断した状態にある。Haswellでも同様の動作を実現するものと思われる。

 IDFでは、省電力コンポーネントとしてLPDDR3の利用にも言及している。LPDDR2は、iPhoneやiPadをはじめ、最近のスマートフォンとタブレットデバイスで比較的採用しているが、どの次世代規格となるLPDDR3を2013年以降をターゲットにUltrabookで導入していく。その導入効果は大きく、今後の普及とコストの兼ね合いで採用例は増えていく可能性がある。

スマートフォンなどで利用しているLPDDRは、現在主流のLPDDR2からLPDDR3に移行して大容量化が進んだ2013〜2014年にかけてPCで採用するようになり、消費電力の抑制に貢献する見込みだ

PCとスマートフォンで扱いが異なるNFC

 ようやく、最近になって日本でもNFC(Near Field Communications)というキーワードが登場するようになった。NFCに関するセッションもIDF 2012で行っている。Intelでは、MasterCardやVisaとの提携でUltrabookにNFCの実装を進めていくと発表しているが、その詳細はほとんど明らかにしておらず、いままで、どういった実装なのか不明だった。しかし、IDF 2012のセッションで得られたいくつかの情報から、その利用場面がわずかながらも見えてきた。

 スマートフォンにおけるNFC搭載では、一般に「セキュアエレメント」(SE)というICチップで保護したデータブロックを内蔵して、外部との通信に利用している。SEにはアプリのインストール領域を用意し、ここにクレジットカード情報や個人プロファイルなど、秘匿情報を保存する。このSEのデータをベースに、外部とNFCによる非接触通信を行い、決済や認証を行う仕組みを「カードエミュレーション」と呼んでいる。これとは逆に、NFCを使って相手側のICチップ(あるいはRFタグ)情報を読む仕組みを「カードリーダー/ライター」と呼ぶ。ICチップの情報は関係なしに、NFCインタフェースを介して相手側デバイスと直接通信を行う方式を「ピア・ツー・ピア」(P2P)と呼ぶ。Android 2.3.3以降ではNFCにおけるこの3つの通信モードをサポートしており、スマートフォンにおけるNFCサポートの標準形態になっている。

 ところがIntelの説明によれば、UltrabookのようなPCやタブレットPCにおけるNFCサポートでは「カードエミュレーション」はなく、「カードリーダー/ライター」「P2P」のサポートのみとなる。PCやタブレットPCはスマートフォンとは異なり、SEにカード情報を直接保存するようなことはせず、あくまでICチップ情報の読み出し(書き込み)や機器認証など、NFC通信の窓口として利用するに過ぎない。IFA 2012で、ソニーがNFC認証でスマートフォンと簡単に接続できるスピーカーやヘッドフォンを発表したが、こうした用途で用いられるのがP2Pだ。閲覧中のスマートフォンで共有Webページにあるストリーミング動画を、別の端末に“タッチ”すると経過時間含めて閲覧途中から引き継ぐ仕組みもP2Pで実現する(いわゆる「Android Beam」)。PCやタブレットPCでは、こうした機器接続や簡単なデータ転送用途を想定している。Bluetooth接続のキーボードやマウスでも、NFCを使うことで文字入力といったペアリング動作なしにすぐに利用できる。

 「カードリーダー/ライター」においては、セキュリティエンジンの搭載が明らかになっている。これはカードエミュレーションを行っている端末のSE情報を読み取ることが可能な仕組みで、POSのような決済ターミナルや、Suicaのような交通カードを読み取る改札機などに設置している。IDFの基調講演デモで、NFC対応のクレジットカードをPCにかざしてカード情報をオンラインフォームに自動入力する仕組みを紹介していたが、これは「カードリーダー/ライター」モードを使って実現している。このように、NFC搭載といってもPCとスマートフォンとでは、その利用する“モード”が異なる点に注意したい。

PCにNFCインタフェースを導入する場合、スマートフォンとは異なりセキュアエレメント(SE)を内蔵するのではなく、システム内のプログラムやクラウド上のサービスへの橋渡しをするセキュリティエンジンの搭載にとどまり、PCそのものに“おサイフケータイ”的な機能は搭載しない(写真=左、中央)。そのため、PCにおけるNFC利用は、無線機器接続を行うときのペアリングや、ICカードによる本人認証が中心になる(写真=右)

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