Apple Watchを使って2週間――林信行の生活はどう変わったか「Apple Watch」世界先行レビュー続編(4/4 ページ)

» 2015年04月17日 13時30分 公開
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Apple Watchの発展には割り切りが大事

 Apple Watchの試用を初めて2週間目だが、来週の販売開始を前にApple Watch対応アプリが急速に増えていることに驚かされている。


 実はApple Watch正式発売前のApple Watch用App Store(iPhoneの「Apple Watch」アプリ内に用意されている)に登録されているアプリは21本で、試用開始時点からほとんど変わっていないが、それとは別に通常のApp Storeで検索をかけると「Apple Watch対応」をうたっているアプリが急速に増えているのだ。

 前回の記事でも書いたようにApple WatchはiPhoneの延長にある製品(iPhoneの分身といってもいいかもしれない)。このため、Apple Watch用アプリには、必ず母艦となるiPhone用のアプリがあり、それぞれ個別にApple Watchにもインストールするかを設定する。

 ちなみにApple Watch用アプリには、さらにそのアプリの分身と言えるグランスがある。前回も書いたように、グランスはパソコンでいうところのウィジェットのようなもので、アプリごとにグランスを表示するかしないかを別途設定できる(グランスがないアプリもある)。


 さて、急速に増えつつあるApple Watchアプリの中には、Apple Watchのコンセプトをうまく生かしているものもあれば、生かせていないものもある。

 アップルはApple Watchを開発するにあたって、腕時計というものがどういうものかを徹底的に考えた。パソコンは数時間にらみ合いながら作業をするもの。これに対して、スマートフォンは数分から十数分向かい合って何かをする道具だ。

 これに対して腕に装着する腕時計は、いつでもすぐに見られる便利な道具として、その昔、パイロットなども必要情報の確認に愛用してきた歴史があるが、腕をずっと顔のほうに向けておく姿勢は長続きしないため、ほとんどの場合、数秒から十数秒しか見ていない。その代わり、見る行為自体は簡単なので、1度時間を確認した後も、あまりしっかり認識しておらず、ついつい何度も見返してしまうことがある。

 Apple Watchは、こうした時計の習慣を踏襲し、十数秒で済む情報確認を中心とした用途のデバイスとしてデザインされている。だから例えば、ほかのスマートウォッチには搭載しているWebブラウザなどもあえて搭載しておらず、Siriでインターネット検索が必要な質問をすると、iPhoneに切り替えて検索するようにさとされる。

 Apple Watchのスペックとしては、もちろん、十分にWebブラウジングもできるはずだが、一度それをやってしまうとアプリ開発者も、一部のユーザーも、Apple Watchにいろいろなことをやらせすぎるようになってしまい、その結果、「Apple Watchのおかげで、いつでも腕元でネット検索ができるようになったけれど、その代わり肩こりがひどくなり、目も悪くなった」といった弊害も増えてしまうはずだ。

 スマートフォンが生活に浸透してきた際、筆者は「いつでもサッとポケットから取り出して重要情報が調べられるだけでなく、調べ終わったらサッとまたポケットに戻して、一緒にいる人の目を見つめながら会話をする、より人間味のある暮らしが広がるはず」と講演していたが、あいにく一緒にテーブルを囲んでいても、相手の目を見ずにスマホをのぞき込む習慣が蔓延(まんえん)してしまっている。

 本当に豊かな暮らしを広げるためには、「制約」も必要、というのがアップルが達した結論で、Apple Watchで何をやり、何を切り捨てるかの判断は、まさにその辺りと関連しているのではないかと筆者は思っている。そういう視点で考えると、アップルが最初に選んだ21本以外のアプリは、そうしたことまでしっかり考えてデザインされているものが多い。

 「クックパッド」のアプリなどは特に素晴らしい。料理のレシピを探す操作はiPhoneで行うが、レシピが決まったら、同じレシピがすぐにApple Watchにも表示されるので、両手で調理しながらでも見ることができるApple Watchで確認しよう、という流れを作っている。

手元でレシピを表示できる「クックパッド」

 「Amemil」というアプリも、主な機能は雨が近づいてきた時に出る「雨が接近」の通知。濡れたらいけない荷物がある時は、これを合図に傘の準備をする。

雨が降りそうだと教えてくれる「Amemil」

 一方、21本に選ばれているアプリでもニュース系のアプリは少しやりすぎている印象がある。数本あるニュース系アプリは、ニュースの見出しをApple Watchで写真入りで読めるようにしているが、Apple Watchに求められているニュースアプリといえば、月に何度かレベルの重大ニュースがあった時だけ、リアルタイムで教えてくれる臨時ニュース系のアプリだろう。

 「NAVITIME」のアプリは、よく利用する駅の次の電車の時間を表示してくれて便利だが、これも今後は事故などで電車が遅れた時の通知や、登録駅だけでなく、GPSで探れる最寄駅の情報も表示されるようになると、さらに便利になるかもしれない。

今後の機能拡張を期待したい「NAVITIME」

 でも、すべてはまだ始まったばかり。ほとんどの開発者たちは、日々の生活の中で実際にApple Watchを使い込むこともないまま、現在のアプリを作っているはずだ。実際に彼らの手元にApple Watchが届き、使い始めれば、今はまだこなれていないアプリもさらに便利に進化していくと期待している。

 そして、こういった便利なアプリが増えることで、Apple Watchというデバイスそのものもさらに進化をしていくはずだ。


 最後になるが、文字だけでは伝わらないかもと思って、Apple Watchで変わるライフスタイルを動画でもまとめてみた。最初は本文で紹介していないエクササイズアプリとともに、ちょっと恥ずかしい筆者の走りを披露している。

記事の中で紹介したApple Watchの特徴を動画でまとめた

 エクササイズアプリでは、エクササイズの種類を選び、エクササイズをする時間、走る距離、消費するカロリーのいずれかで目標を設定すると、時間/距離/カロリー消費と心拍数の変化を記録してくれ、エクササイズが終了すると移動ペースなども計算してグラフ化し、記録を更新したりするとTAPTICエンジンの振動でお祝いをするばかりか、アプリ上でためて楽しむバッジをもらうこともできる(ビデオでは撮影時間の関係で3分という極めて低い目標を設定している)。

 ちなみに心拍数は、平常時もほぼ10分間隔で記録され続け、iPhoneのヘルスアプリに記録される。これが振り返ってみると意外に面白い。たまに心拍数が大きく変化しているところがあるので、その時間を見て、カレンダーと照らし合わせながら何があったかを思い出してみると、失敗をしてドキドキしてしまったことや、乗り換えで走ってドキドキした記憶が蘇るのだ。

 また、心拍数用のグランス(これだけ実態となるアプリがない)を起動するとリアルタイムで心拍数の変化を確認できる。例えば、怒って心拍数が上がっている時などに、これを見ながらリラックスできる音楽をかけて心拍数がおさまっていくのを確認できたりと、自分の精神をコントロールする訓練にも使えそうだ。

心拍数などを記録するセンサー

心拍数の変化を後から見返してみるのも面白い

 前回の記事でも書いたが、この心拍数の確認を除けば、Apple WatchでできることのほとんどはiPhoneでもできてしまう。そういう意味では、Apple Watchはすべての人に必須のデバイスではないだろう。

 しかし、これまでに出ていた数あるスマートウォッチよりもはるかに高い説得力で、ウェアラブルがある暮らしも案外いいかもしれない、と教えてくれるはずだ。必ずしもあわてて買う必要がある製品ではないかもしれないが、それでも買った人には深い満足を与えてくれる、アップルらしい非常によく考え抜かれた製品だと思う。

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