スー氏は、「HBMには大きな可能性がある」と述べ、HBMをハイエンドGPUのみならず、APUやサーバ向け製品にも展開することを示唆する。こうした長期的なロードマップでは、「HBMの要素技術開発や製造技術において先行できたことは、今後の競合関係においてもアドバンテージとなり得る」と予測するなど、半導体技術を知り尽くしたスー氏ならではの、素早い決断であったことをうかがわせる。
一方で、スー氏は「AMDは、今後、カスタムプロセスなど特殊な半導体製造プロセスへの投資はしない」とも明言する。AMDは“Kaveri”世代でカスタム製造プロセスを採用して高クロック化などを実現したが、最新APUの“Carrizo”では「GLOBAL FOUNDRIESの一般的なプロセスルールを使いつつ、高密度半導体設計ライブラリの採用やデザインの最適化によって、同じ28ナノメートルプロセスルール世代ながら、より多くのトランジスタを搭載しつつ、電力効率の向上も果たした」とし、今後も特殊プロセスへは投資をせず、「設計ライブラリやツールへの最小限の投資にとどめる」と説明している。
AMDはかつて、動作クロック1GHz達成、64ビット対応、マルチコア化、メモリコントローラのCPU統合、グラフィックスコア統合と、プロセッサ開発における革新をもたらし続けてきた。そのAMDが、半導体のスペシャリストでもあるスー氏のもと、再びアグレッシブな製品戦略を採ろうとしている。
スー氏は「AMDはグラフィックスのパフォーマンス競争から離脱しない。なぜなら、グラフィックスはAMDのDNAだからだ」とし、今後、GPUの高性能化を加速していく意向を示す。そして、同様にCPUについても、Zenアーキテクチャの投入により、再びインテルとパフォーマンス競争を競うレベルにすることこそ、より高収益性が望めるエンタープライズ市場への足がかりとなる。
NXP SemiconductorによるFreescale Semiconductor買収、Avago TechnologiesによるBroadcom買収、インテルによるAltera買収と、半導体企業再編が加速する中、AMDが生き残るためには、この新戦略の成否にかかっている。
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