コラム
» 2018年07月01日 06時00分 公開

ITはみ出しコラム:米IT大手の企業買収にみる悲喜こもごも Microsoft、Google、Amazon、Twitterの場合

米IT大手の企業買収には、その企業の思想や方針が見え隠れします。Microsoft、Google、Amazon、Twitterが過去に行った買収劇を振り返ってみました。

[佐藤由紀子,ITmedia]

 米IT大手の企業買収には、その企業の思想や方針が見えて面白いです。

 例えば、最近ではMicrosoftがGitHubを買収しましたが、オープンソースの文化に配慮して「何も変えない」と宣言することで、開発者の間でかなりイメージアップしたと思います。従来のMicrosoftでは考えられないことでした。

GitHub MicrosoftがGitHubを買収する時代です

Microsoftの場合

 Microsoftによる買収劇をたどってみると、記憶に新しいのがNokiaです。2013年当時にMicrosoftのCEOだったスティーブ・バルマーさんが、うまくいかないモバイル事業を何とかしたくて、Windows PhoneとしてはうまくいっていたNokiaの端末部門を買収することに決めました。

 しかし、翌年の買収完了時にはCEOがサティア・ナデラさんに変わっていて、元Nokiaの従業員を大量にリストラした揚げ句、Windows 10世代になってからWindows 10 Mobile(旧Windows Phone)自体が終了となりました。

Windows Phone 2014年のMicrosoft開発者イベント「Build 2014」で「Windows Phone 8.1」端末を掲げる同社のジョー・ベルフィオーレ氏

 一方、バルマーさんが2011年に行ったSkypeの買収は、企業向けコミュニケーションサービスへの統合で少し混乱はありましたが、うまくいった方でしょう。

 ナデラさんがCEOになってからの大型買収としては、2014年のMojang(Minecraftの開発元)2016年のLinkedIn、そして前述のGitHubが目立つところです。

 Mojangの買収では、開発者のノッチことマーカス・パーソンさんは自分は起業家ではないので初心に戻ってゲーム開発をやりたいと会社を辞めてしまいましたが(ノッチさんは2017年、Rubberbrainという企業を立ち上げましたが、まだ具体的な製品は出していません)、MicrosoftはMinecraftをXboxに閉じ込めたりせずにマルチプラットフォームで展開していて、教育分野での活用などでそこそこ効果を上げています。

 ビジネス向けSNSのLinkedInを買収した成果はまだ不明です。でも、人材としてのジェフ・ワイナーCEOの獲得は大きいですし、少しずつですがLinkedInの機能は充実が進んでいます。ナデラさん法務顧問のブラッド・スミスさんが自分の主張を発表する場所にLinkedInを選ぶのは親心かなとも思います。

LinkedIn ナデラさんのLinkedInアカウント

 企業買収は大抵、自社サービスの拡充や補強を目的に行います。目的は同じでも、あまりにも企業文化が違ったりすると、うまくいきません。Nokia買収の失敗の一因はそこにあったと思います。

Googleの場合

 こうした企業買収でうまくいかない例がたくさんあるのはGoogleです。

 Googleはそもそも大小さまざまな買収をしているので、成功も失敗もあります。でも、もったいなかったなぁと思うのはロボット企業Boston Dynamicsの買収(2013年)。あまり生かせないまま、2017年にはソフトバンクグループに売却しました。

 2011年に買収したレストランガイドのZagat2018年にThe Infatuationに売却しています。

 2012年に行ったMotorola Mobilityの買収は全く無駄だったとは思いませんが、買収で得た特許資産を手元に残しつつ、2014年にLenovoに売却した後、大幅な人員削減が伝えられるなど物悲しいものでした。

 スマートホーム企業のNestについては、苦労人の元Motorolaの偉い人が再編したことで、何とかGoogleのIoT戦略の一翼を担えるようになりそうです。

Nest スマートホーム企業のNestは、スマートスピーカー「Google Home」を手掛けるハードウェアチームとの連携を強化しつつ、ブランドは維持

 Googleは2017年にHTCのハードウェア部門を買収しましたが、Motorolaでの失敗を教訓に、うまく「Pixel」シリーズに生かせますように。

Twitterの場合

 買収のもう一つの目的は、競合しそうな新興企業を食べちゃう、というもの。昔のTwitterはよくこれをやってひんしゅくを買ったものでした。そうした買収の結果、今でも生かしているのは2011年に買収したクライアントソフト開発のTweetDeckくらいでしょうか。これもいまひとつ位置付けがうまくいっていない印象を受けます。

 Twitterはサービス拡充目的の買収ももちろんやっていて、最近では嫌がらせ問題対策企業のSmyteを買収しました。ただ、Smyteが多くの企業向けに提供していたサービスを突然打ち切らせ、これはこれでひんしゅくを買っています。

 2012年に買収した動画共有サービスのVine2016年にサービス終了2015年に買収したライブ動画中継アプリのPeriscopeも最近はどうなっているやらですが、PeriscopeのCEOだったケイヴォン・ベイポーさんは6月28日の組織再編でジャック・ドーシーCEO直属の製品責任者に就任したので買収のかいはあったのかな、と思います。

Amazon.comの場合

 Amazon.comも過去には随分と力尽くな買収で知られましたが、オンラインアパレルショップのZappos買収(2009年)などは成功例として挙げられます。Amazonはそのころから買収した企業を独立子会社として企業文化にも口を出さないやり方を増やしているようです。

 最近では、2014年に買収したゲーム実況のTwitchにプライム特典を追加したり、2017年に買収した食料品店のWhole Foods MarketにAmazonのロッカーを設置したりして、親会社にも子会社にもプラスになることをしています。

Whole Foods Market Whole Foods MarketにAmazonのロッカーを設置

 6月28日に発表した医療薬通販サイトPillPackの買収もきっとうまく生かしていくのでしょう。日本でも利用できるようになるといいなぁ。

【更新:2018年7月2日午前9時00分 Mojangのパーソン氏の退社理由が誤っていましたので修正しました。】



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia PC USER に「いいね!」しよう