データ通信端末と内蔵モジュール事業を強化――Huaweiに聞く、日本市場戦略Mobile World Congress 2010

» 2010年03月11日 17時38分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo Huawei 端末製品事業広報担当ディレクターのグローリー・チャン氏

 スマートフォンの登場で、端末メーカーのシェアは変動の兆候がある。中国のHuaweiは、このチャンスをものにしようと積極的に動いている1社。大手通信機器ベンダーとしての知名度と顧客ベースを土台に、スマートフォンやタブレット、モバイルブロードバンド向けデータ通信カードなどを幅広く提供するデバイス事業を展開中だ。

 Huaweiはネットワークインフラ、ソフトウェア、サービス、デバイスの4事業部を展開している。中でもデバイス事業は2009年に出荷台数9000万台を上回るなど好調に推移し、売り上げが全体の約6分の1を占めるまでに成長した。デバイス事業部では、データ通信カードやUSBドングルなどのモバイルブロードバンド向け端末、携帯電話機、デジタルフォトフレームなどのコンバージェンスデバイス、テレビ会議システムなどのビデオ関連製品の4つのカテゴリーに分けて端末を投入している。

 スペイン・バルセロナで開かれたMobile World Congress 2010でも多彩な端末を披露し、注目を集めたHuaweiの端末製品事業広報担当ディレクター グローリー・チャン(Glory Cheung)氏に、2010年のデバイス事業戦略について聞いた。

 HuaweiはMobile World Congress 2010に出展し、HSPA+対応端末の「U8800」、「U8300」「U8100」「U8110」の3機種のAndroid搭載機を発表するなど、スマートフォンにフォーカスした展示を展開。2009年にリリースしたスマートフォンは4機種で、その売り上げは3割にも満たなかったが、2010年にはシリーズで端末を発表するなど、大きなビジネスに育てたい考えだ。「今年はスマートフォンは10機種以上、タブレットも数機種発表する予定」(チャン氏)。

Photo HSPA+対応の「U8300」(写真=左)とタブレット端末「SmaKit S7」(写真=右)

Photo 「U8300」(写真=左)、「U8100」(写真=中)、「U8110」(写真=右)

 U8800はタッチパネル対応の3.8インチディスプレイを備え、Android 2.1を搭載したハイエンドモデル。U8300はQWERTYキーボードを搭載した若者向けのメッセージ端末で、U8100とU8110はマス向けのエントリー端末という位置付けだ。また、会期中に発表した7インチディスプレイのタブレット端末「SmaKit S7」でもAndroidを採用するなど、Androidを中核に据えたラインナップを打ち出している。

 Androidを採用するメリットについてチャン氏は、「オープンなプラットフォームで創造性があり、費用対効果の高い製品を開発できる。今後数年で急速に成長すると考えている」と説明。HuaweiはWindows MobileやSymbianを搭載したスマートフォンも投入しているが、特定のプラットフォームにはこだわらず、「顧客が必要とする機能を満たした端末の開発に注力する」(チャン氏)方針だと話す。

 2010年はまた、モバイルブロードバン分野の製品やコンバージェンス製品についても精力的にラインアップを拡充する計画。モバイルブロードバンドでは、「主力のデータ通信カードで50〜70種類をローンチする」とチャン氏。目玉となるのが、MWCで披露したLTEモデムの「E398」だ。この製品は、UMTS(3G)とGSMにも対応する3モード対応の通信カードで、すでにスウェーデンでモバイルブロードバンド専業のネットワーク事業を展開するNet4Mobilityの採用が決まっており、年内の商用化を見込むとしている。

Huaweiの強みは、端末とインフラ機器の展開

 端末の事業展開において大きな差別化要素となるのが、単一の企業で端末とインフラ機器の両事業を持つ点だ。EricssonやNokia Siemens Networks、Alcatel-Lucentら競合企業が端末事業を切り離しているのに対し、Huaweiは同じ企業で2つの事業を展開することが重要と考えているようだ。「キャリアが展開するサービスや事業全体のニーズを深く理解でき、競合他社よりも迅速に競争力のある端末やサービスを開発できる。2つの事業部によるシナジー効果が期待できる」(チャン氏)

 Huaweiがインフラとデータ通信端末の「Pocket WiFi(D25HW)」「D31HW」、携帯電話端末「H12HW」などを提供するイー・モバイル、LTEとLTEデータ通信カードの両方を提供するNet4Mobilityはシナジー効果を発揮できた好例だという。「端末とインフラ機器の2つの事業がグローバルな営業基盤を共有することで、さまざまな製品エリアのニーズに対応できる」(チャン氏)。

Photo イー・モバイルに提供した「Pocket WiFi」(写真=左)と「H12HW」(写真=右)

 日本市場については、国内市場シェア1位となったデータ通信端末に注力するとともに、NTTドコモやソフトバンクに供給しているフォトフレームのような、内蔵モジュール事業を拡充していくという。内蔵モジュールとしては、マシンツーマシン(M2M)とPCの2種類があり、後者のPCではNTTドコモ向けのASUS端末、イー・モバイル向けの東芝とDellのPCで採用されている。「今後はPCだけではなく、家電向けにも内蔵モジュールを拡大していきたい」とチャン氏。すでにメーカーとの話を進めているとし、スマートフォンへの搭載も検討中とのことだ。

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