Huaweiは現在、世界130カ国、約470の通信事業者向けに端末を供給している。2008年度は8000万台の端末を出荷し、40億ドル以上の売り上げを記録(うち85%は中国国外)。世界90カ国以上に100以上の支社、500以上のサービスセンター、2000以上のサービス拠点を設置するなど、世界規模の展開が続いている。Huaweiは今後、どのような戦略で端末事業を推進していくのか。端末製品事業 広報担当ディレクターのグローリー・チャン(Glory Cheung)氏に話を聞いた。
Nokia、Samsung電子、LGエレクトロニクスなど、日本から見た海外の携帯メーカーは、通信キャリアの施策とは別に独自の“ブランド”を形成しているイメージが強い。だがHuaweiが重視するのは「通信キャリアが求める商品を作ること」。チャン氏が「ほかの端末メーカーとは異なるビジネスモデルだと認識しています」と言うとおり、海外では珍しいケースといえる。逆に日本では、メーカーが通信キャリアの求める端末を供給するモデルが慣例となっているので、Huaweiの端末事業は“日本的”だといえる。
チャン氏は「Huawei独自の販売チャンネルを持つ方法もありますが、現時点では得策ではないと考えています」と説明。いわゆる“Huaweiショップ”などの展開は想定していない。一方で、Huaweiが独自でマーケットの情報を分析してトレンドを研究するといった活動は行っているという。研究開発の視点では「キャリアからの要望は情報源の1つ」という考えだ。
Huaweiの携帯端末は「モバイルブロードバンド」「携帯電話機」「FMC端末」「ビデオ会議ソリューション」の4種類に分けられる。モバイルブロードバンドはデータ端末やWi-Fi端末、携帯電話機には音声端末やスマートフォン、FMC(固定通信と移動体通信の融合)端末にはデジタルフォトフレームなどが含まれる。4つ目のビデオ端末は法人向けソリューションなので比率は少なく、そのほかの3つがほぼ同じ割合で売り上げに貢献しているという。
日本から見たHuaweiはデータ端末が充実しているというイメージがあるが、データ端末の売り上げは世界規模で見ると30%に過ぎない。チャン氏は「全ジャンルのネットワーク端末を供給していきたい」と意気込みを話す。Huaweiは2011年にはLTE対応のデータ端末も供給する予定。「LTE製品の開発にもリソースを投入しています。LTE製品は今後の携帯事業における大きなポイントになるでしょう」(チャン氏)
端末の品質面でHuaweiがこだわるのが「技術のイノベーション」だ。例えば、日本では2007年12月に発売された、下り最大7.2MbpsのHSDPA通信に対応する「D02HW」は、CD-ROMからドライバをインストールせずに利用できる「ゼロインストール」を世界で初めて導入した。この使いやすさが好評を博し、世界では1カ月で100万台が売れたという。同社が開発したWi-Fi端末「Pocket WiFi」も、「手のひらサイズの無線LANアクセスポイント」という点で革新的な製品といえる。
もう1つ、チャン氏が“Huaweiならではの製品”と紹介したのが、欧州のVodafone向けに投入した「HG556a」だ。同製品はADSLモデムとして使えるほか、USB端子にデータ端末を差し込むことで、外出先などで無線LANアクセスポイントとしても使用できる。場所を選ばずにインターネット接続ができる特長が受け、「発売から数カ月で100万ユーザーを獲得した」という。
ウィルコムが「どこでもWi-Fi」、イー・モバイルがPocket WiFiを発売するなど、日本でも小型の無線LANアクセスポイントが注目を集めている。チャン氏は「Wi-Fi端末は大きなマーケット」と見ている。実際、Pocket WiFiはシンガポールや香港でも発売されるなど、30以上の通信キャリアが供給先に決定しており、チャン氏も「手応えを感じている」と話す。
「エンドユーザーにとって、ワイヤレスでいろいろな機器を接続できるのは、手間が省けて便利です。一方、モバイルブロードバンドが普及した先進国の通信キャリアにとっては、こうした製品を投入することで、新しいユーザーを増やせるチャンスにつながるでしょう」とチャン氏はWi-Fi端末のメリットを説明する。
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