井口 最後にPostPetNowについてなんですが、これを開発しようと思ったきっかけは何なのでしょう?
八谷 日本でこれだけTwitterが活発になって、僕らはTwitterのインフラをタダで使わせてもらっているわけですけど、それに対して文化面で何かを還元したい気持ちがありました。それが発端ですね。
開発を始めたのは去年の秋ごろだったんですが、そのころのTwitterって、僕らがポストペットのメーラーを出して、Eメールを一般の人に普及させようって思ってた状況と近いなと感じていたんです。
ポストペットの開発は1996年ぐらいに始めているんですけど、そのころメールを使ってる人は男性がほとんどでした。「自分のガールフレンドが使っていなかったら通信手段として意味ないじゃん」と思って、ポストペットを作ったんです。当時はTwitterもそれに似た傾向があると感じて、コミュニケーション手段としてのポテンシャルは高いのにもったいないと思っていました。
井口 Twitterってそれなりにソーシャルグラフが育たないと面白くないわけですけど、最初は何をすればいいか分かりづらい。“リプライ”とか“ハッシュ”とか肝心の面白い部分も、コンピュータに詳しくない人にとって扱いづらいですよね。でも、そういうサービスに部屋や広場の概念を取り入れてフレンドリーにするのはすごく有効な感じがします。見た目だけでも面白そうなんですが、どういったクライアントなのかを教えてもらえますか?
八谷 Twitterのユーザーがパペットとよばれる人形になって、ドールハウス風の家に住んだり、カフェや広場に集まったりします。井口さんのいうとおり、Twitterはリプライを見たりハッシュを見たりするのが実は楽しいと感じているんですが、Web版のサービスの中ではそれほどフィーチャーされていない。PostPetNowでは、「@カフェ」というカフェの空間をのぞくと、リプライをくれた人たちが団らんしていたり、「ハッシュ広場」という空間に行けば、ハッシュで集められたツイートが同じ服を着て集まっていたりします。
あと、やっぱり自分がツイートしないとそもそも面白くないので、1つツイートすると通貨が1ペッチもらえる、といったようなゲーム的な要素を加えて、ツイッターの面白さが伝わりやすくなるようにしています。
井口 ポストペットでおなじみのペットたちと利用者の関係はどうなっているんですか?
八谷 ペットは利用者の家の管理人になります。実は「めぞん一刻」(※5)がモデルです。利用者の家には最大5人まで、自分の選んだユーザーを住まわすことができるんですが、この家はいわば「一刻館」ですね。大学時代の寮生活が楽しかった思い出があって、そんな集団生活の面白さが出せないかなと思って作りました。
あと、ツイートで仮想通貨が貯まるお話をしましたけど、これは地球を研究している異星人にペットがツイートを売っているという設定なんです。で、貯まったお金でパペットに着せる服を買ったり、おやつを買ったりできるというわけです。
井口 これはパッケージは販売するんですか? アイテム課金なども取り入れたり?
八谷 ダウンロードのみで、無料の試用版と月額課金のプレミアム版の2種類を用意します。無料版もTwitterクライアントとしては普通に使えますが、ペットがいません。管理人さんを雇うのに、月々ちょっとお金を払ってもらうイメージです。
あと基本的にアイテム課金は入れていません。アイテム課金って、ゲーム的なもので時間を短縮するために強い武器を買うといった使い方はいいと思うのですが、僕らはPostPetNowをなるべく長い間使ってもらいたいと思っているので。
井口 八谷さんのプロジェクトって、単発のものもあれば長期のものもある。PostPetNowは長く使ってほしいということですが、その思いはどこからくるのでしょう?
八谷 ポストペットに今でも愛着を持ってくださっている方がいるので、生みの親としてまたいい物を作って、長く愛されるキャラクターにしていきたいと思ってます。この前、ハローキティのパーティーに行く機会があったんですけど、長期間続いているキャラクターってすごいなあと感じました。個人的には「キティ先輩!」って思っていて、あそこまで続くのは大変だけど、でもポストペットのキャラクターはネット発で出てきたものでもあるので、自分たちとしても大切にしていきたいと思ってます。
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