あの東日本大震災から、早くも2年が経過しようとしている。マグニチュード9.0、最大震度7を記録した同震災では、東北地方を中心に甚大な被害が発生し、その復興はいまだ道半ばである。
そのような中でNTTドコモが7日、新たな復興支援の取り組みを発表した。同社は岩手県、宮城県、福島県を中心に、被災された方への支援や地域の復興活動を進めるNPO等市民活動団体 11団体に対して、総額2500万円の助成を実施する計画だ。
むろん、ドコモが東北復興支援を行うのはこれが初めてではない。同社は東日本大震災から約1年でインフラの復旧を行ったあと、その後の1年は「復旧ではなく復興のフェーズと位置づけて、支援活動に注力してきた」(NTTドコモ 執行役員 東北支社長の荒木裕二氏)という。2011年12月には東北復興新生支援室を設置し、さまざまな支援活動を行っている。
「東北復興新生支援室はドコモ全社の取り組みとして、東北の復興を行っていくという想いで設立しました。現在、同室のメンバーは全国(のドコモ)から志願してきた18人。彼らはとにかく被災地に足を運んで、現場思考で復興支援を行うことを重視しています」(荒木氏)
NTTドコモはかつて地域会社制を敷いていたこともあり、今も各地域支社は地元密着で現場を大切にする姿勢がある。東北復興新生支援室でもこのよき伝統は生かされており、支援室のメンバーは被災地を丹念にまわり、そこにいる人々の声に耳を傾けながら、復興に本当に必要とされていることを行っているという。それが評価されて、「今では被災地の皆様から『ドコモは真剣に(復興に)取り組んでいる』と評価していただけるまでになった」と、荒木氏は少し顔をほころばせた。
現在、東北復興新生支援室では「コミュニティ支援」「防災・まちづくり」「産業振興」の大きく3つの分野について、国や自治体、企業、NPOなどと連携を図りながら、多くの復興支援を行っている状況だ。
ドコモは今回、NPO 11団体に資金的な助成を行うが、同社の復興支援は金銭的なものだけではない。タブレット端末や同社の各種サービス事業など、ドコモの持つリソースがさまざまな形で活用されている。
例えば、福島県 飯舘村や富岡町では、原発事故によって避難生活を送る被災者のコミュニティ活性化のためにタブレット端末を活用。飯舘村には約2700台、富岡町では約4000台のタブレット端末が配布され、テレビ電話や掲示板機能、コミュニティFMのストリーミング配信サービスなどを通じて、被災者同士をつなぐ架け橋の役割を担っている。
また、岩手県釜石市や北上市では、タブレット端末80台を用いて、仮設住宅支援連絡員のサポートシステムを構築。これまで紙媒体で行っていた巡回記録をデジタル化し、さらに迅速に共有することで、自治体や社会福祉協議会の負担を軽減することに成功している。同事業は現時点ではトライアル段階だが、今年4月から本格運用を開始する予定だ。
そして筆者が、これはドコモらしい取り組みだと膝を叩いたのが、宮城県南三陸町で実施された「未来の種プロジェクト」である。
これは農山漁村の生産者と都市部の消費者を結ぶコミュニティを形成するという支援で、生産者がドコモのタブレット端末を通じて、農産物などの情報を発信。ドコモの子会社である「らでぃっしゅぼーや」や「dショッピング」「プレミアクラブ」などを通じて収穫物や特産品を売ることで、東北の生産品のブランド価値を高めていくというものだ。
実際、2012年に行ったササニシキなどの生産物の販売は好調で、らでぃっしゅぼーやオンラインストアで用意した330セットが瞬く間に完売したという。また現在は森林保全活動の取り組みでもこの仕組みが活用されており、オリジナルの間伐材グッズをdショッピングを通じてドコモの顧客に販売していく。
被災地の自立的な復興と発展を鑑みれば、今後は被災者の直接的な支援だけでなく、東北の産業そのものの支援が重要になる。そこで生産の現場にタブレット端末やクラウドサービスなどを提供して支援するだけでなく、そこで生産されたものに高い付加価値を付けて販売する“販売チャネルや顧客獲得の支援”も重要になってくる。ここでdショッピングなどを活用するというのは、サービス事業を拡大する今のドコモらしい支援のあり方と言えるだろう。
通信キャリアと被災地というと、とかくインフラの復旧と、金銭的な支援ばかりが注目されることが多い。しかし、通信キャリアの事業領域が拡大する中で、ITをうまく活用しながら、地域に根ざしたさまざまな“支援のかたち”が作れるようになった。東日本大震災から2年、ドコモの地域に根ざした息の長い復興支援活動が続いている。
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