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» 2009年08月27日 12時00分 公開

情マネ流マーフィーの法則(18):IT系アンケート結果は信用できない

最近はWeb上で手軽にアンケートが答えられるようになり、日々さまざまな調査結果が発表されている。しかし、このようなITに関するアンケート調査の結果をうのみにするのは危険だ。今回はIT系アンケートに関する法則を紹介する。

[木暮 仁,@IT]

 アンケート調査の結果をうのみにするのは危険である(参考:『統計でウソをつく方法』ハフ=著/講談社)。ここではITに関するアンケート調査の特徴について考察する。

情マネ流マーフィーの法則その104

誰が誰にアンケートしたのかをチェックせよ


 「○×が重視されている。アンケートによれば、すでに導入している企業が20%、検討中が50%、予定なしが30%であった」というアンケート結果が出た。「では、当社も」と考えるが、実はこのアンケートは、○×をテーマにしたイベント会場で実施したものである。

 例えば、「インターネットでの購入が急増している」というアンケート結果は多いが、そのアンケートはWebサイトで実施したものが大部分である。

情マネ流マーフィーの法則その105

回収率が低いアンケート結果を信用するな


 自分に関心がないアンケートには回答しないのが普通だ。

 回収率が20%のときは、「ITに関心を持っている」が70%、「持っていない」が30%であったとすれば、実際に関心を持っているのは20%×70%=14%、持っていないのは80%+20%×30%=86%である(関心があっても答えないこともあるが)。

 経済産業省による「情報処理実態調査(平成18年)」は、全体の回答数が4267社になる大規模調査だ。それによると、年間事業収入が10億円未満の企業数が全体に占める割合はわずか8.5%であり、その情報処理関係支出額は年間事業収入の11%になっている。この数値から「中小企業は大企業よりもIT投資に積極的だ」と結論できないか?

情マネ流マーフィーの法則その106

定義が不明確な調査項目を疑え


 ERPパッケージの導入調査では、パソコンの会計ソフトもERPパッケージと称しているので、従業員5名程度のIT担当者すらいない企業がERPパッケージを導入していることになる。データウェアハウスの導入調査では、すでにEUCとして情報検索系システムが定着しているのに特定の商品を用いていないことから、導入もしていないし導入予定もないと回答する。

 パソコン装備率では、分母となる従業員とはパソコンを使うべきオフィス業務担当者だけなのか、工場作業者や店舗販売員までを含めるのかを明示したアンケートを見たことがない。

 IT投資額の対売上比率では、生産分野での制御機器やCAD、広報分野でのWebサーバのホスティング費用などが含まれているのかどうか。これらを含まないとすれば、銀行のIT投資は非常に小さくなるはずである。一般にいわれているIT投資額とは、IT部門予算額だと言い換えるべきであり、どこまでがIT部門の管轄なのかは企業により大きく異なる。

情マネ流マーフィーの法則その107

IT関係の経営者へのアンケートは、「IT部門から見た経営者」と読み替えよ


 社長宛ての社用手紙は、秘書や総務担当者が仕分けする。アンケートを社長に渡すよりも関係部署に回すのが常識だし、社長が開封しても関係部署に回す。それが、経営者を対象にしたアンケートなのに、IT特有の用語・概念を含む質問に回答できている理由である。

 例外的に経営者自身が回答することもある。経営者は自分をよく見せる習慣がある。自社の実態ではなく、世の中(雑誌など)でいわれていることを思い出し、「模範解答」を回答する。

情マネ流マーフィーの法則その108

「CIOの最大関心事」は、IT雑誌が2カ月前に特集した事項と一致する


 CIOはITの基本方針を示すのが任務である。基本方針が数カ月で変わるのは考えにくい。関心事がころころ変わるのは、「その時々の話題に引きずられている」といえる。

 もっとも、CIOが関心を持っている項目は、アンケートの選択項目にはないことが多い。CIO本人ではなくIT部門が回答しているので、雑誌で取り上げていることを回答するのが「正解」であると考えるからでもある。

情マネ流マーフィーの法則その109

「IT部門の任務」では、時代に関係なく「これまではDP業務。これからはIT業務」である


 「これまでIT部門が従事してきた業務は、基幹業務系システムの構築・保守運用が主であった。これから(3年後)は、経営戦略に密着した全社的改革業務が多くなる」というアンケート結果が多いが、これは1960年代でのアンケート結果とほぼ一致する。

情マネ流マーフィーの法則その110

ITでの国際比較論では、常に日本は後進国である


 昔から識者は「米国では?。日本では?」として、日本の後進性を指摘するのが常である。

 CIOの関心事に関する調査で、米国ではセキュリティ対策が1位、日本では4位の結果が出ると「日本は社会的要請に応えていない」といい、次の年に米国でビジネス改善関連が1位、日本でセキュリティ対策が1位になると、米国は攻めの投資なのに日本は守りの投資だという。常に米国が正しいのである。

 最近は中国やインドと比較して、日本のIT関心度が低いことが指摘されている。日本ではITが成熟期になってきたのに、これらの国では成長期であることには言及されていない。

 このような自虐的論調のために、IMDなどの国際ランキングで日本の順位が下がるとはしゃぐが、順位が上がったときには沈黙する。

著者紹介

▼著者名 木暮 仁(こぐれ ひとし)

東京生まれ。東京工業大学卒業。コスモ石油、コスモコンピュータセンター、東京経営短期大学教授を経て、現在フリー。情報関連資格は技術士(情報工学)、中小企業診断士、ITコーディネータ、システム監査など。経営と情報の関係につき、経営側・提供側・利用側からタテマエとホンネの双方からの検討に興味を持ち、執筆、講演、大学非常勤講師などをしている。著書は「教科書 情報と社会」(日科技連出版社)、「もうかる情報化、会社をつぶす情報化」(リックテレコム)など多数。http://www.kogures.com/hitoshi/にて、大学での授業テキストや講演の内容などを公開している


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