ITmedia Mobile 20周年特集

台頭か、反撃か、失速か――キャリアの“勢い”が変わった1年2007年の携帯業界を振り返る(1) (2/2 ページ)

» 2007年12月28日 23時50分 公開
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Photo 「業界全体で画期的なサービスがなかった気がします」(石川氏)

石川 auはメーカーのテンションもあまり上がってない感じがしますよね。とりあえず「安く作って安く納入する」というスタンスがあるので、なかなか際立った端末、ワクワク感のある端末が出てこないという気がしますね。

神尾 「それでいいや」という少し投げやりな雰囲気が最近のau陣営にありますよね。先進的なサービスや端末で先進的なユーザーを取り込んで、この業界を切り開いていこうという意欲よりも、MNP開始以降はユーザーをたくさん獲得して30%というシェアを超えましょうという、数量的な目標に重きを置いているように思えます。

 2、3年前のauは、どちらかというと未来を先取りして、サービスのクオリティを上げて先進的なお客さんをどんどん取り込んでいこうという雰囲気が強かったのに……。

 それと、auはサービスと端末のコンセプトが統合されていて使いやすいのが魅力でしたが、今年に入って、それがだんだん崩れてきている気がしてなりません。例えば「au one」はすごく可能性があるサービスだと思うんですけど、端末のユーザーインタフェース(UI)と統合されていない。昔のauだったらあの状態ではリリースしていないはずなんですよ。ちゃんと端末のUIと統合して使いやすくて、多くの人が先進性を実感できるレベルになって初めてリリースしていたのに、それができていないことには詰めの甘さを感じます。

石川 auだけではないけど、今年(2007年)を振り返ってみて、業界全体で画期的なサービスがなかった気がします。キワモノでドコモの「2in1」はありますけど(笑)、キャリア発の新しいサービスというのはそれくらいですね。といいつつも、ドコモがそれほどすごいわけでもないし、ソフトバンクがサービスで盛り上がってきたといえばそうでもないし、だったらauならではの個性的なサービスで攻められたんじゃないかな、と感じます。

神尾 auは(これまでは)新しくて最初から使いやすいサービスを提供していましたが、(2007年は)そういったサービスがなかったのは残念でしたね。ドコモで最近評価しているのが、らくらくホンの成功以降、使いやすいサービスや端末を地道に提供していること。らくらくホンもそうですし、iチャネルもずいぶん伸びましたし、905i向けに提供された地図アプリも、らくらくホンテイストで使いやすいんですよ。先進的ではありませんが、UI改善は頑張ったと思いますよ。

石川 その点、auは頑張り感がないですよね。変わり映えしないというか。

神尾 頑張ってはいるんでしょうけど、昔のauを見てきた者の目だと「もっといけるだろ」という残念感がありますね。今のauに対する失望は、つまるところ残念感なんですよ。つまり「もっとできたはずじゃないの?」という。今まできちっといい仕事をしてきただけに……。

石川 「本当はできる子なのに……」と。

神尾 最初からできない子だったら、こんなにガッカリしないと思うんですよね。インフラが3.5Gになったときに着うたフルを導入するとか、しっかりと煮詰めたサービスや端末を出してきてくれたのに、「それがなんで今できないの?」という。デザインもどこか煮え切らないものが出てきたり……。

 あと、1年を通してワンセグに逃げたのが、心底ガッカリでしたね、ワンセグは店頭で今年(2007年)の春くらいまでは商品力がありましたけど、「冬商戦まで引っ張るなよ」というところはありません? ワンセグは通信業界にとってのサービスやイノベーションではないので、ビジネスやサービス、文化の可能性を広げる“土壌”としては弱いんですよ。個人的には、ワンセグに投資するくらいなら、ニコニコモバイル(ニコニコ動画)やYouTubeの方がよっぽど新鮮で楽しいし、未来志向だと思っています。そこはすごく残念なところです。

石川 それ(ワンセグ)以外に売るものがないという感じはします。

“ライフスタイル”を追いすぎた結果、auならではの魅力が希薄に

Photo 「『この新しいプロダクトが新しいライフスタイルと文化を作るんだ』という思い切りがほしい」(神尾氏)

神尾 auに対しては「ライフスタイルに逃げるな」とかいろいろと言いたいことはあるんですけどね。個人的には、ライフスタイルというのはあとから付いてくるものだと思うんですよ。既存のスタイルに合わせると新しい文化は作れない。むしろ「この新しいプロダクトが新しいライフスタイルと文化を作るんだ」という思い切りがほしい。

石川 春くらいに(KDDIの)高橋さんに取材したときに、あのころはライフスタイルとよくおっしゃっていました。auはライフスタイルにこだわっていたけど、「じゃあライフスタイルってなに?」と。各ユーザーの生活に合わせて提案しているんでしょうけど、逆にauとして目指しているところがブレてきましたね。スタイルという陳腐な言葉で片付けるのではなく、誰が聞いても分かるような言葉でauの商品を語ってほしかったですね。

神尾 auの「ライフスタイルに合わせて」というのは、すごくしっかりとマーケティングリサーチしたのはよく分かるんですよ。最大公約数的に「こういうセグメントの人はこういうものを欲しがるんでしょう」という、いわゆる広告代理店がやるようなセグメント分けのメッセージはよく分かるんですが、それによって何か新しいものを作っていこうという気概は感じないですね。ドコモに先駆けて着うたフルをやって、「新しい音楽文化を作るんだ」と気負ってやっていたころとは大きく違います。

石川 ライフスタイルに合わせて作るというのであれば、ソフトバンクのように“シャア専用”ケータイとか、ああいうものを出してくれたほうが分かりやすいんですよ。あれはちゃんとファンに向けて出してくれたものですし。じゃあauでそういう形に落とし込めたものがあったかというと、何もないので、その点はソフトバンクのほうが一枚上手だったという気はします。

神尾 なんとなく中途半端な感じでしたよね。端末やサービスにしても、その中途半端感にモヤモヤとした不満を感じる1年でした。2008年のauはものすごく茨の道だと思います。おそらくこのままいくと、12月と2008年の1月は純増が落ちるでしょう。つまり勢いが落ちるので、auのイメージは確実に悪くなります。

 今までのauには、すごく伸び盛りでドコモを攻め立てていたというイメージがありましたが、そのイメージをソフトバンクに取られつつあります。すると「auの魅力って何?」ということになります。中途半端な“プチドコモ”になってしまったら、その時点でauのブランドは終わりなんですよ。例えて言うなら「ベンツに対するBMW」でなければならない。いわば“体制の中の反逆”が成功していくというポジションこそが、No.2にとって最良のブランドイメージなんです。だから絶対に彼らは負けてはいけないのに、負けを容認するような雰囲気になっているのが個人的には残念かなと思います。

石川 それは痛いところですね。

神尾 ドコモが負けるのとauが負けるのとでは、イメージが違う。ドコモは番号ポータビリティ(MNP)制度が始まる時点で負けるのが想定されていた……つまり規定路線で負けるので、「ああ、そうだよね」で終わるんです。でもauが負けると「ええ?」とガッカリしてしまう。

石川 そう考えるとかなり厳しいですね。ケータイ業界は(好不調を)繰り返しているというか、どこかが盛り上がるとどこかが下がるという。それがネットワークの切り替えのタイミングだったりもするので、(たとえ春商戦でauが負けても)また何年かあとに復活するのかな、という感じはします。

ITmedia au oneポータルなどを通して、ケータイを起点にしてタッチポイントを増やす取り組みなどは頑張っていますしね。

第2回「ソフトバンクとイー・モバイルの台頭で苦境に立たされたウィルコム」へ続く)

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