「WILLCOM NS」のブラウザは、「jiglets」を構成するアプリの1つである「jigブラウザ」と、Windows Mobile向けでもおなじみの「NetFront」が用意されている。これら2つのブラウザを使い分けることで、より便利にPCサイトを利用できる。
jigブラウザはjig.jpのサーバで最適化することで、NetFrontよりも高速にPCサイトを閲覧できるのが特長だ。Webサイトにアクセスすると、最初に正しいレイアウトで文字情報が表示され、続いて画像が現れる。画像の読み込みに従ってレイアウトが変化することもなく、文字情報を素早く確認できる。縦画面と横画面の切り替え時に再レンダリングが発生しないので、サイトの内容に合わせて積極的に画面方向を切り替えながら利用できる。
Webサイトの拡大/縮小表示は、画面下部の拡大、縮小アイコンからスムーズに操作できる。さらに、画像を圧縮することで受信データ量を削減し、ページの読み出し速度を高速化する機能もある。
複数のサイトを「タスク」単位で開き、タブブラウザのように使うこともできる。リンクをロングタップすれば、新たなタスクとしてリンク先を表示できる。お気に入りに登録したサイトを指定して深夜(1〜5時のランダムな時間帯)に読み出しておくオートパイロット機能、認証画面でIDやパスワードを記憶するいわゆるパスワードマネージャ、画像も含めてページ内容を保存する画面メモ機能なども備えている。モバイル向けブラウザとしてはなかなか高機能だ。
一方、画面の幅に合わせてレンダリングする機能はないほか、JavaScriptは一部しか動作せず、jig.jpのサーバを経由するため認証が利用できないサイトもある。例えば、プリセットされたダイヤルアップ接続ではNetFrontからは「モバイルmixi」が利用できるが、jigブラウザからは利用できなかった。また、ブックマーク同期サービスの「xmarks」も、ブラウザからの閲覧サービスにはjigブラウザからログインできなかった。なお、jigブラウザからNetFrontに切り替える機能があるので、jigブラウザで利用できないサイトがあったときに活用したい。
より一般的なフルブラウザといえるNetFrontは、JavaScriptやFlash(Flash Lite 3.1)をサポートしており、筆者が利用しているオンラインバンキングも問題なく利用できた。また、フレームレートはあまり高くはないが、無線LAN接続をすればYouTubeの動画も再生できた。最大4つのウィンドウを同時に開けるタブブラウザも用意されている。
jigブラウザと異なる点は、表示幅に合わせてレイアウトを最適化する2つのレンダリングモードを備えていることで、サイトによってはjigブラウザより見やすい場合もある。一方で、縦長/横長画面の切り替え時に再レンダリングが発生し、レイアウトが複雑なサイトでは数秒間を要する場合もある。
性能の異なる2つのブラウザを搭載したことは決して悪くないと思うが、連携機能はjigブラウザからNetFrontへの切り替えのみで、ブックマークも共用できないなど、中途半端な印象がぬぐえない。jigブラウザからNetFrontを起動してもjigletsは起動したままで、NetFrontを終了すればjigブラウザに戻り、メモリ不足になることもほとんどない。ブラウザはjigブラウザを中心に利用し、必要なときにjigブラウザからNetFrontを呼び出し、ブックマークもjigブラウザで管理するのベターだと思う。
WILLCOM NSはシステム手帳と組み合わせて利用することが想定されている。システム手帳と併用する際に不要と思われる機能を省いているので、よくいえば潔い端末だ。2つのブラウザも動作が俊敏とまではいえないが、マルチタスクなどを欲張っていない分、モバイル端末のブラウザとしてはきびきび動作する。ブラウザ以外の機能については、jigletをダウンロードすれば最低限の設定で利用でき、スマートフォンのようにあれもこれもと欲張っていない分、使い始めのハードルも低い。
だが、機能を割り切りすぎたために中途半端な感があるのも否めない。例えば文字入力の操作は、ソフトキーボードをスタイラスでタップするのみ。横画面でも縦画面と同じサイズのソフトキーボードを使うので、指での文字入力はまず無理。手書き入力もサポートされていない。情報を閲覧するためのブラウザが主役の端末だが、検索エンジンを使うときには文字入力が必要なので、Windows Mobile端末よりは使いやすいレベルには仕上げてほしかった。
jigletも横画面に対応しているのは便利だが、全画面表示できるのはjigブラウザのみ。ほかのアプリは縦、横画面どちらもレイアウトが共通化されており、ほとんどのjigletが正方形で表示され、高解像度ディスプレイが生かされていない。全画面表示ができれば、メールは1度にたくさんの受信メールを閲覧でき、手書きメモは書き込める情報量が増す。特にメーラーはモバイル端末向けに工夫されているだけに、480×800ピクセルの高解像度が生かされていないのは残念だ。
ただ、運用コストを考慮すると、手軽に携帯できる本格フルブラウザ端末としては悪くない。WILLCOM NSは新規契約なら購入から2年間は分割端末代金込みで2980円/月で新つなぎ放題(最大4xパケット)が利用でき、最近は量販店などを中心に分割端末代金込みで2年間980円/月で新つなぎ放題が利用できるキャンペーン(外部リンク参照)も実施されている。
例えば、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルの音声端末のパケット定額は、フルブラウザを利用しない場合は1500円/月程度の差額なので、音声端末のフルブラウザの代わりにWILLCOM NSを980円/月で利用してもお釣りが来る。音声端末で通話しながらWILLCOM NSのインターネットで情報検索、スケジュールを確認といったことも可能になる。使い方次第では本来の2980円/月でも決して高くはないだろう。システム手帳と組み合わせたい人にはもちろん、画面サイズや操作性などで音声端末のフルブラウザに限界を感じている人にとって、WILLCOM NSは選択肢に入るモデルといえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.