80(幅)×147(高さ)×11(厚さ)ミリというスリムなシステム手帳サイズに、感圧式タッチパネルと4.1インチのワイドVGA液晶を搭載したMID(Mobile Internet Divice)が「WILLCOM NS」だ。W-SIMを内蔵することで最大204Kbpsでのインターネット接続ができるほか、802.11b/g対応の無線LAN機能も搭載している。音声通話機能は備えていないので、インターネット機能に特化した端末といえる。
軟質プラスチック製のリフィルアダプターをWILLCOM NSに装着することで、最も一般的といわれるバイブルサイズ(リフィルサイズが95×171ミリのタイプ)のシステム手帳に装着できる。リフィルアダプターにはコネクタ部分のスルーホールや電源キーを押すための加工が左側に施されている。
本体の物理キーは下端の電源キーのみ。基本的にはスタイラスを使い、ディスプレイとその下部に備えたセンサーを操作する。指でのタッチ操作も不可能ではないが、しっかり圧力をかける必要があり、ソフトウェアもタッチ操作にすべてが最適化されてはいない。「ちょっとした操作なら指でも可能」程度に思っておいた方がいいだろう。
OSはマイクロソフトのWindows CE 5.0で、Windows Mobileのような標準GUIは搭載されていない。このためWindows Mobile向けやWindows CE向けのソフトウェアなどもユーザーが追加することはできない。搭載されているソフトウェアは独自のメニューや設定機能などに加え、ケータイアプリでおなじみのjigブラウザと、jigブラウザ上のプラグイン「jiglet」のブラウザアプリのセット「jiglets」、Windows Mobile向けでもおなじみのNetFrontブラウザだ。NetFront以外のアプリケーションはほぼすべてjigletで操作する。
インターネット接続に別途ISP契約などは不要で、必要があればダイヤルアップ接続を定義して任意のISPを利用することもできる。屋外での無線LAN利用は別途公衆無線LAN事業者などとの契約が必要で、同社がオプションサービスとしても提供しているNTTコミニュケーションズの「HOTSPOT」は自動ログイン可能な機能を備えている。また6月18日のアップデートにより、エクスプレスエリア(JR東海管轄内のN700系車両内および17駅のコンコース待合室)での自動ログインにも対応した。
WILLCOM NSは、ウィルコムのW-ZERO3シリーズに代表されるスマートフォンと何が違うのか。最大の違いは「MID(Mobile Internet Device)」というカテゴリー名のとおり、ほとんどの機能がインターネット接続での利用を前提にしていることだ。W-ZERO3シリーズなどのスマートフォンはOSに限らずPCとケーブル接続してPIMを同期する機能なども備えており、スタンドアロン(インターネットに接続しない状態)での利用も想定しているが、WILLCOM NSはインターネット接続した上での利用が基本となる。紙の手帳との併用が前提なら確かに理に適っているといえる。
なお、jigletで実装されたメーラーやスケジューラーはオフラインでも利用できるが、メーラーは長期間分を保存しておくタイプではなくメールサーバのビュワーに近い。また、スケジューラーをPCと同期するには、Googleカレンダーを利用する必要があり、オフラインではできない。
極端な話だが、今時はブラウザさえ使えればGoogleやYahoo!Japanなどが提供しているオンラインのPIM機能だけで完結できる。しかし全国展開中のウィルコムネットワークでもエリア外の場所はあり、都市部では地下鉄で駅間移動中などはウィルコムに限らずほかのケータイキャリアでも圏外になる。また専用ソフトと比較した場合、オンラインのPIM機能では見たい情報を引き出すのに手間がかかるのも事実だ。
WILLCOM NSは、メールやスケジュールなど場所を問わず参照したい情報はオフラインでも利用可能とし、自動受信/同期といった形でインターネット接続機能を積極的に活用する形になっている。メールならメールアカウントを、スケジュールなら普段使っているGoogleアカウントを設定するだけで始められるという具合に、ユーザーが特に意識せずに利用できるのが大きな特長といえる。
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