第4回 “1000元スマートフォン”で激変する中国の携帯事情山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)

» 2012年11月26日 09時51分 公開
[山根康宏,ITmedia]
前のページへ 1|2       

1000元スマートフォンは「実質無料」

 それでは、なぜ1000元スマートフォンが売れているのだろうか。それは1000元スマートフォンが通信事業者との契約により実質無料で購入できるからだ。日本でもスマートフォンは各事業者が大幅な割引販売をしており、実質無料で購入できるケースも多い。だが中国の端末はSIMフリーであり、しかもプリペイド販売ながらも無料で購入できるのだ。端末にSIMロックをかけ、毎月データ定額やオプション料金を払い、2年契約で料金を割り引く日本とは販売方法が大きく異なる。

 ではプリペイド契約でどのように1000元スマートフォンが実質無料になるのかを説明しよう。例えば1200元のスマートフォンを購入する場合、通信事業者か大手量販店で同時にプリペイド契約を行う必要がある。プリペイドのプランは48元/月、68元/月のように1000円以下の安価なプランも多い。なお、中国のプリペイド契約ではこのように毎月一定の基本料金が必要で、その中に無料利用分が含まれている。そして毎月プリペイドSIMに残高を入れておき、基本料金と超過分がその残高から引かれていくのである。

 今回は同時に68元/月のプランを契約するとしよう。1200元のスマートフォンを購入する際は、まずスマートフォン代金相当の1200元を支払う。だがこの1200元はまるまるプリペイドSIMの残高に追加されるのだ。そして1200元が2年間、均等で基本料金から割引され、結果として全額がキャッシュバックされることになる。

 今回の例なら毎月68元/月の基本料金が毎月50元ずつ割引きされる。つまり2年間使い続ければ割引分の合計は50元×24カ月=1200元となり、最初に支払った端末代金が丸々戻ってくる計算になるわけだ。そして本来毎月支払う基本料金は18元/月で済むのである。実際はボーナス通話費などを加えさらに優待を増やすなど、端末相当額だけではなく基本料金や通話費も大幅に割引になるケースが増えている。

 つまり2年間使い続けるのであれば、1000元スマートフォンを事業者とプリペイド契約するだけで端末代が実質無料、さらには基本料金などがかなりお得になるということだ。そのため中国では今、消費者の多くが1000元スマートフォンの購入に動いているのである。

photophoto 600元、999元など端末相当代金が通話費分としてプリペイド残高に入金される(写真=左)。1299元を払うと、1199元のスマートフォンにボーナスで3100元の通話費、合計4299元がついてくる(写真=右)

 1000元スマートフォンが本格的に市場に出てくる前までは、スマートフォン本体の価格は2000元以上、しかも海外メーカーの製品が多かった。そのため事業者が端末割引の負担を行ったとしても実質の販売価格は1000〜2000元以上であり、消費者にとっても依然としてスマートフォンは「高嶺の花」の存在だった。ところがスマートフォンの価格が1000元台に引き下がり、しかも国産メーカーが力をつけてきたことにより、事業者とメーカーが協業し安価な製品を相次いで市場に投入することが可能になったのである。

 携帯総契約者数ではChina Mobile(中国移動)が圧倒的に強い中国だが、3Gだけに目を向ければ2位のChina Unicom(中国聯通)、3位のChina Telecom(中国電信)との差は拮抗している。各事業者は3Gユーザーの獲得合戦を繰り広げており、1000元スマートフォンはその強力な武器として使われていることもあり、販売数を急激に伸ばしているのだ。

photophoto 各事業者の激しい3G加入者獲得競争が、1000元スマートフォン市場を盛り上げている(写真=左)。事業者のオンライン販売ページも1000元スマートフォンが多数並ぶ(写真=右)

5インチやデュアルコアCPU搭載製品も1000元台に

 1000元スマートフォンの2011年のヒットモデルはいずれも3.5インチディスプレイ、600MHz CPU搭載など当時としてもスペックは低い製品が多かった。だが2012年には1000元スマートフォンのスペックが大きく上がり、大手メーカーも無視できないレベルの製品が各社から登場している。その中でも消費者に最もアピールしやすい大型ディスプレイ搭載製品については、4.5インチなどに留まらず5インチ搭載の1000元スマートフォンも続々と登場している。

 例えば、Lenovoが2012年の夏モデルとして発売した「S880」は、480×800ピクセルの5インチディスプレイ、シングルコア1GHz CPU、500万画素カメラにOSはAndroid 4.0を採用している。大手メーカーのハイエンドモデルやSamsungの「GALAXY Note」と比べればもちろん見劣りするだろうが、一般的な用途なら必要十分だろう。しかも実質無料で購入できるのだ。中国で人気のLenovoが出した大型ディスプレイ搭載モデルということもあって、S880は大きな話題を集めた。

photophoto 中国でもGALAXY Noteの人気は高く、大画面モデルへの注目も集まっている(写真=左)。1000元スマートフォンで初の5インチモデルとなったLenovoのS880(写真=右)

 中国の携帯電話はSIMカード2枚挿しに対応したデュアルSIM端末が多いが、スマートフォンもデュアルSIMに対応した製品が多い。そしてCPUもデュアルコアを搭載した製品が増えはじめた。「デュアルコア・デュアルSIM・デュアル待受」という3つのデュアル対応をうたった製品も出てくるなど、1000元スマートフォンは今は大手メーカーの中低位クラスの製品を脅かすまでの存在になっている。

 新規に参入を開始したメーカーも端末価格はやはり1000元台であり、メーカー間の競争は品質や機能の向上ももたらしている。そして1000元スマートフォンの増加は中国人の携帯電話の使い方やサービスにも大きな変化を与えている。またメーカーのパワーバランスもこの1年で様変わりしている。次回以降もスマートフォンを中心とした中国の携帯電話市場の動きについて詳しくレポートしていく予定だ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年07月22日 更新
  1. ダイソーで330円の「人感・明暗センサーLEDバーライト(Type-C)」が意外と便利 1人暮らしの帰宅時や非常灯に便利  (2026年07月18日)
  2. Apple値上げ後も「2年実質24円」は消えず 4キャリアの「iPhone 17/17e」価格まとめ【7月21日版】 (2026年07月21日)
  3. なぜ「060」携帯番号は18カ月あっても延期になったのか? それでも「慌てる必要はない」現状 (2026年07月20日)
  4. ドコモの「arrows Alpha」、残価変更と割引終了で2年33円→5万9180円に (2026年07月21日)
  5. 専用充電器はもう不要? 中韓スマホから国内勢まで巻き込む「USB PPS」急速充電の新常識 (2026年07月14日)
  6. 「Pixel 11」は何が変わる? メモリ減少で100ドル前後の値上げも? 出そろったうわさを整理する (2026年07月19日)
  7. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  8. ショップとAIで差別化を図る「ドコモの銀行」――住信SBIネット銀行ユーザーからは戸惑いも (2026年07月19日)
  9. 携帯番号に「060」が採用されるワケ 「電話番号とは何か」を歴史とともに振り返る (2024年10月09日)
  10. iPhoneやApple Watch一斉値上げ 17無印は14万2800円に、17eは10万円超え 加速する中古スマホ特需 (2026年07月18日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー