スマートフォンで世界トップ3のメーカーを目指す――ZTEの端末戦略ZTEキーパーソンに聞く(1)

» 2012年06月26日 18時23分 公開
[田中聡,ITmedia]
photo ZTEのリュ・チャンハオ氏。マーケティング戦略部門のジェネラル・マネージャーを務める

 中国の通信機器メーカー、ZTEが急成長を遂げている。同社は日本、中国、北米、欧州、オーストラリアなどを中心に140以上の国と地域で500以上の事業者に端末を供給している。日本ではソフトバンクモバイル向けにモバイルWi-Fiルーターやスマートフォンを投入しているメーカーとしてもおなじみだ。端末のみならず、携帯電話の基地局やコアネットワークなどの無線ソリューションも世界中で供給しており、端末とネットワークの両面で存在感が増している。

 6月19日から21日にかけて、ZTEは日本メディア向けに中国・上海でプレスツアーを実施。端末戦略やデザイン、ネットワークを中心にキーパーソンに話を聞く機会を得たので、詳細をリポートしたい。まずは端末戦略担当のリュ・チャンハオ(Lv Qianghao)氏にZTEに端末ブランディングや今後の目標などを聞いた。

携帯電話の世界シェアはZTEが4位に

photo ヒットモデル「ZTE Blade」は、日本では「Libero 003Z」として発売された

 リュ氏は「(ZTEの端末事業が)スマートフォンにシフトした2011年は、ZTEにとって歴史的な1年だった」と振り返る。2011年にZTEが世界で出荷したスマートフォンは計1500万台に上る。米国ではAT&T、Verizon Wireless、Sprint、T-Mobileの4キャリアに供給しているほか、「中国では3Gスマートフォンの出荷数では一番のメーカーになった」(リュ氏)という。「2012年には3500万台のスマートフォンを出荷することを目標とし、2015年までにスマートフォンで世界トップ3の端末とサービスのベンダーになりたい」と同氏は意気込みを話した。2011年にZTEが北米、欧州、日本に出荷した端末は、同社が世界で出荷した端末の30%(約500万台)を占める。さらに、2015年にはZTEが世界で1億台のスマートフォンを出荷し、うち50%(約5000万台)は米国、欧州、日本や他の先進国で販売したいとした。

 IDCの調査によると、2012年の第1四半期におけるZTEの携帯電話(フィーチャーフォンも含む)のシェアは世界4位となり、市場全体におけるシェアは4.8%。この時期に販売した端末は1980万台に上る。リュ氏によるとスマートフォンでは「ZTE Blade」が世界で1000万台を出荷し、「ZTE Skate」も40カ国以上で高い評価を得ているという。Bladeは日本ではソフトバンク向けに「Libero 003Z」として供給していた。「BladeとSkateの成功で、ZTEは世界市場で200ドル〜250ドルの端末で相当数のシェアを得た」とリュ氏は手応えを話す。

「Grand」シリーズでブランディングを強化する

 一方、SamsungのGALAXYやソニーモバイルのXperiaなどと比べると、強力なブランドを確立できていない印象は否めない。リュ氏も「ブランドを強化して一般ユーザーの認知度を上げ、市場を拡大したい」と話す。ZTEはBladeやSkateなどのローエンド〜ミドルクラスのスマートフォンに加え、ハイエンドな「Grand」シリーズを今後は積極的に投入する。6月20日にLTEスマートフォン「Grand X LTE(T82)」が発表されたほか、中国ではGrandシリーズの他モデルが5月に発売された。TD-SCDMA、W-CDMA、CDMA2000、LTE(TD-LTE/FDD-LTE)の通信方式をサポートしており、幅広い国や地域での発売を目指す。「Grandは“Excellent”を意味するフラッグシップのシリーズ。ハード、ソフト、製造においてユーザーエクスペリエンスをさらに改善していきたい。これからもGrandブランドを中心に推していく」とリュ氏。第3四半期には南アフリカや欧州、日本などでもGrandを投入したいとのこと。

photophoto LTEをサポートする「Grand X LTE(T82)」(写真=左)。中国で発売中の「Grand X U970」(写真=右)

 世界に端末を供給するにあたって同社が特に重視するのが、各通信事業者向けの「カスタマイズ」だ。例えば日本では防水スマートフォン「STAR7 009Z」や、子ども向け機能に特化した「みまもりケータイ2 101Z」を発売した。「日本はユーザーの要求が一番厳しいと認識している。製品だけでなくパッケージやアクセサリーもカスタマイズする必要がある」(リュ氏)。

photophotophoto 日本で発売した「STAR7 009Z」(写真=左)と「みまもりケータイ2 101Z」(写真=中)。009Zベースの中国向けモデル。こちらも防水に対応している(写真=右)

 ブランディングの一環で販売網も見直し、中国では「Suning」と「JingDong」、米国では「eBay」のオンラインショップと連携して端末を販売していくという。「キャリアの販売店だとZTEとユーザーが直接やり取りする機会が少ないが、自社のショップだとユーザーの生の声を聞きやすい」とリュ氏は話す。ただ、日本で独自の販売網を構築する予定はないようだ。また「ZTEのクラウドサービスもこれから発表する予定」(リュ氏)とのこと。

 ZTEはAndroid端末に加え、「V965W」「orbit」「Tania」のWindows Phone 7.5搭載端末も投入している。AndroidにはないWindows Phoneのメリットについてリュ氏は「AndroidはオープンソースのOSとして安くてスケールメリットがある。今後もさらに安くなるだろう。Windows PhoneはMicrosoftが仕様を統一しているので、Androidと比べて安定している」と話す。また、モバイルOSの競争は「まだ始まっていない」というのが同氏の見方だ。「Windows 8、iOS 6、Android 5から競争が始まるだろう。3つのOSは米国の会社で生まれたものだが、今後は他の国や地域で新しいOSが生まれるかもしれない」(リュ氏)

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