国をまたぎ、キャリアを超えて使えるように――FeliCaとNFC、相互運用の現状Mobile World Congress 2013(2/2 ページ)

» 2013年02月27日 18時37分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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Photo FeliCa Networksでは従来のFeliCaベースのTSM(Trusted Service Manager)に加え、Type A/BのUICCにも対応したTSMの統合ソリューション導入を目指している

 またFeliCa Networksでは参考技術として、FeliCaだけでなく、Type A/BやNFC非対応技術のセキュアトランザクションをまとめて処理できるTSM(Trusted Security Manager)の事例が紹介されていた。ネットワークの中央に介在してセキュアデータを処理するプロバイダをTSMというが、TSMのインタフェース(プロトコル)はFeliCaとType A/Bなど、利用するセキュア技術によって異なるため、基本的に相互運用が難しい。参考展示の内容は、FeliCaのTSMにおいてもType A/Bや他の技術をサポートできるようインタフェースを統合することで、今後2つ以上の技術が混在していく時代において、サービスを利用する事業者が運用コストと手間の両方を削減できるようになる。

 将来的にはFeliCaの利用が減り、NFC(Type A/B)が主流になると予想される中、FeliCa Networksが生き残っていくためには、こうした統合TSMをサービスとして提供していく必要があるのかもしれない。しかし同社事業戦略部で事業戦略課長を務める隠岐淳一氏によれば、現在もまだチップなどFeliCa関連技術でのビジネス比率が高く、少額な利用料で大量のトランザクションを処理しなればならないTSMのみをビジネスとして維持していくのは難しいかもしれないと話している。

NFCサービスローミングの現状

 NTTドコモは2月25日、中国移動通信(China Mobile)と韓国KTと共同でNFCサービスのローミング仕様の共通化についての発表を行っており、その詳細と現状について簡単にレポートしたい。MWCのドコモブースでは、この共通仕様に関するホワイトペーパーと簡単なデモが紹介されていた。今後、NFCローミングはサービス事業者にとって重要な意味を持つことになるので、こうした取り組みが早い段階で出てきたことは評価すべきだろう。

 現在、GSMAが推進しているNFCサービスでは、セキュアなデータをSIM(UICC)上に書き込む、いわゆる「SIM方式」の利用を前提としている。従来までのFeliCaベースのおサイフケータイでは、専用のセキュリティチップ(セキュアエレメント:SE)を本体に内蔵するタイプで、こちらは「組み込み(エンベデッド)方式」と呼ばれている。SIM方式では、端末を乗り換えてもそのままUICC上に書き込まれたアプリやセキュアデータを新端末に持ち越せるメリットがある一方で、それらのデータやサービスが携帯キャリアに縛られるというデメリットがある。

 例えば海外に移動したときなどに、SIMを差し替えて現地の携帯事業者に接続して安価にサービスを利用するユーザーは多いと思うが、この方式ではSIMを入れ替えた瞬間にそれらのセキュアデータとアプリがすべて利用できなくなる。もしそのまま継続して利用したければ、高価な海外データ通信ローミングサービスを利用するしかない。

 そこで登場するのが前述のNFCローミングとWi-Fiローミングだ。NFCローミングでは、UICCに書き込むアプリやデータの仕様を共通化し、国境や事業者をまたいだサービス利用を可能にする。GSMA関係者らの話によれば、海外渡航先のNFCサービス(例えばプリペイドカードや交通系カード等)を利用する場合であっても、UICCは基本的に端末に挿したままで運用し、そのUICCを発行する携帯キャリア(つまり自身が契約するキャリア)の管理下で現地サービスを利用するためのアプリをUICC上に書き込む形になるという。

Photo NTTドコモが中国移動通信と韓国KTと共同発表したNFC/Wi-Fiのローミングサービスでは、互いのユーザーがシームレスにNFCベースのサービスを利用できる環境作りを目標としている
Photo 韓国CASHBEEのリーダー端末。NFC対応したNTTドコモ製端末と先日発表されたType A/Bに対応したUICCカードを組み合わせることで、UICC内にセキュア領域を作り出し、NTTドコモユーザーが韓国でCASHBEEサービスを利用可能になる

 NTTドコモが2013年夏にも開始すると予告している韓国CASHBEE(キャッシュビー)のローミングサービスも、この方式を利用するとしている。そのため、このNFCローミングサービスの利用にはType A/Bの読み書きに対応したNTTドコモが提供する専用のUICCを用いる必要がある。こうしたNFCサービスの相互運用に関する仕組みを共通化し、3カ国(3キャリア)間で簡単にサービスを乗り入れできるようにするのがNFCローミング共通仕様策定の狙いとなる。現状では3キャリアのみだが、将来的には同様の共通化を北米や欧州などのキャリアとも進めていくことで、さらに利便性が高まる。

 また、このままではSIMの入れ替えが行えないため、海外でのデータ通信はローミングサービスを利用するしかない。そこで重要になるのがWi-Fiローミングとなる。NFCでは大容量データを転送できないため、例えば「タグに端末をタッチして情報を読み出す」といった動作1つとっても、「情報が記されたURLをタグから読み取り、Webブラウザで当該のURLへとアクセスする」といった手順が必要になる。つまりインターネットへのアクセスが必須なわけで、快適なNFCサービス利用にあたってはWi-Fiローミングのような仕組みが重要になる。NFCローミングとWi-Fiローミングともに、広く相互運用できるようになるのはまだまだ先とみられるが、少しずつ進展し始めているのが現状だ。

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